オンブズマン制度と行政相談制度の比較と評価|スウェーデン他北欧3カ国と日本の事例から
オンブズマン制度とは
オンブズマン制度とは、国民の代理人として、行政機関やメディアなどの不正や不当な行為に対して調査や勧告を行う制度です。
オンブズマンという言葉はスウェーデン語で「代理人」という意味があり、
1809年にスウェーデンで最初に制度化されました。
その後、北欧や欧州の多くの国で導入され、現在では世界中に広まっています。
オンブズマン制度には、
議会や大統領などによって任命される公的オンブズマン
企業や大学などの組織に設置される組織内オンブズマン
特定の集団の権利擁護を目的とする権利擁護オンブズマン
などの種類があります。
オンブズマンの監視対象や権限は、各国や各機関によって異なりますが、
一般に、オンブズマンは独立性、中立性、非公式性を持ち、
市民からの苦情を受け付け、調査や勧告を行います。
スウェーデンや北欧のオンブズマン制度の特徴
スウェーデンや北欧のオンブズマン制度には、以下のような特徴があります。
1. スウェーデン
議会オンブズマンと呼ばれる4人の正オンブズマンと2人の副オンブズマンが議会によって任命され、任期は4年です。
オンブズマンは裁判所や行政機関、公務員の行為を監視し、
不正や不当な行為があった場合は、勧告や起訴を行う権限を持ちます。
2. フィンランド
1人のオンブズマンと2人の副オンブズマンが議会によって任命され、任期は4年です。
オンブズマンは政府、大臣、裁判所、公務員の行為を監視し、
不正や不当な行為があった場合は、勧告や起訴を行う権限を持ちます。
3. デンマーク
国会オンブズマンと呼ばれる1人または2人のオンブズマンが国会によって任命され、任期はなく、再任も可能です。
オンブズマンは政府、大臣、公務員の行為を監視し、
不正や不当な行為があった場合は、勧告を行う権限を持ちます。
これらの国では、オンブズマンは議会に対して責任を負うとともに、市民の信頼と協力を得ることが重要とされています。
また、オンブズマンは法的な強制力はなく、説得力と影響力によって行政の改善を促します。
日本の行政相談制度との比較
日本においては、1961年(昭和36年)から総務省が開始した行政相談委員制度が国のオンブズマン制度と位置づけられています。
この制度では、総務省の行政評価局が行政相談を受け付け、
行政相談委員が苦情の調査や勧告を行います。
また、行政苦情救済推進協議会が行政相談制度の運営や改善に関する意見を提出します。
日本の行政相談制度とスウェーデンや北欧のオンブズマン制度との比較を以下に示します。
任命者
日本では、行政相談委員は総務大臣が任命しますが、
スウェーデンや北欧では、オンブズマンは議会が任命します。
これは、日本では行政相談委員が行政の一部と見なされるのに対し、
スウェーデンや北欧ではオンブズマンが議会の監視機関と見なされることを反映しています。
任期
日本では、行政相談委員の任期は2年ですが、スウェーデンやフィンランドではオンブズマンの任期は4年です。
これは、日本では行政相談委員の交代を頻繁に行うことで、
新鮮な視点を持ち込むことを目指しているのに対し、
スウェーデンやフィンランドではオンブズマンの経験や知識を活かすことを目指していることを反映しています。
権限
日本では、行政相談委員は行政機関に対して勧告を行うことができますが、起訴を行うことはできません。
スウェーデンやフィンランドでは、オンブズマンは行政機関に対して勧告や起訴を行うことができます。
これは、日本では行政相談委員が行政の一部として行政の改善に協力することを目指しているのに対し、
スウェーデンやフィンランドではオンブズマンが議会の監視機関として行政の責任を追及することを目指していることを反映しています。
オンブズマン制度の評価と提言
; オンブズマン制度は、行政に対する市民の苦情を受け付け、
中立的な立場からその原因を究明し、
是正措置を勧告することにより、行政の透明性や信頼性を高めるとともに、
市民の権利や利益を守るという役割を果たしています。
ただし、オンブズマン制度には、以下のような問題点が指摘されています3:
オンブズマンの勧告が行政に対して法的拘束力を持たないため、行政が勧告を無視することがある。
オンブズマン制度が設置されている国でも、オンブズマンが設置されていない地域があるため、公平性に欠ける。
オンブズマン制度が設置されている国でも、オンブズマンの権限が限定的であるため、行政に対する監視が不十分である。
これらの問題点を解決するためには、オンブズマンの権限を強化することが必要です。
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