小説『エッグタルト』第八章

 翌月のある日の昼休みに、中間試験を控えていた俺と山田は、試験にどう対策するかについて話し合っていた。
「なあ、試験どうする?」 
 山田がぶっきらぼうに尋ねてきた。
「どうするってまあ、やるっきゃないな」 
「理系科目やばいよな。特に数学がやばい」
 そう言いつつ山田が赤点を取っているところを見たことはなかった。いつも赤点をぎりぎりで回避している。要領がいいやつなんだろうなと思う。
「お前そう言いつついつも赤点回避してるじゃんか。本当にやばいのはこっちだよ」
「お前は、現代文と英語ができるからいいじゃん」
「いやそういう問題じゃなくて、こっちはまじで理系科目が駄目なんだって。生物とかまったくわかんないし。留年とかないよな? うちの学校って」
「さあ、あまり聞いたことはないけど」
 俺は文系科目はできたので、理系科目が駄目でもあまり言及されていなかったが、今年の理系科目、特に生物がまったくわからないので、不安になってきた。
「まあ、勉強したら済む話だよ」
 山田は気楽にそう言った。赤点を全然取らないし、もしかしたら勉強もできるやつなのかもしれない。部活を真剣にやっていなかったら、案外有名な大学に行けたりするんじゃないだろうか。
「そうだね。今回はちょっと、頑張ってみるよ」
「おう、その意気だ。頑張りたまえ。わはは」
「お前……」
 あまり調子に乗るなよ、と言おうと思ったが、今回は本当にこちらのほうが危険な状況で、なんとなく向こうのほうが上な気がしたので、今日帰ったら、それはもう滅茶苦茶に勉強してやろうと、そう思った。

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