トレンドと歴史の合わせ技で万バズ!「友達がかわちぃ」のかわちくないTikTok戦略
フォロワー数至上主義のアイドル市場に「NO」
森:TikTokのタイムラインを大いに賑わせたアカウント「友達がかわちぃ」。まさかアイドルを結成するストーリーになっているとは思いもせず、洗練された戦略に感動しました。もともと、TikTokありきでのプロモーションを考えていたのでしょうか。
桝田屋:TikTokでファンを獲得するストーリーは、デビュー直前になって構想したものです。これといった勝ち筋があったわけではなく、むしろアイドルをプロデュースした経験がない、いってしまえばゼロからのスタートでした。
プロジェクト発足時の私にあったのは、やりきれなかった「悔しさ」だけです。
私は以前アイドル活動をしていたのですが、自分の時間をすべて費やしても思うような結果を残せず、3年間で諦めた過去があります。
しかし、縁があってプロデュースする機会をいただいたので、「私と同じような思いをさせないために」と、思いだけの“見切り発車”でスタートしました。
森:プロジェクトをスタートするにあたり、具体的にどのようなアクションから着手されたのでしょうか。
桝田屋:まずは、アイドル市場の動向に着目しました。何者でもない私たちが、どうすれば注目してもらえるのかを考えることから始めたんです。
リサーチをしてみると、現在のアイドル市場では、SNSで人気になっているインフルエンサーでメンバーを結成する流れがあると気付きました。そのため、知名度がある子は必然的に売れて、知名度がない子はまったく売れなくなっていたんです。
でも、ひと昔前のアイドルはそうじゃなかったはず。いわゆる“原石”を発掘して、彼・彼女らの成長を追いかけていくことに、ファンたちは熱狂していたように思います。
私がアイドルをプロデュースするなら、成功が約束されたグループを結成するのではなく、王道のスタイルで勝負したかった。そこでまずは、知名度はないけれど、きらりと光る原石を見つけることにしました。
メンバーを本気にさせる限界突破の仕組み
森:大手事務所でもない限り、メンバー集めには相当な苦労がありますよね。
桝田屋:おっしゃる通りで、無名のプロダクションがオーディションをしたところで、大抵の人には関心を持ってもらえません。ですから、SNSでダイレクトメッセージを地道に送り、採用活動をしていました。
TikTokやInstagramで「#女子高生」「#プリクラ」などとハッシュタグ検索をかけ、自分たちが描いているアイドル像に合うメンバーを探したんです。
現在のメンバーには、フォロワーが100人以下だった子もいます。それくらい、原石を発掘することにこだわりました。結果的に、メンバー集めには丸1年間かかっています。
森:昨今のアイドル市場の流れを無視して、自分たちのスタイルを貫いたんですね。スカウトにあたり、重視していたポイントはありますか。
桝田屋:たくさんありますが、特に気をつけていたのは「スカウトした子たちのやる気の引き出し方」です。
オーディションに参加する子は、自分から応募しているので、「絶対に合格したい」という思いで頑張る傾向にあります。しかし、スカウトを受けた場合は、「スカウトされたからやってあげる」といった具合に慢心してしまうんです。
アイドル戦国時代において、向上心のないメンバーが大成することはありえません。自分自身の経験からもそれを知っているので、スカウトで集めたメンバーにも、必ず実技テストを設けていました。
実技試験までに準備をしてこなかった子に関しては、どれほど容姿に優れていて、アイドルとしての素質があったとしても、不合格にしていました。
森:スカウトしているけど、オーディションを突破しなければならない仕組みにすることで、自分たちの弱点をカバーしたんですね。
桝田屋:「アイドルになりたい」と思っていた子たちではないので、最初はそこまでモチベーションが高くありませんから。
でも、この仕組みによって最終選考を突破した子たちは、「何人もの中から選ばれた」という意識を強く持つようになりました。結果的に、以前よりアイドル活動をしたかった子たちと同じくらい高いモチベーションで、活動に参加してくれているはずです。
「友達がかわちぃ」のかわちくないTikTok戦略
森:人選のこだわりもさることながら、秀逸なTikTok運用術なくして、これほどのバズは起きなかったはずです。アカウントのコンセプトを、アイドルではなく「可愛い女子高生」にした理由を教えてください。
NY buddies:アイドルのTikTokアカウントは多々あるのですが、その多くが曲やライブ映像でバズっていたんです。つまり、個人としてバズっている事例はそこまで多くありませんでした。
そんなことを考えている矢先、メンバーの一人が制服姿の写真をTwitterに投稿したところ、ほとんどフォロワーがいないのにもかかわらず「いいね」がたくさん付きました。
その光景を見て、ピンときました。「女子高生」はコンテンツとして最強だと気付いたのです。実のところ、TikTokでは、一般の女子高生がめちゃくちゃバズっています。これが、アカウントのコンセプトを決める最初のきっかけです。
そこからリサーチを進めると、「私の友達がめっちゃかわいいんです」と、第三者目線の投稿をしている女子高生のアカウントがフォロワーを集めていることも分かりました。
私たちがプロデュースした女子高生たちは、みんな一般人です。結果論ではありますが、まだ知られていない可愛い女子高生たちを他撮りで紹介するという潮流にぴたりとハマるアカウントがつくれることから、本格的な運用を開始することにしました。
森:コンセプト設計が秀逸なのはもちろん、1本目の「ほんとに何百回もかわいいって言ってるのに認めないからバズって本人まで届け!!!🥺」という投稿文、これは天才だと思いました。1本目の投稿から、SNSでバズる要素が詰め込まれているなと。
NY buddies:最初の動画は、投稿文も演出もこだわりました。かなり細かい話ですが、1本目の動画では、マスクを外さないと決めていたんです。また、最初は1人しか顔を写さず、他のメンバーは後ろ姿だけにしています。
「可愛いね」と言われたときの照れ顔で引きをつくり、さらに「マスクの下はどうなってるんだろう」「きっと他の子たちも可愛いはず」という“匂わせ”をしたのです。
森:アカウントに登場するメンバーはかわちぃですが、戦略はまったくかわちくないですね(笑)。
NY buddies:絶対に失敗させたくなかったので(笑)。
森:ちなみに、デビューを発表した後の世間の反応はいかがでしたか? 一般人のアカウントとして運用していた分、炎上してしまう可能性もあったかと思います。
桝田屋:発表後の反応に不安がなかったといえば嘘になりますが、ありがたいことに称賛のコメントが多かったです。おそらく、デビューまでの過程で、視聴者のみなさんが女の子たちのファンになってくれたからだと思います。
バズりたいなら「フォローする理由」をつくれ
森:最初の動画に限らずバズを連発されていて、開設から2週間という短期間でアカウントを大きく成長させていますが、その秘訣を教えてもらえませんか……?
NY buddies:「視聴者の0.5歩先をいく」ことです。いったいこの先、どのような展開になるかが予想できない状況を常につくり、視聴者の方がフォローする理由を用意するようにしていました。1本目の動画でマスクをつけているのも、これが目的です。
最も予想できない秘密のゴールは「撮影者」でした。顔は出さないけれど、常に声だけは認識できるようにしたことで、「撮影者はどんな子なんだろう」という状態をつくり続けたのです。
森:「アイドルデビューします」と宣言した解禁動画は、撮影者の解禁動画でもあったわけですね。
NY buddies:そうなんです。「撮影者も可愛い!」といったコメントが来ることを予測してアカウントを運営していましたが、解禁動画には予想通りのコメントが殺到しました。
森:ここまで戦略的だったとは...…本当に驚きです。
NY buddies:TikTokを開設すると決めてから、アイドルデビューの発表日までは2週間しかありませんでした。この短い期間で何ができるのかを必死に考えた結果、予想以上の盛り上がりをつくれたと思っています。
秀逸なアカウントは、トレンドと歴史の二兎を追う
森:お話をお聞きして、ただトレンドを真似るだけでなく、アイドルの歴史に根ざした戦略を練られているのが印象的でした。
僕の注目しているTikTokアカウントに「アノニマス/Anomymous」さんという方がいるのですが、彼のコンテンツにはファッションスナップの文化である「登場人物のストーリー」が残されています。
TikTokという新しいフォーマットを活用しながらも、ストリートスナップにおける「守破離」の「守」を徹底されている点が、桝田屋さんの戦略論とすごく似ているなと。
桝田屋:アノニマスさん、私もついつい見てしまいます。たしかに、押さえるべきところは押さえつつ、自分の手でアレンジを加えていくという点では似ているかもしれません。
私はアイドルのトレンドや過去のアイドル史はチェックするようにしていて、そこに抱いてた違和感や課題点を解決することを意識していました。
例えば、「Sharply ♯」と「Flutter ♭」というファミリー体制でのデビュー。2グループにしたのは、日本のアイドルは“集団の群美”が世界的に称賛されていたからです。
ただ、ライバル関係にしないと決めていました。観客動員数やCD販売数を競い合わせることで成功しているグループもありますが、それでは最終的に、メンバーもファンも対立関係になってしまいます。
そうするよりも、ファミリーとしてデビューしたほうが、総力戦で盛り上げられるはず。答え合わせはまだ先ですが、歴史を見ればきっとうまくいくと思っています。
森:トレンドを追うだけでは気付けない視点ですね!最後になりますが、NY buddiesさんが「TikTokを運用するうえで、これだけは忘れないでほしい」ポイントを教えてください。
NY buddies:2つあって、1つは、どんなジャンルであろうと「守」を押さえたうえで、変化を加えるということです。丸パクリするのではなく、自分たちの色を探すからこそ、オンリーワンなアカウントに育てることができます。
もう1つは、ただバズらせるだけでなく、しっかりとファンを育てるということです。視聴者がアカウントをフォローする理由をつくり、応援されるアカウントになれば、短期間でも伸ばせますし、TikTokで高い効果を得ることができるはずです。
手を動かすことも大切ですが、しっかりと考え抜けば、時間や労力が無駄になることはありません。
桝田屋:これから「Sharply ♯」と「Flutter ♭」も、みなさんに応援していただけるアイドルになれるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。
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赤字200万だった妊活事業を立ち上げから2年で売り上げ10億にグロースした例をはじめ、MAGI-Cが手掛ける事業を紹介しています。持続的な事業成長やマーケティング戦略の構築に課題を掲げている事業者の方は公式ページからお問い合わせください。
Misfitsの森泰輝です!誰もがSNSのパワーを享受できる未来に向けて事業を創っています。書いてほしい記事のリクエストがあれば教えてください!