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世界有数のアクセラレーションプログラム「Y Combinator」参加レポート#1 「Y Combinator」って何をするの? に答えます

こんにちは。テイラー代表の柴田陽です。
Podcast「START/FM」と連動した企画として、Yコンビネーターについて紹介していきたいと思います。
 
以前のエントリで記載したとおり、当社テイラーは「YC Summer 2022 Batch」に採択されました。9月のDemoDay(投資家へ向けて全YC参加者がピッチするイベント)に向けてプログラムが進行中なのですが、その内容や、実際に採択されて感じたメリットなどをお伝えしていきたいと思います。
 

アメリカのスタートアップの歴史が産んだアクセラレーションプログラム

スタートアップ界隈の方はご存知かと思いますが、Y Combinator(以下「YC」)は世界で最も実績のあるアクセラレーションプログラムです。過去にはAirbnbやDropbox、最近ではStripe、Brex、OpenSeaといったユニコーン企業を輩出した、スタートアップの登竜門的なプログラムです。2005年から累計で3,000社以上に出資をしてきていて、ポートフォリオ企業の時価総額は合わせて約70兆円を超えているといえば、その規模、影響力の大きさが分かると思います。

YCと聞いてみなさんが思い浮かべるのは年に2度行われるDemo Dayでしょう。世界中のベンチャーキャピタルが集まる場でYCの出資先がピッチを行うというお祭り的なイベントなのですが、多くのBatchはここでの資金調達を目指します。

Demo Dayでシード投資を受けて一足飛びで成長していくドラマチックな例もありますが、YCはシード段階の企業だけを支援しているわけではありません。もちろんシード期のスタートアップも多く、中にはメンバーが集まっていないチームのアイデアが評価されて採択されることもあります。一方で、弊社のように数億円規模の調達を行っているスタートアップまで、実はフェーズは様々です。また、北米に限らずヨーロッパ、アジア、南米といった各国からスタートアップが参加するなど非常に多様性に富んだ顔ぶれです。

「YC Summer 2022 Batch」は約250社が参加しているのですが、テイラーもそのうちの一社となりました。選考は書類選考と約10分間の面接という、意外とあっさりとした手続きでした。ですが、面接ではこちらからピッチをする時間は与えられず、パートナーからの質疑応答に応えるというもので、事業のアイデアやファウンダーの人格などをシビアに判断する形式なのでしょう。

2022年の5月に採択が決定し、現在は9月のDemo Dayに向けたプログラムがスタートしています。前置きが少し長くなりましたが、ここでは実際にプログラムに参加して感じるメリットをお伝えしていきたいと思います。

ユニコーン企業のファウンダーが多数在籍するコミュニティ

まず1つ目は、「パートナーの存在と彼らからなるコミュニティの密度について」です。

YCの特徴はなんといっても経験・実績ともに豊富な起業家出身のパートナーのみで構成されていることです。これだけ重層的なスタートアップコミュニティというのは、世界中を見渡してもYCだけだと思います。

例えば、テイラーの主担当となったパートナーのニコラスはエンジニアで、Algoliaという検索APIを提供しているスタートアップの創業者。Algoliaは、多くのWebメディアやWebサービスに組み込まれている検索機能を提供するバックエンドサービスで、ARRは150億円以上に達すると言われています。日本でARR150億円のSaaSは上場企業含め数社しかないので、こうした起業家から直接メンタリングを受けられる機会というのは、そう簡単に得られるものではありません。

ニコラスに限らず、パートナーは全員がYコンビネーター出身の、実績のある起業家なので、いわゆるVCとは一線を画すことがわかると思います。

彼らは数百、人によっては千を超えるスタートアップの成長を見てきています。例えばAirbnb創業者のブライアン・チェスキーがシード期にどんな悩みを抱え、そこからどうやってブレイクスルーをしたのか。決済システムを提供するStripeのコリソン兄弟がどんな成長曲線を描いたのか。そうしたビフォーアフターを生で見てきている。プログラム期間である3ヶ月間でユニコーンとなるスタートアップを見分けられると言っているパートナーもいます。彼らの存在がYCの基盤を支えているのは言うまでもないでしょう。

YCパートナーがプログラムの卒業生から構成されているのもポイントです。YC出身のユニコーン企業のファウンダーがパートナーとなって次の世代を支えていくシステムなので、常に最新の生の情報へとアップデートされていきます。すでに大型調達をしている企業や、一度バイアウトを経験した起業家がYCに参加するのもこのためで、成功確率の高い人がより成功確率を高めるために参加するようなコミュニティになっているのです。

また、YCのプログラム終了後も卒業生同士のネットワークは活きてきます。慶應義塾大学の「三田会」のようなものをイメージしていただくといいかもしれませんが、そこでのつながりから顧客が見つかったり、ビジネスが発展したり、という展開も実際に起こり得ます。非常にアメリカ的で、良くも悪くも同族意識が強い場ではあるのですが、こうしたコミュニティを活用できることもメリットの1つとして挙げられるでしょう。

起業家が求める情報が体系化された「とらの巻」

2つ目が、「ナレッジへのアクセス」です。 

YCには、「Bookface」というスタートアップの成長に必要な知見が体系的にまとめられたドキュメントが存在しています。例えば、会社のセグメント、フェーズに合わせてするべきことがリストアップされており、具体的にどんなサービスを使うべきかがまとまっている、というような具合なのですが、とにかく情報の密度が高い。定量的に解決策が見えている課題に対して、最短距離で答えに辿り着ける。不要な失敗を避けられるということです。

また、「Bookface」の別の機能として、起業家向けにクローズドな仕様にしたFacebookのようなものがあります。YC卒業生・卒業企業の情報はもとより、スタートアップが使いがちなあらゆるサービスのYC向けディスカウントの一覧、それらサービスの口コミ、VCや投資家、法律事務所等の口コミなどが書いてあり、さながらYCという一つの世界におけるSNSになっています。これら2つで、スタートアップのファウンダーが得たい情報のほとんどにアクセスできる環境が整っています。

そして、3つ目が「シグナリング効果」ですね。

これは副次的なものではありますが、世界的にも実績のあるアクセラレータープログラムに採択されたということで、国内外のメディアでも好意的に取り上げてくださっています。まだ創業間もないスタートアップにも関わらず、こうして期待をしていただけているのはありがたいことですね。

海外メディアでの露出の際に一定のニュースバリューを得られたことはもちろん、長期的には採用においても興味を持っていただけるフックになるのではないかと思います。

Demo Dayに向けて、テイラーは地道に足元を固めていく

では最後に、テイラーがDemo Dayに向けて何をしていくのかについてお話します。

前述の通り、Demo Dayでの資金調達を目指すスタートアップが多いのがYCの特徴ですが、当社はもう少し足元を固めていくためにプログラムを活用したいと考えています。

弊社はすでにテイラーメイドされた業務システムを簡単に構築できる「Tailor Platform」というプロダクトをリリースしていて、それを作り込んでいくフェーズにあります。プラットフォームビジネスは初期からセグメントを広げてしまうのは悪手なので、想定するユーザーは誰で、どういう産業にコミットするかなど今後のフォーカスを決めていかなければいけない。パートナーとの間でも一緒にプロダクトを磨いてくれる顧客を獲得しようというゴールが設定されています。

幸い、YC採択企業の中にはシステム系をドメインにした企業も多く、近しい位置付けの企業もあります。プロダクトを磨きつつ、そうした企業にリーチアウトして提携するといった展開も見据えています。

まだまだプログラムは始まったばかりですので、今後もPodcastやnoteで報告していきたいと思います。興味のある方はぜひnoteをフォローしてください。

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