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目指すは、英雄。フレンチ料理人 窪田涼佑氏インタビュー 後編

窪田さんの記事、後編です。
フランス料理人になるきっかけ、そして今後の人生設計をどう描いているのかについて伺いました。
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▼前編はこちら

フランス料理を始めたきっかけ

ーちょっと話を変えて、人生を遡らせてください。
ー料理人としてやっているのはどのくらいですか?

10年くらいです。
16歳から料理をやっています。

ーそれは、アルバイトを始められた時?

そうですね。僕、スキルの収集癖みたいなのがあるんですよ。
特技の収集というか。

それで、料理を身につけたら、カッケーな、と思って。
じゃあ、どうやって勉強しようかな、と思った時に、飲食店の厨房に入った方が、手っ取り早そうだな、と思った感じです。

でも、当時は何も知識がなくて、「求人飲食店ドットコム」でとりあえず調べて、「高校生なんですけど、バイトで雇ってくれませんか。」と電話しました。

で、その時お店からは、「雇ってないです。」と言われたんですけど、僕バカなんで。笑
「給料いらないんで、やらせてください。」って言ったら、「とりあえず面接だけするからきて」と言ってもらえて、そこで採用されたって感じです。

ーすごい熱量ですね!そこで料理人の人生がスタートしたんですね。

そうですね。結局同じお店で大学1年生の初学期くらいまでバイトしたり、他のフレンチレストランで経験を積んだり、そんなこんなを経て卒業してそこからフルタイムの料理人として仕事をするようになりました。

ーそのお店は、どんなお店ですか?

アジアンテイストのビストロでした。
「ビストロ」は、フランスの大衆食堂、酒場、みたいな意味で「ビストロ」っていう名前に惹かれましたね。ビストロとりあえず、いいなって。

そこにいたシェフは、フレンチ出身で、そこでフランス料理に興味を持ち、勉強し始めました

ーアジア料理だけどフレンチ・・・?

アジアの料理を提供しているんですが、フレンチの技法を使っていたって感じですね。

フレンチは、世界三大料理の一つで、あと二つは、中華料理とトルコ料理です。

ー三大料理の一つ、トルコ料理なんですね!

そうです。ちょっと意外ですよね。

そこのお店で教えてもらいながら料理をやっていくうちに、フレンチの歴史の深さや技術の幅の広さを知りました。
フレンチをやっていれば、いろんな料理に通ずるものがあるので、僕はそれを今も選んでるのかもしれないです。

あとは、当時、三大料理の中でも、1番がフレンチだっていう記事か何かを読んで、1番行きてえって思った感じです。笑

ー先ほど、「スキルの収集癖」という言葉がありましたが、Instagramにプレートアートを載せられているのを見ました。あれもとても上手ですね!

涼佑くんが描いたプレート🍫です

元々絵を描くのが好きで。
ボールペンより、チョコペンの方が得意なんで、「履歴書書くとき、ボールペンじゃなくて、チョコペンで書け」って言われるほどです。(笑)

前に、僕の後輩が働いている老人ホームでイベントをやってほしい、とオファーをもらって、チョコペンで、おじいちゃんおばあちゃんの前で、30-40枚くらいお絵描きすることもしました。

ーすごい!本当になんでも器用そうですね。

いやいや。不器用ながら頑張っています。

"英雄"になりたい

ー色々とスキルを収集する中で、料理を突き詰めようとなったのはなぜですか?

僕は、料理人になりたいわけじゃなくて、”英雄”になりたいんですよ。
だから、手段として料理を選んでいるだけなんですよ。

ー”英雄”ですか!
ちょっとだけ噛み砕かせてください。涼佑くんにとって、”英雄”とは?

僕的には、なんすかね。
“圧倒的に愛されている人間”そういう感じです。

ー”圧倒的に”ですか。

はい。

ー愛されるために、どうしていきたい、というのはありますか?

そうですね。愛されるためには、自分も愛を与えていかなきゃいけないと思います。
僕が持てる手段の中で、愛を与える方法としては、料理です。

サッカーをやっていたら、サッカーかもしれないし。
でも今、僕のカバンの中にある持ち物は、料理であって、それが武器なので、それを使った方が、自分の目標に対して早く進めるな、と思っています。

ー収集したスキルの中でも、一番得意、という感じでしょうか?

他にも好きなこともあるし、人よりも少しできるな、と思うことが他にもあって、それももちろん磨いています。
それらの持ち物の中で、「英雄になりたい」という目標に対して、料理だけじゃなくて、自分の特技とかスキル、好きなことをいかに駆使するかで、どうそれに近づいていこう、みたいなことを常日頃考えています。

ー”英雄になりたい”というのは、どうしてそう思ったのでしょう?憧れの存在がいるとか、人から言われたとか?

昔から目立ちたがり屋、人と違う人でありたい、というのはあるかもしれないです。
いろんな人と出会って、人を笑顔にさせる喜びを知って、そんな中で目立ちたい、というのが合わさって、そこからヒーローになりたい。と思い始めたんだと思います。

ー人を笑顔にしている姿が目に浮かびます!

どう生きたいか。そして、どう死にたいか。

ー少し話を戻すのですが、「手段として料理を選んでいる」と話されていました。何をするか、はあくまで手段であって、その先のことを考えているようなイメージですか?

そうですね。大事なのは、自分がどう生きたいか、だと思います。

今もし、仕事に悩んでいたり、迷っていたりするとすれば、何をするかを考えるんじゃなくて、この1回しかない人生をどう生きたいか、過ごしたいか。

あと、自分がもし、お墓に入ったとして、周りの人がどんな表情で自分のことを思っているか。

自分の在り方だったり、どう死にたいか。
とかを一旦立ち止まって、振り返って考えるのがいいと思っていて。

ーどう死にたいか。ですか。

終わりから考えたほうが考えやすいんじゃないかって思います。
どう生きたいか?を考えると、無限に回答は出てくるけど、終わりから考えると絞られるというか。

終わりがあるのも一個の特権だと思っているので。
もちろん、生き方を考えるのも大事だと思っているので、2方向から考えるっていうのがいいと僕は思います。

ー確かに。極論、明日死ぬとしたら?を考えると、選択って変わってくる気がします。

自分の人生の目的にブレずに一直線でやる

ーでは、在り方や、どう生きたいか?が見えたとして、涼佑くんでいえば、今は「料理」みたいに、「これ」っていうものが見つからない。っていう人もいると思いますが、涼佑くんなら、どうしますか?

うーん。それは、積み重ねてきたものの数だと思います。
どの道に進もうかなと悩んで色々やってきていると、こっちの方がちょっと情熱があるなとか、絶対あると思うんですよ。

僕だったら、学生の頃やっていたダンスと料理を比べたときに、手段なので、英雄になるっていう目標に対して、どっちの方が勝っているか?を考えました。

僕はそういう判断基準です。

多分、迷っている人って、その手段を先行して考えているから、本当にどう生きたいのか?がわかっていない、考えられていない、と思うんですよね。

だから、手段の部分で、これもやりたいし、あれもやりたい、と迷うんだと思います。

ーなるほど。人生の目的から逆算すると。

そうです。
たとえばAとBがあって、人生の目的がはっきりしていないまま、Aを選んじゃうと、やっぱBにしとけばよかったって思ってしまうんじゃないかなと。

本当に自分は何をやりたいのか?じゃなくて、どういう生き方をしたいか?どういう死に方をしたいか?で選んだら、自ずと、じゃあやっぱこっちやってみようかなって、多分すぐには踏ん切りはつかないかもしれないんですけど、選べるようになると思います。

それで、決めたことをやっていくうちに、自分の生き方に対して選んだ手段なので、積み重ねていけば、情熱もどんどん積み重なっていくんじゃないかなと。

ー向いていないな、大変だな、面白くないな、というネガティブな感情がたとえ生まれたとしても、すぐには辞めないようになれそうですね。

そうですね。
自分の人生の目的に対して一直線にブレずに選べれば、やっぱこっちにすればよかった、とはならないと思います。

失敗して立ち止まって自分の軸が見えてくる

ー多くの人は、人生の目的から逆算することが大事だと気づいていないと思うのですが、涼佑くんはどうして気づきましたか?

僕は、挫折の繰り返しからですかね。
例えば料理をしていて、失敗するじゃないですか。
で、落ち込んで、自ずと、なんで俺料理やってるんだろうってなるんですよ。本当はどこに向かって生きているんだろう?ていうのを繰り返していくうちに、あれ料理じゃなくていいのかなみたいな、考え方が生まれて。
あれ、じゃあなんでこれ切ってるんだろう?ってなる時もあります。

ー自分への問いというか、なんでこれやっているんだっけ?というのを何度も自分に聞くという感じ?

そうっす。はい。

その考え方に至ったのは、窮地に陥った時っていうか、辛いなと思った時に、なんでだろう?という自分への問いを繰り返して、だんだんと気づけていったって感じです。

ーこれまで窮地に陥った、みたいなことはありますか?

業務量的に忙しくて、みたいなことはまだあまり体験したことはないですが、心が折れかけた、というのを1度経験したことがあります。

それを経験した時に、俺はこう生きたい、というのを生み出しちゃったんで、そこにずれるんだったら、僕はもうノータッチっていうのを決めてます。

ーその”やらない”という選択肢をとることに気づくのが早いですね!それだけ行動量がすごいってことですね。

いやいや、たまたまっすよ。
運命の巡り合わせっす。

ー人生の目的や手段もはっきりしている中で、自分はこのままでいいのかな?と感じることはありますか?

自分の持ってる価値観っていうんですかね。
それに反した時に、このままでいいのかな?って思う時はあります。

価値観はもちろん人それぞれで、僕は自由に生きたいから、時間に縛られている人を見ると、モヤモヤする、とか。

ー涼佑くんが、自分の価値観に反しているな、と思ったのはどんな時ですか?

料理の世界でいうと、押し込められるっていうか、修行中にこうやれって言われている時ですかね。

ー型にはめられる、みたいな?

そうですね。

あとは、レストランにいる時と、普段の僕のキャラって違うんですけど、本来はこういたいのに、っていうのも感じます。

ーなるほど、そういうのを感じると、どう生きたいんだっけ?って見つめ直す

そうですね。
そう考え直すたびに、思いが強くなって、みたいな感じです。

仲間が幸せになれる場所を作りたい

ーこれからやっていきたいことはありますか?

自分がこの人生で成し遂げたいことを考えると、料理だけでは叶えられないと思っています。

ー成し遂げたいこと、というのは具体的には?

僕は、場所作りをしたくて。
仲間が好きなので、友人たちからここにきたら、すげー幸せになれる、と言ってもらえるような場所作りをしたいと思っています。

ここにくれば、めっちゃ素敵な気持ちになれる、みたいな場所を作って、それを広めていきたいなって思っています。

その中の一つに、僕の得意とする料理があって、ダンスというエンターテインメントがあって、音楽があって、それは今後つるんでいく仲間で変わっていくと思うんですけど、そういう場所づくりをしていきたいです。

ーわあ、それはめちゃくちゃ共感します。これまで私が考えてきたことに近くて、とても感動しています!
ーどういう規模感でとかは、考えていますか?

あまり考えていないです。
でも、一個条件にするなら、より多くの人種やキャラクター、
例えば、本を読むのが好きな人とサッカーをするのが好きな人、どちらの人も楽しいと思える空間を作りたいです。

違う国の人でも、誰でも繋がれるっていうのは、僕の中では絶対条件です。

それに対して、広さ、とかは考えていきたいです。
自分自身のこれからの力量だと思いますが。

ーこれまで、たくさんの方々と会って、話して、料理を作って。そんな涼佑くんらしい場所になりそうですね。

ーちなみに、周りの人から涼佑くんは、どんな人だって言われますか?

えっ・・・。
えっと、顔は親指に似ていると言われます。

ーwww

誰が親指やゆうて。笑

本場フランスに触れたい

ー直近で、何かやりたいことなどはありますか?

フランスに行きたいと思っています。来年あたりに。
食というよりも文化を学びに行きたいという感じです。

ー料理だけではないんですね!

そうですね。
フレンチをやっているのに、現地を知らないのもなぁと思いますし。

フランスの生活文化を知りたいと思っています。価値観とか、気候とか。

ー本格的にフレンチを提供するとなると、やはり本場のフレンチ(フランス)を自分の目で見たり、耳で聞いたり、感じたりするのが大事で、そこに向き合おうとしている涼佑くんが素晴らしいと思います!

ーちなみに、フランスのどこに行きたいとか具体的にはありますか?

パリは行きたいですが、働ける店があればどこでもいいって感じです。
候補であるのは、トゥールーズというところです。
三つ星のレストランがあって、そこで修行させてもらうかもしれないです。

帰国後に考えていること

ーでは、その修行からの帰国後、やりたいことを考えていますか?

帰ってきたら、自分の店の物件とかを探そうと思っています。

ーわぁ、ついに!それは楽しみですね!お店の構想とかはありますか?

んーまだ全然ないですけど。
居酒屋みたいなカジュアルな雰囲気を考えています

ーやっぱりフレンチですか?

いや、もうジャンル関係なくとは考えています。
居酒屋とかにありそうなメニューとかも出せたらと思っていて。

ーいいですね!早く行きたいです!

お店を出してからが本番だとも思いますが、頑張りたいんで、ぜひ来てください!

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<編集後記>
インタビュー後、実際に涼佑くんのchef's event に参加させていただきました。
涼佑くんの作る料理は、まず出された時の料理の美しさ、盛り付けのアイデアに心が動き、そして一口、口にすると、食べ進めるごとに移ろう様々な味と、食感の楽しみが繰り広げられ、香りの余韻も残る。料理一品一品へのこだわりが細部にまでわたっていて、飽きさせない。さすが、「エブリデイ、人生」を送っている方が作る料理だなと感心させられました。

料理人としての成長を考えているかと思いきや、夢の規模は大きく、英雄。
より多くの人を笑顔にし、幸せを与えていく姿が、彼の人柄と眼差しを見ていると、もうすでに目に浮かびます。

これから、海外を経験し、またそれを日本に持ち帰り、場を作ってくれることがとても楽しみです。

▼前編はこちら

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