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持続可能な開発目標 SDGsは「人権目標」である ~人権とSDGsの関係を考える~

はじめに

2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)を達成するというのは、私たちの世代にとっての最大の挑戦です。SDGsは、貧困や飢餓、健康や教育、平和や正義など、人類の共通の課題に取り組むための17の目標と169のターゲットからなります。

しかし、これらの目標を達成するためには、単に技術的や経済的な問題を解決するだけでは不十分です。

人権の観点から、すべての人々が尊厳を持って生きることができる社会を実現する必要があります。

この記事では、持続可能な開発目標(SDGs)と社会権規約の関係について考えてみたいと思います。

先日開催された経済的、社会的及び文化的権利委員会(社会権規約委員会)の第74回会合で、国連人権高等弁務官事務所のWan-Hea Lee氏が行った開会挨拶に感銘を受けました。

国連人権高等弁務官事務所のWan-Hea Lee氏

Lee氏は、SDGsは人権アジェンダ(人権目標)であり、経済的、社会的、文化的の権利がすべての人に実現されなければSDGsは達成されないと強調しました。

また、社会権規約制を強化するための努力を促進すると述べました。私はLee氏の訴えに賛同し、以下の点を強調したいと思います。

本文

経済的、社会的、文化的の権利(社会権)とSDGsの関係

経済的、社会的、文化的権利とは、国際人権法において保障されている人権の一種であり、日本国憲法第25条でも謳われています。

経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約(International Covenant on Economic, Social and Cultural Rights)」(社会権規約)によれば、経済的、社会的、文化的の権利には、生存に必要な最低限度の生活水準や食糧、衣服、住居、健康、教育、文化などの権利が含まれます。

これらの権利は、人間の尊厳や自由を実現するために不可欠なものです。日本国憲法第25条はこの規約と同じ精神を反映しており、国民一人ひとりが尊厳と自由を享受できる社会を目指しています。

この条文は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有することを規定し、国がすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないことを求めています。

社会権規約によれば、社会権には、生存に必要な最低限度の生活水準や食糧、衣服、住居、健康、教育、文化などの権利が含まれます。これらの権利は、人間の尊厳や自由を実現するために不可欠なものです。

一方、SDGsは、社会権と密接に関連しています。

例えば、

  • SDG1は貧困をなくすことを目指していますが、これは生存に必要な最低限度の生活水準の権利と一致しています。

  • SDG2は飢餓をゼロにすることを目指していますが、これは食糧の権利と一致しています。

  • SDG3は健康で生きることを目指していますが、これは健康の権利と一致しています。

SDG4は質の高い教育を受けることを目指していますが、これは教育の権利と一致しています。

このように、SDGsは社会権の実現に向けて具体的な行動を促すものです。

しかし、現実には、社会権がすべての人に実現されているわけではありません。

世界中で多くの人々が貧困や飢餓、病気や無学などの苦しみに直面しています。

これらの人々は、自分の人生や社会に参加する機会を奪われています。これは、人権の侵害であり、人間の尊厳や自由を脅かすものです。

したがって、国家はSDGs(2030アジェンダ)を達成するためには、社会権規約に従ってその義務を果たす必要があります。

社会権規約における国家の3つの義務

社会権規約では、国家は以下の3つの義務を負っています。

  1. 尊重義務:国家は経済的、社会的及び文化的権利を侵害しないこと。

  2. 保護義務:国家は第三者から経済的、社会的及び文化的権利を侵害されないようにすること。

  3. 実現義務:国家は経済的、社会的及び文化的権利を漸進的に実現するために最大限の努力をすること。

これらの義務は、国家が社会権を尊重し、保護し、実現するために必要な法的や政策的な措置を講じることを意味します。

また、国は社会権規約委員会に定期的に報告書を提出し、その審査や勧告を受け入れることも求められます。

社会保障の権利と持続可能な開発

経済的、社会的及び文化的権利の中でも特に重要なものが社会保障の権利です。

社会保障とは、失業や病気や障害や老齢や死別などのリスクや危機に直面した場合に、最低限度の所得やサービスを提供する制度です。社会保障制度は貧困や不平等を根絶し、社会的包摂を促進する役割を果たします。

しかし、世界中で多くの人々が適切な社会保障を受けられていません。特にパンデミックや気候変動などの危機に直面した場合、社会保障は生命や生活を守るために不可欠です。国連人権高等弁務官事務所の報告によると、2020年の時点で、世界の人口の約55%が社会保障の保護を受けておらず、そのうち約4分の1が極度の貧困に暮らしています。

この状況は、人権の侵害であり、持続可能な開発の障害です。

社会権規約委員会は、社会保障の権利に関する「一般的意見」を作成しました。

この「一般的意見」は、社会保障の権利の内容や範囲を明確にし、国家がその実現に向けて取るべき措置を示しています。

この一般的意見は、将来の衝撃に備えて持続可能で準備された社会保障制度について論じています。

具体的には、以下のような要素を含む社会保障制度を推奨しています。

  • 普遍性:すべての人々が社会保障の恩恵を受けられること。

  • 適応性:社会保障制度が変化するニーズや状況に対応できること。

  • 包摂性:社会保障制度が差別や排除を防ぎ、特に弱者や被差別者を支援すること。

  • 参加性:社会保障制度が透明で民主的であり、利用者や関係者が意思決定や監視に参加できること。

私たちはこの一般的意見を参考にして、社会保障の権利を実現するために行動する必要があります。社会保障制度は、人権の実現や持続可能な開発に不可欠なものです。

社会権規約の強化

社会権規約とは、国家が人権を尊重し、保護し、実現するかどうかを審査し、勧告する仕組みです。社会権規約は、国家と市民社会と人権専門家との対話や協力を通じて、人権の促進や保護に貢献します。

しかし、社会権規約は多くの課題に直面しています。例えば、国家が定期的に報告書を提出しないことや、委員会の勧告に従わないことがあります。また、委員会の作業量が増えている一方で、資源や人員が不足しています。

これらの問題は、社会権規約の効率性や効果性を低下させるものです。

これらの問題を解決するためには、国家や市民社会などの関係者が協力して、社会権規約の改善に取り組む必要があります。

国連人権高等弁務官事務所は、社会権規約の改善に向けて以下のような提案をしています。

  • 社会権規約のデジタル化:報告書の提出や審査や勧告の追跡などのプロセスをオンライン化することで、効率性や透明性やアクセシビリティを向上させること。

  • 予測可能な審査カレンダー:国家が報告書を提出する期限や委員会が審査する日程を事前に決めることで、準備や計画を容易にすること。

  • 必要な資源の確保:社会権規約に関わる人員や技術や財政的な資源を十分に提供することで、作業量や品質に対応すること。

私たちはこれらの提案に賛成し、社会権規約の強化に協力する必要があります。社会権規約は、人権の実現や持続可能な開発に不可欠なものです。

おわりに

SDGsは人権の目標であるということを、私たちは忘れてはなりません。

経済的、社会的、文化的権利がすべての人に実現されなければ、SDGsは達成されないでしょう。

社会保障の権利や持続可能な開発に関する一般的意見や社会権規約の改善など、私たちが取るべき措置は明確です。

私たちはWan-Hea Leeの訴えに共感し、人権の実現に向けて行動しましょう。

参考文献


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