Oちゃんラーメン

僕の街には3店舗ラーメン屋があって、【Oちゃんラーメン】は1番賑わってなかった。

賑わってない=美味しくない
というとこもなく、美味しいと噂は聞いてた。
小学校の頃は通学路の途中にあって、通るたびに一度は食べてみたいと思っていた。

通るたびは言いすぎたかもしれない。通った時に思ったことがあるってくらい。

じゃあなんで賑わってなかったのかというと、これは立地の悪さだと思う。

専用駐車場は1台もなく、車で行く場合は近くのコインパーキングに止めて歩いて行かなければならなかった。しかも歩いて3分くらいかかる駐車場。

それでも美味しいと聞いてたので行ってみたい気持ちはあった。

そしてその日はついに訪れた。

中学に入ったら土日に部活があって大体半日だった。その日は午前練だった。

帰る時にY(バスケ部キャプテン)が何を思ったか

「今日みんなでOちゃんラーメン行かない?」

と言い出した。

午前練の後は各自家に帰って、昼ご飯食べてから再集合して仲の良いバスケ部数人で遊ぶのが定番だった。

「いいね!行こう」

いつも遊ぶ中からその時お金持ってた4人でOちゃんラーメンに向かった。中学からは歩いて10分くらいかな。子供だけでご飯食べに行くこと自体が初めてだったので、みんな緊張していて口数は少なかった。

Yだけは俺はOちゃんラーメンの常連なんだと饒舌に話していた。

Oちゃんラーメンに着いた。
店の扉を開けるとお客は誰も居なかった。

「いらっしゃい!」

元気におじさんが挨拶した。奥におばさんもいて、夫婦でお店をやっていた。

「お!M君(Yの苗字)じゃないか!今日は友達と一緒なんだね!どこでも好きな所に座って!」

Yの常連って話は本当だったらしい。
僕たちは座敷じゃなくて椅子の方の席に座った

ニコニコして話すおじさんは人当たりが良くて、とても感じがいい爽やかなおじさんだった。

奥のおばさんもそのおじさんをニコニコして見てて、この夫婦はいい夫婦なんだろうなって思ったのを覚えてる。

お店に向かってるときに、ここはノーマルラーメンが美味しいんだとYが力説していたからもちろんみんなラーメン並み盛り頼んだ。

「部活帰りなんだろ?お腹空いてるだろ!ご飯も食べて行け!」

注文を取ってたおじさんが神発言をしてくれた。

みんなで「ありがとうございます!」って言った。

おじさんはニコニコしながら頷いて厨房に行った。おじさんが料理を初めて、おばさんはそれを見てた。

あのおばさんって何のために居るんだろう


待ってる間は、このお店めっちゃいいじゃんとかそういう話をしていたと思う。しばらくするとラーメンとライスが到着した。

味も美味しくて、みんなニコニコで食事した。

一通り食べ終わって、お会計しようかってレジに向かったら当然のようにおじさんが来た。本当にあのおばさんの仕事はなんなんだろう。

「ラーメンとライスで850円ね!」


え?

おじさんの言葉に中学生4人は絶句した


ライスも取るの?


パッておじさんの顔見たら、さっきまでのニコニコした顔じゃなくて感情のないロボットみたいな顔になってた。

みんなで顔を見合わせたが、ロボットがこっちを見てるので850円払って、お店を出た。

「また来てね!」

そう言ったおじさんはニコニコ顔に戻ってた。

Yが「なんかごめんな...」って言った。


なんとなく繁盛しない理由がわかった気がした。




つづく



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