見出し画像

政府の政策に採算性を求めることは馬鹿げている


税収の範囲内で全てをまかなう必要はない

 何らかの政策を実施するには基本的に財源が必要になります。しかしその時必要になるお金は全て税収で賄う必要はありません。
 日本政府の財政は家計とは全く違います。日本はデフォルト(債務不履行)があり得ませんので「国の借金」など気にせず足りない分は国債を発行して調達すればいいです。
 税収の範囲内でやりくりすることに力を入れるよりも、人々の幸福に資する財(モノやサービス)の生産と分配に力を入れる方がよほどいいです。

 「国の借金」が問題無い理由についてはネットで検索すれば色々出てきます。また以下記事の4-1~4-5に私なりの考えを書いています。参考まで。

儲けを出すことと世の中に価値ある財を供給することはイコールではない

 私たちは基本的に働いて給料を得ています。企業は様々な財を売ってお金を稼ぎます。
 また、給料が高い人はそれだけ世の中に多くの価値を生み出し、給料が低い人はあまり価値を生み出してない、と考える人は多いと思います。
 こういうことから、お金を稼いだ=それだけの価値ある財を世の中に供給した、と考えてしまいがちになると思います。

 しかし、株の売買やギャンブルなどでお金を稼ぐことも普通にあります。この場合はその分の価値を世の中に供給したとは言えないと思います。逆にボランティアはお金は儲かりませんが世の中に価値ある財を供給していると思います。
 例えば水道民営化で水道事業に参入した企業が水道料金を思いっきり引き上げれば大きく儲けることができますが、世の中に供給される財は以前と変わりません。
 例えば政府が無駄としか思えない公共事業を行ってもそれで儲かる企業が出てきますが、その企業が世の中に供給した財は人々の幸福に繋がらないどころか逆に人々を不幸にする可能性もあります。
 例えば政府が新たに道路を建設し、そのおかげで渋滞が解消されたとします。しかし通行料を取らないので全く儲かりません。大損です。では政府は世の中に価値ある財を生み出さなかったのかと言えば、そんなことはありません。

 つまり、「儲かったということはそれだけ価値ある財を生み出したということだ。儲からなかったということは価値ある財を生み出せなかったということだ」と考えるのは早計です。全く無関係とは言いませんが、必ずしもイコールではありません。

政府の政策に採算性を求めることは馬鹿げている

 営利企業の一番の目的はお金儲けです。価値のある財を世の中に供給することはお金を儲けるための一つの手段です。「営利企業がお金儲けを追求した結果、価値ある財が世の中に供給されているだけ」と見ることができます。
 そして、たくさん儲けを出している企業は優秀な企業とされます。また赤字が続けば倒産したりして事業を継続できなくなりますので企業にとって採算性は非常に重要です。

 ここで注意が必要なのは、企業からすればお金を稼ぐことが重要ですが、社会全体からすれば価値ある財が世の中に供給されることの方が重要だということです。

 例えば、現在無料で使えている全ての道路で通行料を取るようにすれば政府は大儲けできます。このとき、政府はそれだけ多くの価値を世の中に供給した優秀な政府ということになるのでしょうか?通行料を取れば取るほど優秀な政府ということになるのでしょうか?それで人々はより幸福になるのでしょうか?むしろ不幸になると思います。

 政府は営利企業ではありません。政府の一番の目的はお金儲けではありません。それに日本政府はデフォルトがあり得ないので「国の借金」を気にする必要がありません。
 また採算が合わなくても必要なことはあり、それは民間では無理(倒産するからできない)なので政府がやるしかありません。
 そして採算が合わない、つまり政府が赤字になるということは、その分国民は黒字、つまり国民はお金持ちになるということです(例えばコロナの時に政府は国民に一律10万円配りましたが、この時政府はその分財政赤字が増え、国民は10万円を手に入れました)。
 なので政府が赤字であることを問題視したり、国債を発行してインフラを整備することなどに対して採算性がどうのこうのと言うのは馬鹿げています。

 政府の政策を評価する際は、赤字か黒字かなど営利企業のような測り方をするのではなく、どの程度のリソースを使ってそれがどの程度人々の幸福に繋がったかで測るべきだと思います。そうしなければ、先ほどの例え話のように通行料を取りまくるようなことが正当化されてしまったり、余っているリソースを有効活用できなかったりすることに繋がります。

 社会全体で見た時に重要なことは、人々の幸福に資する財がより多く生産されて分配されたかどうかです。財を生産した主体がどれだけお金を儲けたかではありません。

おまけ インボイス制度は日本政府の○○○を象徴している

 インボイス制度が2023年10月に始まり、これによって年間の消費税の税収が2500億円ほど増えるそうです。政府はそれだけ儲かりますが、これはいいことなのでしょうか?

 この制度の導入によって日本全体で膨大な事務作業が発生し、仕事の発注者と免税事業者との間に葛藤を生じさせ、多くのフリーランスが廃業を考えたり実際に廃業したり、起業を考えている人に二の足を踏ませたり、と様々な弊害が起きているようです。
 要するに、2500億円程度の税収のために膨大なリソースを浪費し、国民の間に葛藤を生じさせ、経済の活力を失わせ、結果として国民を不幸にしているわけです。しかも2500億円の税収が必要ならその分の国債を発行すれば済む話です。
 「普通わざわざこんなことするか?むしろやるべきは消費税の廃止でしょ」というのが正直な感想です。

 インボイス制度の導入は社会に何か良い影響を与えたのでしょうか?これによって人々はより幸福になったのでしょうか?この制度のおかげで人々の幸福に資する何らかのモノやサービスが生産されるようになったのでしょうか?
 ただただ国民を不幸にしただけだと思います。そしてこの不幸はインボイス制度がある限り続くことになります。

 インボイス制度は今の日本政府の愚かさ、もっと言えば邪悪さを象徴していると思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?