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amiをつくる#2:スタートアップ最大の課題とは?

ユーザベースの佐久間です。
この秋に「ami」という「起業家とサポーターがつながるライブアプリ」をリリースします。そのサービスをつくる経緯について書きます。前回、

初期のスタートアップの挑戦の機会を最大化する新しいサービスをつくる

という想いにいたったところまでをお伝えしました。

では、初期のスタートアップの最大の課題とはなんでしょうか?

私は「ビジョンに共感するサポーターを増やすこと」だと考えています。

ちょうど一昨日、NewsPicksのMAKE MONEYという番組で、トーマツベンチャーサポートの斎藤さんも同じことを話されていました。

「いや、サポーターをつくるのではなく、営業したり、プロダクトを磨くことの方が大切だろう」という反論があり得ると思いますが、SPEEDAを例にとって、「なぜビジョンに共感するサポーターを増やすことが重要なのか」について書きます。

ユーザベースへの入社

私は2013年の頭にユーザベースに入社しました。サービスリリースからもうすぐ4年が経とうとしている時期。社員は30人くらいでした。

もともと、前職の投資銀行でミニSPEEDAのようなもの(財務情報などをAPIで取得し、提案資料を一瞬で作成するもの)をつくっており、

「情報収集・整理・加工を圧倒的にカンタンにして、ビジネスパーソンが創造性が高い仕事に打ち込めるようにする」

というSPEEDAのビジョンには最初から共感していました。
(下の画像は当時のSPEEDAの提案資料より抜粋)

前職の同僚であった、ユーザベース創業者の新野さん、梅田さんと久しぶりに話して盛り上がり、「自分だったらSPEEDAをこう進化させる」という想いがどんどんあふれてきました。

そして、わくわくして寝られないような状態になり、入社にいたります。

ユーザベース創業者新野さんの営業

入社直後、新野さんに同行し、初めての営業に行きます。とある商社のとある事業部向けプレゼンで、20人位が大会議室に座っています。

いわゆる勝負プレゼン。

そこで、持ち時間の1時間に対し、新野さんは、なんと50分、SPEEDAが目指すビジョンについて語ることに費やしたのです。

・自分が商社や投資銀行で、情報収集や加工にどれだけムダな時間を使ってきたか。いかにそれが大変だったか。いかに創造性が抑圧されてきたか

・自分はその問題の解決にすべてをかけている。今はまだその途上だが、SPEEDAは必ずその問題を解決し、ビジネスパーソンが創造性を発揮する世界をつくる

そのようなストーリーを50分に渡って語り続けます。その時の新野さんの血走った目は今でも覚えています。

投資銀行で経験してきた営業スタイルとはまったく違う。

衝撃。「こんな営業があるのか」と愕然としたことを覚えています。

新野さんの言葉を裏打ちするもの

新野さんの言葉に共感しユーザーになってくれた人が現れたとしても、もちろん、実際のサービスがひどかったら、その契約は長続きしません。裏切られたとすら思うかもしれません。

しかし、SPEEDAチームは、愚直に新野さんの言葉を体現し、「ユーザーと共に成長する」ことを実現していました。

既存ユーザーと相対するカスタマーコンサルタントは、「データ取得の駆け込み寺」とも呼ばれ、ユーザーのリクエストに対し「極力ゼロ回答しない」というポリシーを持っています。

ユーザーの情報収集・加工の負担を和らげるために、難しい課題でも何らかのアウトプットを届ける。SPEEDAで解決できない問題でも、人力で部分的にでも解決する。(人力で解決した課題は次の開発の芽になる)

その姿勢を体現していた当時のリーダーの谷田部さんは、一部のユーザーから、「神様、仏様、谷田部様」と呼ばれていました。

また、ユーザーから「〜という情報を増やして欲しい」というニーズがあれば、アナリストやオペレーションチームがそれに応えていく。「〜という機能を改善して欲しい」という声があれば、エンジニアチームが高速で改善する。

それらの結果を「〜という改善が完了しました。〜様が声を届けてくれたおかげです。ありがとうございます」というような声とともにカスタマーコンサルタントがユーザーに報告する。そして、フィードバックサイクルが回っていく。

「今のSPEEDA」に対し、コンテンツ的に、機能的に不足しているものがあったとしても、「未来のSPEEDA」はそれを解決している。

その「未来のSPEEDA」を、ユーザーと一緒につくっていく。

新野さんの言葉は、チームによって裏打ちされていました。

セールス・採用・パートナーへの広がり

当時の最大のユーザー獲得チャネルは、「ウェブマーケティング」でもなく、「展示会」でもなく、「既存ユーザー」でした。

SPEEDAの機能、コンテンツや、カスタマーコンサルタントの対応に感動したユーザーが、他の部署や、他社にSPEEDAを紹介してくれていたのです。

SPEEDAは頻繁な機能アップデートやコンテンツ拡充があるので、そのアップデートの説明に既存ユーザーを回ります。そうすると、必ずいくつかのユーザーから「〜という会社に知り合いがいて、SPEEDAハマると思うから紹介するよ」というような声をもらいました。

既存ユーザーが次々に新たなユーザーを紹介してくれる。

そして、SPEEDAのユーザーから、(運営会社の)ユーザベースに飛び込む人が続出しました。私もその一人です。

前述した「SPEEDA体験」を経て、「自分もその一員になりたい」という想いが強くなっていったことが、入社の一番の理由だと思います。

このようなメンバーは、最初からビジョン共感が強く、キャッチアップが早く、今でも多くのメンバーが大活躍しています。

また、SPEEDAは多くのデータ提供会社と事業提携しています。その際も、必ずSPEEDAが目指す世界を伝え、それに共感してくれた会社とパートナーシップを結びます。

そのやり方を通じて、初期から世界的な企業と強固な関係を結ぶことができていました。

ビジネスだけを考えるのであれば、この段階でこの小さな企業と取引する必要性はない。ただ、ビジョンに共感し、応援したいので、手を組む。

ビジョンに共感するサポーターの輪は、セールス、採用、パートナーシップにまで広がっていきます。

点ではなく線のつながりをつくる

このように、ビジョンを伝え、応援するサポーターが生まれることで、スタートアップをとりまく大きな問題が解決します。

・開発:ユーザーとの共創によるプロダクトマーケットフィット
・マーケティング:ユーザーによる潜在ユーザーの紹介
・採用:ビジョンに共感するメンバーの採用
・事業提携:ビジョン共感を通じた最高のパートナーとの提携

これらはすべて、ストーリーとしてビジョンを語り、そして、その実現に向けて愚直に取り組み続けることで、共感が成長していった結果だと思います。

新野さんがビジョンを語っても、たった一度のプレゼンで深い共感を得ることは難しい。

ただ、そこで「共感のきっかけ」をつくることはできる。

そして、日々のサービスの改善活動に関わったり、実際SPEEDAで働いている人と話すことで、ビジョン実現を本気で目指していることが伝わり、共感が育っていく。

SPEEDA日本事業COOの山中くんは、共同創業者である、新野さん、梅田さんの二人のプレゼンを一年間隔で聞くことで入社を決断してくれました。

新野さんから「経済情報で、世界を変える」というユーザベース全体でのビジョン実現についての話を聞いた一年後に、梅田さんから同じテーマについての話を聞いて、

「わずか一年で、SPEEDAはアジアに展開し、NewsPicksというニュースアプリもリリースされた。彼らは確実にビジョン実現に向けて成長している」

と感じ、入社にいたったそうです。(写真右が山中くん)

最初の出会いで「ビジョン共感のきっかけ」が生まれ、さらにその後にビジョン実現に向けて愚直に取り組む姿を見続けることで、共感が育ち、応援するサポーターが生まれるのではないかと思います。

すなわち、一回の出会いでしかない点のつながりではなく、継続的につながり続ける線のつながりでこそ、応援するサポーターは生まれる。

amiでは、スタートアップと応援するサポーターの「線のつながり」をつくることを目指していきます。

今回はSPEEDAの話でしたが、次回は、実際自分がFORCASという事業をつくる上で感じたことを書こうと思います。