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オープンコミュニケーションとチーム経営

ユーザベースの佐久間です。

直近、社内で「私がユーザベースで学んだこと」について話したのですが、その中で特に、「オープンコミュニケーション」と「チーム経営」について、誰でも見れる形で残したいと考え、この文章を書きました。

簡単に自己紹介。1982年生まれの38歳。4歳と9歳の子どもがいる4人家族です。数学者を目指し、諦め、投資銀行で約6年働き、その後に投資銀行の同僚が起業したユーザベースに8年前に入社しました(その直後の写真が上の写真になります。若い)。

そして今日、ユーザベースの共同代表、Co-CEOに就任することが発表されました(もう1人の共同代表は創業メンバーの稲垣です)。

オープンコミュニケーション

オープンコミュニケーションとは何か?

それを象徴する、ユーザベース入社直後の2つの出来事を紹介します。

創業者であり、当時共同代表であった新野さんと他のメンバーとのやり取りです。

Aさん:最近ユーザベースも大企業っぽくなってきたよね
新野さん:え?何でそう感じたの?
Aさん:いや、みんなそう言ってますし
新野さん:みんなって誰?具体的に誰が、どう言ってたの
Aさん:・・・(少し考える)。〇〇さんが、ミーティングが多くて開発する時間が取れないって言ってました。
新野さん:であれば、その問題をすぐに解決しよう。僕、Aさん、〇〇さんで明日ミーティングを持とう

次は、居酒屋で数人で飲んでいた時の出来事です。

Aさん:Bさんのプロジェクトの進め方って強引だよね
新野さん:どういう時にそう感じたの?
Aさん:ミーティングで、人の意見を聞かないんですよ。
新野さんいつのミーティング?具体的にどの発言にそう感じた?
Aさん:(内容を具体的に話す)。
新野さん:明日、Bさんと直接その件について話してみたら?Bさんがその進め方をした背景があるかもしれない。もし、直接Bさんと話しにくいのならば、僕も入るので、3人で話そうぜ。

具体化しないと解決できない曖昧な言葉は数多くあります。

大企業っぽくなってきた。雰囲気悪いよね。昔の方が良かった。トップダウンだよね。心理的安全性が無い。みんな疲れてる。人が足りない。意見が通らない。○○さんがいなくなったせいだよね。​

これらの言葉を放置せず、必ず具体的な問題を特定し、当事者との直接の対話を通じて解決し続ける。新野さんが、ユーザベースがやっていたのはその恐ろしいほどの徹底でした。

入社後半年たって、私がユーザベースの執行役員に就任し、初めて参加した経営会議の最初の議題が「佐久間が役員に就任したことの疑義について」でした。いや、マジか。

私が入社後半年で役員になったことについて、多数のメンバーから疑義の声が上がっている。それらを放置せず、経営会議の議題で最大の課題だと取り上げ、疑義を上げているメンバーを全員特定し、私が全員と1対1で直接対話しました。

これは精神が折れかけた。ですが、疑義を呈した人との直接の対話を通じて、自分への期待と改善点が明確になり、周囲の疑義に振り回されること無く、事業に打ち込める環境が出来たと、今になっては思います。

この直接の対話がなかったら、おそらく、「佐久間さんを役員として信頼していない」みたいな話が間接的に聞こえてくる状態が継続し、仕事に打ち込むのが難しかったのではないかと思います。

ユーザベースの31の約束に「諦めずに本音で話す」というものがあります。

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本音を押し殺す、周りに同調する、対話を諦める。本音を伝えない時、気づかぬうちに小さなストレスが積み重なり、仲間へ小さな不信が積み重なり、チームは少しずつ大企業病となり、働く喜びはなくなってしまいます。

自分の中にある小さな疑問をそのままにせず、さんざん話して、ちゃんと伝え合う。時には、泣き笑い、ぶつかり合うことで、信頼も、発明も、愛も生まれます。本音で話し合う文化は、わたしたちの文化で最も重要なものです。

コミュニケーションを諦めない。

小さな疑義も放置せず、問題を具体化し、当事者同士の直接の対話(オープンコミュニケーション)ですぐに解決する。これが、オープンコミュニケーションです。

ステップでまとめると、以下の形になります。

1. 曖昧な問題は、必ず具体化する。
2. 特に、誰が言っていたかを特定する。
3. 当事者同士の直接の対話、景色の交換を通して、放置せず解決する。

この中に、「景色の交換」という言葉があります。この言葉も、ユーザベースの中でよく使われます。衝突したら、直接の対話を通じて、お互いの感情や、その感情を持った原因、前提を共有する。

言い換えると、言語化が難しい感情含め、本音でコミュニケーションする、ということです。もちろん、攻撃的な感情をぶつけ合い、マウントを取り合っていては問題は解決しません。

しかし、「お互い分かり合うことが出来る」と信じて、負の感情も共有し、その原因、前提を探ることで、コトに向かい、問題を解決することが出来ます。例えば、私と稲垣で意見がぶつかったら、お互いに「ああ、これは前提が違うな」と理解し合い、すぐに前提を共有することを始めます。すると、ほぼ全てのケースで問題は解決し、分かり合うことが出来ます。

後に学んだことによると、これはNVC(Non-Violent Communication)という国際紛争をも解決するコミュニケーション技法と同じです。

オープンコミュニケーションには、問題を具体化し、解決する力があります。さらに、本音ベースでコミュニケーションすることで、ありのままの自分を開放することが出来ます。これは、人生の目的にすらなり得るのではないかと考えています。

本音ベースで、感情も共有し、コトに向かって対話し、分かり合い、問題が解決される関係性が会社全体に広がっていく。

これほど幸せな関係性は無いなと。

更に言うと、ありのままの自分を表現し、かつ、ありのままの自分に対して直接フィードバックをもらうことで、「自分はどの様な人間で、他人からはどう思われているか」という理解が深まります。

自己理解の他者への表現と、他己理解(他の人の自分に対する理解)の学習を通じて、自己認識(自分はどの様な人間か)が深まり、幸せ力(自分が何に幸せを感じるかを理解し、そこに沿って行動する力)が高まることを経験してきました。

即ち、オープンコミュニケーションは、自分自身、そして会社全体の問題解決はもちろん、幸せを広める力まであると確信しています

チーム経営

ユーザベースは創業者の新野、梅田、稲垣の3人によるチーム経営を続けてきた会社です。

ビジョナリーで思想家であり、スーパー営業力な新野。プロダクト偏執家で、ひらめき型の梅田。エンジニアで、愛にあふれ、人の可能性を諦めない稲垣。

「梅田さんがどの山に登るかを決めて、新野さんがなぜその山に登ることが素晴らしいのかを説き、稲垣さんがみんなと登る」という言葉が、創業者3人の強みを活かし合う、チーム経営の姿を表していると思います。

私がユーザベースに入社した2013年は、3人の創業者によるチーム経営から、岩澤、飯作、村上、佐久間(当時のユーザベース執行役員)を加えた、より拡大したチーム経営へ移行するタイミングでした。

チーム経営を実現していくために、私たちがやったことは

1. コミュニケーションコストを徹底的にかけ、原則をつくる
2. 直感を共有し、言語化する
3. チームで弱みを補完し、個人は強みにフォーカスする

というシンプルなことです。

コミュニケーションコストを徹底的にかける。抽象論ではなく、具体的な問題(人の問題が多かった)について話し合う。話し合うだけではなく、人の問題であれば、当事者と他のリーダーも話すことで、リアルに景色交換する。

例えば、「佐久間さんとはもう話したくない」という状態のメンバーに、代わりに稲垣に入ってもらって話したり。

そして、十分に景色の交換(前提の共有)をした上で方針を決める。方針は場当たり的に決めるのではなく、同時に、ミッション・バリューに基づいた「原則」を決める。私たちのボスはCEOではなく、「経済情報で、世界を変える」というミッションと、7バリューと呼ぶバリューです(下のリンクに内容の記載があります)。

例えば、あるメンバーが結婚で名古屋に引っ越すことになり、リモートワークできないか検討した時も、「新入社員が入社初日からリモートワークすることを自由主義(7バリューの1つ)のもとに認めるのか」という様なケースも想定した議論を行いました。その時の結論は、「自由には責任がセット。十分結果を出している人に限り、そのチームのリーダーの判断で、出張費などをチームコストにすることで、リモートワークすることも可能」というものです。(※今のユーザベースではリモートワークはもっと柔軟にできます)

他には、本人のタイトル期待と評価が擦り合わない状態が長期化した時の対応や、どういう時に退職勧奨を認めるかなど。

徹底的にコミュニケーションコストをかけ、景色を交換し続け、共に意思決定し、原則化する。そうすることで、ブレない、背中を預け合える経営チームが出来ます。

この過程で重要なのは、言語化出来ない、もやもや、違和感を含めて共有すること。経営会議の時に、よく梅田が言い出す言葉があります。

「何か違うんだよなー。○ではなくて、直感的には●の方が良い気がする。理由は今は言語化できないけど」

容易に言語化出来ることだけで決めるのではなく、言語化が難しい、脳内シミュレーションから来る直感もオープンに伝える。ただ、直感、感覚はチームで共有することが出来ません。梅田や、他の人の直感を誰かが言語化してこそ、チーム経営は実現できます。

ただ、それはそのミーティング中には出来ず、次のミーティングやしばらく経った後にようやく言語化できることがあります。重要なのは、「今」言語化できることだけで結論を出すのではなく、言語化出来ない直感、「未来」に言語化できることも含めて、原則をつくっていくことです。

直感を共有し、言語化する。これはチーム経営に不可欠な要素だと考えています。

そして、この前提には、徹底したオープンコミュニケーションによる深い相互理解があります。

経営の修羅場で、お互いの人間性をむき出しにして、具体的な問題について話し合い、実践し合い、直感や感情も共有していく。そうすることで、早く、深く、相互理解が進みます。お互いの強みや弱みがクリアに分かります。

例えば、新野はビジョンやバリューの言語化に強いですが、細かなオペレーションは苦手です。梅田は、プロダクトや理想の追求に強いですが、人の気持ちをケアしていくことが苦手です。稲垣は、オペレーションや人の可能性を諦めないコミュニケーションに強く、強い意思決定が苦手です。

お互いの弱みにフォーカスしては、不毛なやり取りが発生しかねません。例えば、

稲垣 → 新野
「なぜオペレーションがちゃんと整備されていないんだ。ビジョンだけじゃ実行に落ちないし、成果が上がらないよ」

梅田 → 稲垣
「人の気持ちばかりケアしていないで、お前自身がどう思うか明確に示し、早く意思決定してくれ」

稲垣 → 梅田

「結局誰も付いてきていないじゃないか。ちゃんと人の気持ちを考えて方針を決めてくれ」

という様なやり取りです。

3人のこの様なやり取りを見ることはほぼなかったですが、私自身は3人にこの様な発言をしてしまったことがあります。この様に弱みの克服を強いても、多くの場合、何も生まれません。お互いの不快感が残るだけであり、また、弱みの克服を目指すと、その裏返しである強みが消えてしまうことすらあります。

新野に細かなオペレーションを任せては、ビジョナリーに引っ張る彼の良さは薄れてしまう。梅田に人の気持ちを細かにケアしていくことを要求しては、その理想の追求の強度が弱まってしまう。稲垣に強い意思決定を強要しては、人の意志やオペレーションを重視する彼の良さが薄れてしまう。

自分の弱みを他の人の強みが補ってくれる、逆に、他の人の弱みを自分の強みで補える。このことに気づけば、新野はビジョナリーに会社を引っ張ること、梅田はプロダクトを理想的な状態につくりあげること、稲垣はオペレーションを磨いたり、人の意志を引き出すこと、に集中し、お互いが強みにフォーカスし、弱みが別の人の強みで補完されている状態がつくれます。

これが、チーム経営です。

オープンコミュニケーションによる深い相互理解をベースとして、

1. コミュニケーションコストを徹底的にかけ、原則をつくる
2. 直感を共有し、言語化する
3. チームで弱みを補完し、個人は強みにフォーカスする

この3つのステップでチーム経営を実現する。

私の個人的な話をします。

私は2015年に大きな失敗をしました。私の弱み、「人の気持ちが分からない」、「みんなの意志を汲んだ意思決定が出来ない」ことを多くのメンバーに指摘され、その弱みを克服することに務めた時期です。

ちなみに、これは私の人生の課題でもあり、小学校、中学校、高校と集団生活に馴染めなかった原因でもあります。高校では一時期不登校になっていました。

繰り返しになりますが、弱みは強みの裏返しでもあります。弱みの克服に努めた結果、私の良さである、「スピーディな意思決定」、「明確なビジョン」が失われ、みんなを慮った中途半端な意思決定が多くなり、ビジョンについても、自分の意志ではなく、みんなから引き出そうと務め、自分の言葉になっていないものを語っていたりしました。

結果、私が担当していたSPEEDA日本は、2015年の売上目標が未達に終わりました。SPEEDA日本は、当時、ユーザベースのほとんどの売上と利益を稼いでいた事業です。これは、人生での最も悔しい経験の一つです。

翌、2016年。この過ちは繰り返さない。みんなからどんなに否定されても、自分が言いたいことは言う。明確に発信する。明確に意思決定する。そう決めました。

ただ、これだけでは私の独りよがりです。メンバーの意志を引き出さない限り、メンバーが動いてくれない限り、成果には結びつきません。なので、同時に、人の気持ちを繊細に理解することができ、ボトムアップのチームをつくることに長けている山中とタッグを組むことに決めました。

SPEEDAの経営合宿で、上記方針をリーダー達に伝えると、まさに非難轟々でした。「それは甘えだ」、「リーダーとしての務めを果たしていない」、そう言われ続けたのを覚えています。

ただ、私は、昨年失敗しているのでもう後がない。自分の強みに正直に行動しないと絶対に後悔する。そう考え、山中とのチーム経営の体制をつくり、自分の強みにフォーカスすることに決めました。

結果、2016年、SPEEDA日本の営業チームは躍進し、社内目標を二度上方修正して達成し、この年にユーザベースが上場した原動力になりました。

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今でも、私は自分の強みにフォーカスしています。「スピーディに意思決定する」、「明確なビジョンをつくる」。ただ、同時にその危険性も把握し、弱みを補完してくれる人とタッグを組み続け、チーム経営を続けていきたいと考えています。

それが、当時の山中であり、今の稲垣です。

ありのままの自分を開放し、深く相互理解し合える仲間と、お互いの弱みを補完し合い、強みにフォーカスする体制をつくる。これは、幸せに働き、かつ成果を出し続ける、最高の形だと考えています。

ユーザベースは、1人のカリスマ経営者の力ではなく、チーム経営の力を信じている会社です。そして、1人1人が主体的に意思決定する力を信じ、階層を出来る限り少なくフラットにしている会社です。

稲垣と私によるチーム経営だけではなく、組織の隅々まで複層的にチーム経営が存在する形をつくりたい。そうすると、チーム経営から「経営」が取れ、最終的にはシンプルに新しい「チーム」の形を定義することにつながっていくと考えています。

オープンコミュニケーションとチーム経営、この2つで、人が個性豊かに、それぞれの幸せの形に自覚的に、かつ、その前提である確かな事業成長を継続することが可能になる。

私たちはそう信じています。

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