新刊書籍「はじめに」の無料公開とマガジン限定のオマケ
> 2022年1月28日 vol.13
ども。たいろーです。
僕の初めての著書『Work in Tech! ユニコーン企業への招待』が、ようやく本日から発売になりました。書店に並んでるのを見かけたら、手に取って眺めて頂けると嬉しいです。
今日のnoteマガジンでは、出版社さんの許可を経て、冒頭の「はじめに」を無料公開させて頂きます。最後には有料マガジン購読者限定のオマケ情報も付けておきました。
■ はじめに
世界に先駆けてAIに仕事を奪われた、意外な人たち
英オックスフォード大学でAI(人工知能)の研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授が「人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる」という衝撃的な予測を発表したのは2013年のこと。その論文『The Future of Employment:How Susceptible are jobs to computerisation?』(邦題は「雇用の未来」)では、事務員やレジ打ち、ドライバーといった仕事がAIによる自動化で消失するリスクが高い職業として取り上げられ、世界中のメディアがセンセーショナルに報じました。
同時期に、僕はあるGoogleの社員からさらに衝撃的な話を聞きました。彼が言うには、世界に先駆けてAIに仕事を奪われて生き残りを迫られたのは、ほかでもない「Googleで働く人たちだった」というのです。
例えば営業職の場合、見込み客リストに担当者が電話をしたかAIがモニタリングし、提案内容についても文書データを解析するようになりました。営業プロセスは徐々にAIに代替されるようになり、提案すれば成約しやすい企業を社内ツールが提案してくれるようになったそうです。
Googleのような先進企業であっても新規開拓営業は難しい仕事です。この話を聞いたときは「営業の大変さをAIが緩和してくれるならいい話じゃないか」とも思いました。ところが、現場で働く人たちのAIへの反応は、大きく3つのグループに分かれたそうです。
1つ目のグループは、AIに抵抗し、AIとの競争を選んだ人たちでした。彼らは「こんなツールには頼らない。何年間この仕事をやってきたと思ってるんだ」と、新しいテクノロジーに背を向けたそうです。
2つ目のグループは、AIとの競争を回避した人たちでした。彼らは「一社に粘り強く食い込む仕事」や「担当者やキーマンの性格を把握して良好な関係性を築く」といった、決してAIにはできない仕事に自らを移行させたのです。
3つ目のグループは、AIとの共存を選んだ人たちでした。「こんな便利なツールがあるなら頼ってしまおう」と割りきって、さっさと新しいツールの使い方を学んでいったそうです。
では、彼らのその後がどうなったかというと、最初のグループである「AIとの競争をんだ人たち」はGoogleでは活躍できなくなって淘汰され、Googleの社内でサバイブできたのは、2つ目の「AIとの競争回避」と3つ目の「AIとの共存」を選んだ人たちだったそうです。
ただし、2つ目のグループの人たちは、それまでの仕事から離れざるを得なかったという意味では、「AIに仕事を奪われた」とも言えるでしょう。つまり、結果的にテクノロジーの恩恵を最も享受できたのは、3つ目の「AIとの共存」を選んだ人たちだったのです。
この話を聞いたとき、僕は自分のキャリアに対する考え方が間違っていなかったことを確信しました。その考え方とは、「テクノロジーによる変化を積極的に取り入れて、自分の働き方を変えていく」というものです。
なぜそう確信できたかというと、ある時期まで全然パッとしなかった僕のキャリアは、テクノロジーと共存すると腹をくくったときから、明らかに好転し始めたからです。
テクノロジーが世界をのみ込む時代に、どう働くか
僕は新卒でリクルートグループに入社し、人事や営業からキャリアをスタートしましたが、転職8社目の今は「Technical Product Manager(テクニカルプロダクトマネージャー)」として、テック領域の最前線で働いています。
直近の3社は、株式会社ビズリーチ→株式会社メルカリ→スマートニュース株式会社と、いわゆる「ユニコーン企業」(未上場で評価額1000億円以上の急成長企業)を渡り歩いてきました。
現在はスマートニュース株式会社で働きながら、株式会社ソウゾウ(メルカリグループで新規事業を担う会社)で、Eコマースプラットフォームの支援をしています。いずれの企業においても、テクノロジーを活用したプロダクト開発を通じて急激な事業成長を推進するのが僕の仕事です。
また、SNSを中心に「たいろー」名義で、テック領域の急成長企業を渡り歩いて得た経験、転職やキャリアについて日々発信しています。すると、SNSを通じて質問や相談が寄せられるようになりました。なかでも、
「どうやって開発職にキャリアチェンジしたの?」
「文系なのにプログラミングを習得できたのはなぜ?」
「どうやって英語で仕事ができるようになったの?」
といった質問が多いのは、今でこそテック領域で仕事をしているものの、僕のキャリアのスタートが「文系学部卒」の「営業職」といった一般的なものだからでしょう。
しかも、途中で転職に失敗して実家にひきこもり、職務経歴的には1年近いブランクもあります。その頃は月14万円のバイト代で生活をしていました。
うちは母子家庭で経済的には苦労したほうです。大学に行かせてもらったこと自体が奇跡だと思って母親には感謝しています。生まれや育ちにアドバンテージがあったとは、まったく感じていません。
プログラミングのスキルも、今のような動画学習サービスなどない時代に、独学で習得しました。英語もメルカリに入社するまでは仕事で使う機会など一切ありませんでした。
そんな僕が、ビズリーチで求人検索エンジンを立ち上げたり、メルカリの検索アルゴリズム改善をリードしたり、グローバルなエンジニア組織のマネジメントやプロダクト開発をリードする経験が得られたのですから、世の中わからないものです。
今ではヘッドハンターからお世辞交じりに「森山さんは採用ニーズが強いのになかなか見つからない、希少人材ですね」と言われたりもします。いわゆる、転職市場における〝レアキャラ〞なのだそうです。
テクノロジーとビジネスの両面に理解があり、海外のエンジニアと英語でコミュニケーションを取りつつ、技術的難易度が高いプロダクト開発を推進できる人材。加えて、事業成長とともに拡大するエンジニア組織のマネジメント経験もある……確かに同じような人材はそれほど多くないかもしれません。いつしか、転職先に困らなくなりました。
では、なぜそのような変化が可能だったのか? 「人一倍の努力をしてきたから?」と問われたら、答えは「NO」です。
僕の答えは、「急成長企業に身を置いてきたから」。これだけです。
個人の努力というより、場所選びの問題です。僕が所属したユニコーン企業はすべて「テクノロジーを駆使した新しいプロダクトで成功した」という点で共通しています。そこは驚くべきスピードで事業が拡大する、まさに
〝異世界〞でした。
そして同時に、僕のような平凡な人間でも強制的に進化させるブースト環境でもありました。まるで漫画『ドラゴンボール』に出てくる「精神と時の部屋」のように、事業に関わるメンバー全員に「ボーナスタイム」とも言える、特別な時間が流れていたのです。
このような経験から僕は「もっと多くの人が、ユニコーンと呼ばれるような急成長企業に飛び込んでほしい」と感じるようになりました。
本書は、そんな僕が見てきた異世界の光景と、自分を実験台にした仮説検証の結果をまとめた報告書です。
「成功者による自慢話」でも「独立起業のすゝめ」でも、ましてや「転職エージェントによる指南書」でもありません。テクノロジーによって変化が加速するこの時代を共に生きる一人の人間が、自分を実験台にしつつアップデートする「リアルタイムなキャリア実践論」です。
それは同時に、僕から皆さんへの「次なるユニコーン企業への招待状」でもあります。かつてインターネットのない時代に情報産業を興したリクルートの創業者、江副浩正氏による最初のプロダクトは「企業への招待」という求人雑誌メディアでした。
高度経済成長時代においてこのプロダクトは当時、人気だった重厚長大産業ばかりでなく、勃興する新産業にも多様な人材を送り込むことに貢献し、日本の産業発展に寄与したのです。
あれから数十年。今は亡き江副氏が現在の日本を見たら、どう思うでしょうか。日本もようやくデジタル庁が発足し、国を挙げてDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが本格化し始めていますが、まだ課題が多い状況です。
新型コロナウイルスが蔓延するなかでも、ただハンコを押すためだけにオフィス出勤する会社員が後を絶たず、ファックスをはじめとした紙ベースの業務から脱却できない業界や企業も少なくないのが現状です。
しかし、世の中の変化は待ったなしです。あらゆる仕事が着実に、AIをはじめとしたテクノロジーに置き換わってきています。
そのような「テクノロジーがすべての仕事をのみ込む時代」に、僕たちはどうやって「働く人としての価値」を生みだし、キャリアを歩んでいけばいいのか?ーーそれが本書で扱うテーマです。
想定読者は、日本で懸命に働くすべてのビジネスパーソンであり、今はまだテック領域の外にいる方たちです。
したがって、執筆にあたって心がけたのは、プログラミング言語やソフトウェアエンジニアリングの手法、特定のITツールには触れないことでした。そうした解説書は世の中にたくさんありますし、あえて僕が本書で書く必要はないからです。
結果として本書は技術ではなく「変化のなかで働く技術」についての本になりました。
それでは、話を始めましょう。
2022年1月 森山大朗
■ CONTENTS(本の目次)
はじめに/世界に先駆けてAIに仕事を奪われた、意外な人たち
「テクノロジーが世界をのみ込む時代」に、どう働くか
第1部 キャリア迷子へのご提案
第1章 テクノロジーによる変化がもたらすピンチとチャンス
・世界は「落下」している
・世界は「回転」している
・世界は「らせん運動」している
・世界は「細切れ化」している
・世界は「タイムリープ」している
・リクルートが直面したピンチとチャンス
・「3つの量の拡大」と「3方向からの脅威」
・技術革新が生んだ「花形職種」の世代交代
・「キャリア迷子」に訪れたチャンス
第2章 ユニコーン企業という「異世界」のカルチャー
・ルールではなく「カルチャー」で駆動する
・事業づくりは仲間探し
・OKRと「ブレイムレス」
・上司ドリブンより「データドリブン」
・すべての部門が「プロダクト志向」で動く
・ラクをするために頑張ることは美しい
・ビジネスモデルが「自由なワークスタイル」を生む
第3章 凡人を進化させる急成長企業のメカニズム
・個人×企業という「成長のかけ算」
・圧倒的な人材不足だからこそ起きる「大抜擢」
・職種はただの「概念」
・学歴や転職回数が意味をなさない世界
・マネジメントの考え方を逆転させる
・「境界人=マージナルマン」として生きる道
・「境界線を越える」プロダクトマネージャーという仕事
・優秀なマネージャーほど「暇な時間」が増える
・「給料が上がらない国」でも給料が上がる理由
・「転職するなら急成長企業」と言い続ける理由
第2部 自分を探すな、自分をつくれ
第4章 自分という商品を「再設計」しよう
・「自分探し」という名のパラドックス
・「やりたくないこと」は変わりにくい
・内定者アルバイトで見た「リストラのリアル」
・「つぶし」は突然、きかなくなる
・自分の市場価値のつくり方
・独学による「実践知」で面接官を唸らせる
・「希少性」と「珍しい」を間違えない
・ 3つの領域で生まれる「新しい職種」を狙う
(1)専門化によって生まれる新職種
(2)職種の境界線上から生まれる新職種
(3)主戦場が移った際に生まれる新職種
・まだ「学校がない領域」にチャンスあり
・自分をDXする「コの字型」キャリア戦略
STEP1)職種は同じまま「変化が速い業界」に転職
STEP2)変化が速い業界で「就きたい職業」のエッセンスを習得
STEP3)レア人材として元の業界に帰還、もしくは職種転換に挑戦
・「待遇の安定」ではなく「安定的成長」を求める
第 5 章 あなたが「探される仕組み」をつくろう
・「大手か、ベンチャーか」で悩む意味はない
・「未来の大手」はどこにいる?
(1)伸びる市場で収益性の高いビジネスをしているか?
(2)過去数年間の売上成長率がマーケットの成長率を超えているか?
(3)ビジネスモデルは参入障壁を持つか?
(4)海外マーケットでの先行事例があるか?
(5)優秀な人材が集まっているか?
・転職におけるバイアスを壊せ
(1)キャリアアドバイザーが「転職するプロ」とは限らない
(2)転職エージェントが「いい案件」をくれるわけではない
(3)転職サイトやクチコミサイトに真実が書かれているわけではない
・ネットの検索結果に「人間」が並ぶ衝撃
・「自分をSEOする」転職術
・失敗談はキャリアの武器になる
・その転職は課題解決につながるか?
・転職成功よりも大切なこと
第 6 章「メタスキル」と「センス」を鍛えよう
・スキルより大事な「メタスキル」
・スキルを「選別」するスキル
・スキルを「習得」するスキル
・スキルを「応用」するスキル
・お客さまに「なりきる」センス
・「悩み方」にもセンスが出る
・変化を「面白がる」センス
おわりに
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■ マガジン限定のオマケ「普通の人間がどうしたら本を書けるのか」
実は今回、僕なりに「一体どうやったら1冊の本を書き上げることができるのか?」という仮説を立て、ある書籍執筆アプローチを検証していました。noteのようなコラムやちょっとしたエッセイではなく、1冊の本を丸ごと書き上げる方法です。
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『Work in Tech!』 Deep Dive
テック企業で働く日常や世界のテック事情をPick Upするニュースレター。書籍やTwitterでは書けないディープなネタも。
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