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看護計画テーマ「大腸癌患者の標準看護計画」

割引あり

今回のテーマは大腸癌です。
結構多い症例なのでしっかりまとめていきましょう。


大腸癌患者の標準看護計画 

大腸癌とは
 
虫垂を含めて盲腸からS状結腸までに発生する癌を結腸癌と言い、直腸、肛門管に発生するものを直腸・肛門管癌という。この両者を合わせて大腸癌と総称する。後発部位は、直腸・肛門管癌が50%と多く、ついでS状結腸、上行結腸と続く。年齢分布は60才代が最も多く、ついで70才代、50才代に多い。
 大腸癌は従来欧米諸国に多い疾患とされていたが、近年、我が国での増加傾向は著しい。この原因は日本の食生活を中心とした生活環境の欧米化に一因があるとされ、疫学的、実験的に動物性脂肪の摂取の増加、食物繊維の摂取の低下が関係していると言われる。
 上皮性のもの(癌腫)と非上皮性のもの(肉腫)とがあるが、癌腫が大部分を占める。大腸癌の肉眼的分類は、0型から5型に分類されており、0型(表在性)は早期癌に対して用いられる。

 

アセスメントの視点
 大腸癌は従来欧米諸国に多い疾患とされていたが、近年、我が国での増加傾向は著しい。この原因は、日本の食生活を中心とした生活環境の欧米化に一因があるとされ、疫学的、実験的に動物性脂肪の摂取の増加食物繊維の低下が関与していると言われている。

 

症状
1.結腸癌
 早期癌の場合には無症状のことも多く、検診の便潜血検査でチェックされ、大腸の精密検査にて発見されるものも多い。右側結腸と左側結腸では腸管内腔の広さ、腸内容、肛門までの距離の違いにより、発見の動機となる症状には違いが見られる。右側結腸癌は、貧血とか腹部腫瘤触知、左側結腸癌では、血便、便の通過障害、肉眼的血便などで発見されることが多い。

2.直腸・肛門管癌
 早期癌の場合には無症状のことも多く、進行癌の場合には血便、さらに進むと便通異常、テネスムス、便柱細小、時には排尿障害を認めることがある。癌が歯状線以下の肛門管に浸潤すると、肛門通を訴えたり、肛門部腫瘤を触知することもある。

 

検査

  • 便潜血反応

  • 直腸指診

  • 直腸鏡検査

  • 直腸造影検査

  • 大腸ファイバースコープ検査

  • 血中腫瘍マーカーの測定(CEA、CA19-9)

 

治療
 癌の治療法として化学療法、放射線療法、免疫療法、温熱療法があるが、手術療法が主体である。

1.結腸癌
右半結腸切除術、左半結腸切除術、横行結腸切除術、S状結腸切除術、リンパ節廓清

2.直腸・肛門管癌
ポリペクトミー、局所切除術、括約筋温存直腸切除術(前方切除術、腹肛門式直腸切除術、腹仙骨式直腸切除術、後方切除術)、直腸切断術リンパ節廓清 骨盤内臓器 全摘術

 

術後の経過と管理
 MOOREは、手術後の回復過程を4つの段階に分けている。それによれば、第1相は、障害期で、手術後2〜3日続く。(侵襲の大きさにより、この時期は変動する。)第2相は、変換期で、1〜3日続く。これら第1、第2の2つの相は、手術侵襲に続いて起こる異化相であり、その後の同化相とは異なった生体の反応過程を示すと考えられている。この急性反応期間中は、生体反応が刻一刻と変化するため、注意深い観察と適切な管理が必要である。第3相は、筋力回復期で、術後7日目頃より始まり2〜5週間持続する。この時期は、神経・内分泌・代謝系の機能が手術前の状態にまで回復しており、体蛋白の合成の亢進にともない体力がついてくる。第4相は、脂肪蓄積期で、手術後1カ月後より始まり2〜5カ月間持続する。この時期は、体蛋白の合成は停止し、脂肪の合成が開始され体重が増加する。

1.精神的サポート
 消化器系の手術を受けた患者は、これまで食べられなかったことに加え、術後も経口摂取までに長期間を要したり、経口摂取が開始となっても食生活の変化を余儀なくされるため精神的負担は大きくなる。また、頻便や排尿障害を伴ったり、人工肛門を造設された場合においては、更に精神的負担が大きくなる。不安の内容や程度、表出の仕方などは個人によって異なるため、患者各人の訴えを判断していく事が大切である。手術を受ける際には、術式や病名、術後合併症の説明を受けたうえで手術に臨むが、時として癌の場合など告知をされていないこともあるため、医師からの説明内容を把握し、言動の統一を図っていくことが重要である。また、患者にとっての重要他者の存在を把握し、協力を得るとともに、かかる負担の軽減を図る。術後の疼痛や、輸液ルート、ドレーンなどによる拘束感、不眠、機械からの音、環境の急激な変化により精神のバランスを失い不穏状態に陥ることがある。精神の安定を図るために、鎮静剤などの薬剤投与や、生活にリズムをつけ早期離床、ルートの整理など環境の調整を図る必要がある。

2.疼痛の管理
 手術後の疼痛は、手術形式、麻酔方法により異なり、個人差も大きい。特に高齢者の場合、疼痛は心肺機能に負担をかけ、血圧の上昇や不整脈を誘発したり、疼痛のため深呼吸を拒否し無気肺や肺炎を起こしたりする。そのため患者には疼痛を我慢させずに十分な除痛を行う必要がある。最近では、手術時に硬膜外カテーテルを留置し、術後に持続的に麻酔薬を注入することで疼痛の緩和を図っている。硬膜外カテーテルが留置されている場合は、刺入部からの出血の有無や麻酔薬の残量を確認する。また、留置中は一過性の排尿障害が起こり得るため膀胱内留置カテーテルの抜去は見合わせることがある。術後合併症の1つである創感染は、術後36〜48時間頃から創痛が、再び強くなる。このことから疼痛は、合併症の警告であると言える。

3.呼吸器系の管理
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の3を参照

4.循環器係の管理
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の4を参照

5.輸液・輸血の管理
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の5を参照

6.栄養の管理
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の6を参照

7.IVHの管理
消化器系手術の術後管理の標準看護計画の7を参照

8.経口・経管栄養法の管理
 経腸栄養方法は経口摂取及び経管摂取に大別されるが、いずれも静脈栄養法に比較して投与経路が生理的であり合併症が少なく、施行・維持管理が容易・安全であるという利点を有している。しかし、投与された栄養液を完全に消化吸収できる十分な長さの腸管が存在することが必須条件となる。必要な腸管の長さは、成人で最低100~150cm、小児で40~75cmであるが、腸管大量切除のやむなきに至った場合にも腸管粘膜には再生肥大能力があり、時期と共に消化吸収能力は回復する。

9.ドレーンの管理
 結腸切除手術後においては吻合部の縫合不全やリークに留意し、ドレーンからの排液の性状(便汁ではないか)の観察が重要である。
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の10を参照

10.胃管の管理
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の11を参照

11.創部の観察
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の12を参照

12.清潔保持
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の13を参照

13.術後ベッドの作成
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の14を参照

14.早期離床のすすめ
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の15を参照 

術後合併症
1.肺合併症
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の合併症1を参照

2.術後出血
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の合併症2を参照

3.術後感染・吻合部縫合不全
 大腸内には大量の細菌が存在するため、手術前に可及的に腸管内を清掃して、手術時の術野の汚染を防いでいるが、術後の創感染、縫合不全などの合併症防止に留意が必要である。
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」の合併症3・4を参照

4.消化・吸収障害
 経腸的に投与された栄養液が完全に消化吸収できる十分な長さの腸管が残存していない場合においては、下痢や未消化便等の排便異常の見られることが多い。腸管粘膜には再生肥大能力があり、時期と共に消化吸収能力は回復する。排便状況に応じ、止痢剤・整腸剤が投与されるが、必要に応じ、消化される必要がなく、短い腸管より高い吸収効果が期待でき、腸内細菌巣の減少効果がある成分栄養剤が投与される場合もある。

5.イレウス
 腸管と腹壁創との癒着、腸管同士の癒着、癒着帯による外からの腸管圧迫などが原因 となってイレウスが起こる。癒着性イレウスの過半数は保存的治療で軽快するが、再  発も多い。腸管の循環障害が疑われるとき(発熱、ショック、腹膜刺激症状などを伴  うとき)は、絞扼性イレウスと考えて緊急手術を行う。

6.排尿・性機能障害
 直腸癌のリンパ節廓清を行うことにより、骨盤神経叢を中心とする自律神経が損傷され、術後に高度の排尿、性機能障害を起こすので、最近では症例を選んで、下腹神経や骨盤神経叢を温存する自律神経温存手術が行うようになってきている。

 

看護計画(術前)

.アセスメントの視点(術前)
 全身麻酔で手術が行われるため、全身状態の評価が必要である。高齢者も多いので、既往症や機能の低下には十分注意する。便通異常により食事が十分取れなかったり、腫瘍からの出血で、貧血、低栄養状態をきたしている場合もある。また、術前腸管処置として、食事の制限(低残渣食、禁食)、下剤の投与、抗菌剤(カナマイシンやポリミキシンB)の経口投与されるため、下痢、倦怠感、脱水、電解質異常に注意する必要がある。
 精神面では、食事制限によるストレス、下痢による体力消耗への不安も大きい。その場合には、生活行動や精神面への影響を把握することが大切である。

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