起業家には、無風がいちばんつらい
何者かになりたくて、人とは違う道を歩んだにもかかわらず、誰ひとりとして自分のことを知らない。
社会にインパクトを与えようと、リスクをとって事業を立ち上げたのに、社会はなにひとつ変わらない。
無風のつらさは、世間でよく言われる“HARD THINGS”のどれより苦しい。
「100話で心折れるスタートアップ」を読みながら、そんなことを考えていました。
無風のまま死んでいく恐怖
僕も漫画の主人公・ウサギさんと同じように、一切の風を起こせない「無風状態」を経験した過去が一度ならずあります。
まずは、ウサギさんのように、学生起業をしたタイミングです。“意識高い系”の活動に汗を流していた僕は、その延長線上で会社を立ち上げました。
1,000万円の借金を背負い、毎月5万円の給料で極貧生活。お金はないけれど刺激的な毎日で、「社会にインパクトを与えるぞ!」と息巻いて事業をつくっていました。
でも、これといった手応えはありません。かれこれ10個ほどプロダクトをリリースしましたが、あえなく失敗しました。
頭を捻って生み出した事業案なのに、なけなしのお金を叩いてつくったプロダクトなのに、誰の目に触れることもなく、社会もまったく変わらない。
すべての時間をつぎ込んだ結果がそれですから、「才能がないのだ」と落ち込みました。
とはいえ、仕事が上手くいかないだけならまだマシです。無風の起業家は、プライベートまでも上手くいかなくなります。
とにかく貧乏なので、好きな子をデートにも誘えないし、知人には「泰輝はなにをやってるんだろうね(笑)」みたいな目で見られるし、誰にも認めてもらえないような気持ちになるんです。
起業家になってから10年近く経ちますが、最も苦しかったのは、誰からも見向きもされない「無風状態」だったように思います。
VAZを経営しているときに、いくつものHARD THINGSを経験しましたが、「無風のまま死んでいく恐怖」に比べたら全然マシでした。
それくらいに、無風はきついのです。
動き回ると、風が吹く
遠い昔の話をしてしまいましたが、実はVAZの代表を退任してからも、一切の風を起こせない「無風状態」を経験しています。
次なる挑戦として立ち上げた、TikTok運用を主軸とするマーケティングエージェンシー「Pien」での話です。
僕自身の力不足でVAZを離れることにはなったけれど、業界でNo.2の会社に成長させられたことから、曲がりなりにも「風を起こした自負」がありました。
だから「もう一度復活できる」と信じていたのですが、そう甘くはなかったのです。
会社を共同創業したメンバーとの間にトラブルが発生するなど、創業からすぐに予期せぬアクシデントが連続。うまく事業が回らずに赤字経営になり、創業して1年も経たないうちに「半年後には倒産する」状態に陥ってしまいました。
次のアクションによっては倒産が確定してしまう状況になったため、最小限のチームで動かなければならず、Pienはやがて僕と社員ひとりだけの会社に。情けないですよね。
残ってくれたメンバーの頑張りもあって、なんとかして倒産の危機は免れましたが、細々と生きていける程度の売上しか立っておらず、当時の会社はまさに「無風」です。
HARD THINGSを乗り越えたら、今度は無風になるという、誇張ではなく地獄のような時間でした。
「なんでこうなってしまったんだろう」と自分の実力不足を恨んだこともあります。
でも、現状を恨んだところで、状況は変わらない。結局は、アクションを起こすこと以外にすべきことはありません。
だから、本当は人に会いたくなかったし、経営がうまくいっていない話をしたくはなかったけれど、「森くん最近どう?という質問に苦笑いをしながら、とにかく人に会い続けました。
すると、状況を一変させる、とある出会いに恵まれました。女性の健康をサポートする漢方整体サロン「りんどう」のオーナー・よし子先生との出会いです。
詳しくはりんどうのホームページを見てほしいのですが、よしこ先生はこれまでに、不妊に苦しむ女性たちを数多く救ってきた「妊活のスペシャリスト」です。
不妊治療をしても妊娠できなかった女性たちが、よしこ先生の手によって、奇跡的に子どもを授かっていました。
この話を聞いたとき、「自分が挑戦すべき場所はここなんじゃないか」と天啓にうたれたようでした。
僕がずっと事業をつくってきたSNSマーケティングの力を使えば、よしこ先生が持つ唯一無二の価値を日本中に広めることができ、悲しみから救われる人が数多くいることを確信できたからです。
取り組みのスタートは、TikTokのアカウント運用です。これまでのキャリアを伝え、自分が提供できる価値を説明したところ、デジタルマーケティングのパートナーとして迎え入れていただきました。
結果、よしこ先生のTikTokアカウントは、運用開始から1ヶ月間で500万再生を記録。アカウントには多くの方からご相談が寄せられており、その声の大きさに比例して、数字はどんどん伸びていきました。
それから、SNSの運用だけでなく、LPの設計をはじめとするマーケティング、ECサイトシステムの立ち上げ、カスタマーサポートの支援も手がけさせていただきました。
すると、ECサイトの売上は、立ち上げから半年間で店舗単体の売上を超える規模に。
再生回数が伸び続けていくアカウントを見ていて、積み上がっていく売上を見ていて、無風だった会社に風が吹いたのをたしかに感じました。
新会社を設立し、StoC事業を立ち上げます
よしこ先生とタッグを組んだ事業は、立ち上げから11ヶ月で累積の売上が2億を超えました。
自分でも驚きましたが、事業ではなく「ひとりのスペシャリスト」に向き合った結果だったように思います。
また、この経験によって、次に僕が挑戦すべきことが明確になりました。
「まだ知られていないけれど、計り知れない価値を持つスペシャリストをプロデュースし、彼・彼女らが持つ価値を社会に広げていくこと」です。
でも、僕を含めて社員ひとりしかいない小さな会社では、スピードは遅いし、スケールも小さい。できることが限られてしまいます。
ひとりのスペシャリストに向き合うからこそ結果が出ているので、それを薄めることもしたくありません。
そこで、仲間を探すことにしました。「僕が掲げたビジョンに共感してくれる、マーケティングのプロはいないだろうか?」。
よしこ先生のTikTokアカウントを見せ、すでに始まっている大きな成長の初期微動、事業の青写真を話して回ると、同じような思いを持つ起業家やマーケターの方々とコンタクトが取れました。
初期は協業体制を模索していましたが、話を進めるうちに「Pienが持つコンセプトメイクとSNSマーケティングのノウハウ、そして、彼らが持つマーケティングを起点とする事業創造のノウハウをかけ合わせた新会社を設立するのがベストだ」という結論に。
新しい挑戦の、幕が上がります。2022年11月、新会社「Misfits」を設立し、StoC(Specialist to Consumer)事業を立ち上げました。
StoC事業が手がけるのは、スペシャリストの皆さんが「本業だけ」にコミットできる体制の実現です。
本来であれば、SNSマーケティングやカスタマーサクセス、バックオフィス業務……とあらゆることに目をかけなければ事業は成長しませんが、StoC事業では、そのすべてを伴走者として代理します。
よしこ先生であれば、売上のことを気にせず、目の前のお客さんへのサポートに全身全霊を注げるようになる。しかし、それでも事業は大きく成長し続けるという、好循環を生むことができるわけです。
僕たちがスペシャリストのみなさんに提供する支援は、いわば「事業創造」そのもの。コンセプトメイクからSNS運用まで、ありとあらゆる支援を行っていきます。
よしこ先生と立ち上げた事業以外にも、いくつかのプロジェクトが動いており、月あたり数千万売上が立っている事例もあります。立ち上げからほとんど時間が経っていませんが、絶好のスタートです。
ここから一年間で数十のプロジェクトを立ち上げる予定で、スペシャリストの許可が取れ次第、事例を順次公開していきます。
「フォロワーからの信頼を獲得できているのに、誰にも負けないノウハウを持っているのに、それに値するだけの売上を立てられていない」という人がいたら、ぜひ声をかけてください。
本業に向き合い続けていれば、あなたの持つ価値が自ずと世界中に広がり、その対価として売上が生まれるサイクルを僕らがつくります。
無風の人生は終わりにしよう
僕がVAZを立ち上げたとき、SNSマーケティングは「マスマーケティングのおこぼれ」で、ビジネスチャネルとしての価値が評価されていませんでした。
でも、現在はSNSを起点に猛烈な売り上げをつくる企業が生まれ、数億円を稼ぎ出す個人事業主も出てきました。
5年前に信じた通り、SNSは間違いなく、人生を変え得るツールです。
VAZの代表を退任してから、一切の風さえ起こせない無風の2年間を過ごしてきましたが、そんな日々も今日で終わり。
これからは、僕が人生を捧げてきた「SNSマーケティング」を起点に、あなたが持っている唯一無二の価値を事業化していきます。
このnoteを読んでくださり、少しでも興味を持っていただいた方は、僕のツイッターまで直接メッセージしてください。ご連絡を確認次第、順次対応させていただきます。
編集協力:オバラ ミツフミ