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スポットライト創業者2人が「残りの人生すべてを賭ける」テーマに出会うまで(前編) #創業者対談

テイラー共同創業者の柴田陽と高橋三徳のクロストーク

みなさんこんにちは。今回は2回にわたって、テイラー共同創業者の柴田陽と高橋三徳の出会いからテイラーにかける想いまでを対談形式でお届けしたいと思います。

前編となる今回は、二人の出会いから2011年にスポットライトの立ち上げ、来店ポイントアプリケーション「スマポ」の開発秘話、そしてテイラーを創業するために再びタッグを組むところまでお伝えします。

共同創業者ふたりの略歴

真夏のタクシー用ガレージで開発された来店ポイント「スマポ」

 -- お2人の出会いについて教えてください。

柴田
「みさとさん(高橋三徳)とは僕が28歳でスポットライトを創業した時からの付き合いですね。マッキンゼー退職後、2社を立ち上げ、バイアウト。3社目に株式会社スポットライトを立ち上げ、来店ポイントアプリケーション「スマポ」のアイディアを具現化する過程で出会いました。

スマホが急速に普及する中で、いかにスマホでリアル店舗の販促につなげるかを各社模索していた時期です。

スマホを使った来店ポイントのアイディアを大手小売チェーンに提案したところ、数社が私が考えていたアイデアに興味を示してくれて。2010年の夏にローンチすることだけが決まり、そこに向けて動き出す。みさとさんと出会ったのはその時ですね」

–2010年夏といえば、iPhone4が日本で発売されたタイミングですから、まさにスマホ黎明期ですね

高橋 
「僕は当時、楽天グループのアプリの推進を担当していました。ガラケーには、赤外線通信とかがあったじゃないですか。ああいう手軽な、端末間の通信機能がまだスマホにはなく、なんとかしたいなとずっと考えていたんです。スマホの音声ジャックに赤外線のセンサーと発信をつけたりする実験をしていて。その話を柴田にしたら「来店検知もそれで行こう!」と話がまとまったんですよね」

柴田 
「基本的に屋内にある店舗に来店したことを検知する手段がこのアイディアの技術的な鍵です。スマホでアプリから使えるセンサーを消去法的に、来店検知に使えそうなものに絞り込んでいきました。センサーは例えばGPS、Wi-Fi、Bluetooth、マイク、カメラ、タッチぐらいですね」

高橋 
「手段が少ない上に、当時はBluetoothもWi-Fiも、位置情報としては使えず、GPSも精度が高くなかったんですよね。当然、屋内では機能しないし」

柴田 
「最終的にスマホのマイクで拾える帯域の超音波で来店検知するっていう手段を取るんですけど、並行して超音波を出すハードウェアも作らなきゃいけない。ハードウェアと言っても、電子回路の基盤からそこに乗る部品、スピーカーなど本当に一から全部作らないといけない。

ちょうど開発時期がお盆とかぶっていたため基盤試作業者も休みだったんですよ。 

そこで自分たちで基板を作らないということになり、日本交通の川鍋社長(当時)がが貸してくれたタクシー会社のガレージのような場所で真夏に夜通し作り続けてましたね。寿命が5年縮んだ気がします(笑)」 

ガレージでハードウェアを突貫工事で作る

高橋 
「今だったら他の方法もあると思いますが、当時はエッジングという、薬品を銅板に塗って回路をつくるという方法だったので本当に実験室のような環境でしたね。薬品を使うので臭いもひどかったですし」

柴田 
「ハードコアな感じでしたね笑。とはいえ、みさとさんのミラクルな活躍で無事にローンチを迎えることが出来ました。その日のうちにメディアにも紹介してもらえたり、バタバタしつつも大きなバグもなく、比較的早く軌道に乗っていきました。バイアウトするまでの2年間にドコモやリクルートなど大手の参入もあったのですが、競り負けることなく事業を伸ばし、約100ブランドのチェーンに展開できました」

高橋 
「その間ハードウェアを進化させ、特許も取りましたね。」

 

−−急成長をしている中で、なぜ売却を選択したんでしょうか?

 
柴田
「ポイントサービスはオンラインとオフラインの融合が叫ばれていた時代で、大手3社の三国志状態だったんです。どこかのタイミングで3つの陣営に入るか、裏側を提供するのか決めなきゃいけないなという思いはありました。何より、ポイントサービスが乱立することはユーザーのメリットにはなりません。なのでバイアウトがベストな選択だと考えました。その後の楽天の成長を考えると、同社がリアルポイントに参入していく中で大きな役割を果たせたかなとは思っています」

2013年頃

スポットライトでの経験は、スタートアップに必要なすべてを経験した4年間

−−創業から売却までの2年間はどのようなものでしたか?

 
柴田
「僕にとっては自分の人生を規定するような2年間だったと思っています。スポットライトを起業していなければ今の自分はないし、みさとさんと出会うこともなかった。そこで起業の面白さを知り、結果的にもアントレプレナーの道を歩んできました。
 
また、同時に、自分の起業家としての素質を見極める経験にもなりました。この2年間の学びを踏まえてもう一度チャレンジしたい。それは2013年のバイアウト時からずっと考えていました」

高橋 
「僕も同様ですね。チームを0から立ち上げ、プロダクトも同時に作りながら組織を成長させていく。得難い経験が凝縮された2年間でした。スタートアップの立ち上げに必要なことを全て経験したとすら思っています。

特にスマポは、ハードウェアからアプリまですべて自社で作っていたので、それらを全部経験できる機会はそうないですし、これは今も生きている経験かなと思います。

例えば、ハードウェアの量産化は本当に大変で、最初の100台は自前でなんとかなるとしても、店舗が増えていくとそうはいかない。そのスケールを体験したこともですし、どこの工場ならどんなものが作れるなど、経験しないと得られない知見を多く学べました」

柴田
「手触り感のある経験は財産ですし、BtoBtoCの複雑なビジネスをハンドリングできたことはすごく自信にも繋がりました。 

何よりの学びは、起業における市場選択の重要性ですね。起業すると、アイデア探しの時期を含めて、短くとも5年はフルコミットすることになる。次の会社を立ち上げる時、アイデア探しに時間とリソースを割こうと考えたのはスポットライトの経験があったからですね」

別々のキャリアを経てテイラー創業へ。人生をかけたチャレンジに踏み出す

−−バイアウト後はそれぞれどのようなキャリアを経てきたのでしょうか?

高橋 
「僕は次のアイデアを探しながらスタートアップの立ち上げを手伝っていて、中堅規模の開発会社になるぐらい仕事は頂いていたのですが、自分でビジネスを起こしたいなと思い、一定規模でやめたんです。

そんな試行錯誤している時期に、縁があってメルカリに入社しました。僕らはスポットライトの時にメルカリほどの成長を体験していなかったので、伸びている会社ってどういう雰囲気、仕組みなんだろうって興味があって。メルカリは事業も伸びている上に、開発者にとって働きやすい環境があります。採用や福利厚生においても業界をリードするような試みをしていますし、次世代のITカンパニーのお手本になるような組織なんですね。じゃあ資金さえあれば同じような会社を作れるかというとそうではなく、多くのスタートアップが真似できる合理的な工夫がたくさんありました。そういう部分を中から経験できたことは大きいですね。 

メルカリのサービスの成長を横目に見ながら、研究開発組織の立ち上げを中心に4年間働きました。最新の技術に触れつつ、企業がどんな研究開発をすべきか、研究所の仕組みからメンバー集めまで幅広く担当していました」

柴田
「僕は2015年に楽天を退社した後、アメリカに行って1年ぐらい、帰国後も3年ぐらい次の起業のアイデア探しみたいなことをしていました。その期間に6つほどのアイディアをテストして、ローンチしたサービスもあったのですが、人生をかけてチャレンジするのはこれではないなと。テイラーの原型になる7つ目のサービスを思いつくまで丸4年間くらいかかりました」

−−そこから、創業に至るわけですね。

柴田
「2019年頃からローコードプラットフォームが面白いと思って、BubbleやRetoolを使ってお客さんの課題を解決するという取り組みをしていました。その中で、エンタープライズ向けのバックエンドローコードの領域に非常に大きな可能性がありそうだなと感じて。色々と検証を重ねながらそれが確信に変わっていったんです。そこで、みさとさんにアイデアを共有して、また一緒にやりませんかと相談したんです。お互いの状況もあるし、事業ドメインに興味を持っていただけるかはわかりませんでしたが、まず声をかけるのはみさとさんしかいないなと」

高橋 
「いやいや、思ってないでしょう(笑)ただ、連絡をもらった時はすごくタイミングがよかったんです。

メルカリの研究所の未来を考えた時、アカデミアのバックグラウンドを持つ相応しい人を研究所トップにしたいという思いがずっとあったんですよね。それが実現する見通しが立ち、僕は引き際かなと思っていたタイミングでした。

柴田が『このチャレンジは人生かけて取り組みたい』と言ってたので、僕も細かい事業内容を聞かずにやろうと決めました」

【後編はまもなく公開されます】



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