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アメリ
4/13 Netfliex
きっかけ ラボ お題
初めてアメリを観たのはかなり昔のことだったように思う。
そのときは近所にいたら困るな〜ってくらいにしか実は思っていなかった。
だけど今回改めて観てアメリの感想は大きく変わった。
頑固で閉鎖的な両親の元で育ったアメリはほとんど他者と接触を持たず、想像力は豊かだが、コミュニケーションが苦手な不器用な娘に成長する。
カフェで働きながら、妄想と一人遊びにふける毎日を過ごす。
そんなある日、部屋の壁の奥から古いおもちゃを発見し、持ち主を探し出すアメリ。
おもちゃを手渡したことによってその人が、そしてそれによって自分が世界と繋がったように感じたアメリは自分なりの方法でいろいろな幸せや接点を少しずつ見つけたり作っていくというお話しだ。
アメリという作品から一番強く感じたのは、最近いろんなところで耳にするようになった"多様性"ではないかと思う。
アメリの作品に出てくる登場人物はどの人も一見するとクセが強くとっつきにくい印象を受ける。
でも映画のモンマルトルの街はそれでも日常がまわっているし、実は我々の暮らす世界も映画の世界とさほど変わらないのではないか?
みんなそれぞれ好きなもの、嫌いなもの、得意なこと、苦手なこと、習慣、こだわり、癒し、幸せ、似ている人はいても同じ人はいない。
だから世界や社会と向き合う、付き合う時の正解や方法はなくてきっとあなたなりの方法がある、繋がり方があるといち早く教えてくれていた作品だったのかも。
僕が個人的に心に残ったシーンは二つある。
『目の見えない方を駅まで案内するシーン』と『ニノと家の玄関で対面しキスするシーン』の二つ。
1つ目のシーンは前述したおもちゃを渡してその人が変化するのを見て、自分と世界が繋がり、目の前のモノコトが自分ごと化した直後のシーン。
なのでシーンも目の見えない方はまるで過去の自分だ、と言わんばかりに心踊る疾走感と音楽で希望に満ちており、今まで素通りしてきた景色が急に色や匂い、意味を持ち出す作品の中でも観ている人にとっても心に残るシーンとなっている。
そしてこのシーンが多くの人の心に響くのは、誰しもが自分と世界が繋がる瞬間というものがかつてあって、かつそのような繋がりを今も欲しているが故にその心の高揚を心が覚えているから、僕らの気持ちに響くように思うのだ。
必見です。
そしてもう1つはアメリの好きな男性ニノがアメリの手がかりを頼りに自宅にやってきて彼とするキスのシーンだ。
ドラマや映画などである、あの手馴れた感じのものではない。
なぜなら二人共にそんなになれていないから。
けどそれが良い。
今まで自分とイマジネーションの世界で生きてきた二人だからこそ、イマジネーションではない人の体温や肌、息づかいや匂い、はたまた気持ちなども感じ取るかのように顔をくっつける仕草が二人ぽい、二人ならではの恋という気がして僕は印象に強く残った。
最後にこれから観るよ、って方に映画のストーリーとは関係ないのだけど僕が感じた感覚を書きたいと思います。
感覚なので仮説です。
まず監督は写真がとても好きでかつ得意な人。
それは映画のシーンの構図がどれも美しく、かつシーンが進んでもその美しさが保たれるというのがアメリの特徴。
写真とは世界をどう見てどこで切り取るかの瞬間の芸術。
1秒の連なりが映像で1秒が写真だとすると写真が好きだと連なりである映像にもその美が残りやすいように思うのだ。
ではその美とは何か?
世界の調和とも言うべき言葉にはしにくい感覚でそこにあるべくしてあるものは美しいというようなもの。
だが映画は自然を不自然に生み出す芸術なので、その調和を取るためには日常の街や人々、自然への深い洞察が必要不可欠であり、アメリの製作者はその感覚を持っていると感じる。
その調和の感覚が最も人に伝わりやすいのが色彩表現ではないかと思っていて、おそらく多くの人がアメリの世界の色彩が美しいと感じるはずである。
長々と書いてきたが、つまりアメリの楽しみ方として台詞や感情ももちろんあるのだが、ワンシーンワンシーンの構図や色彩とその移ろいみたいなものも注意して観るともっと楽しめるのでないかな?
と思いました。
だから部屋がこの色だからこの小物、この色なのかとか、自然の多いシーンだからアメリの服はこの色なのねとか、皆さんの感覚がシーンとして美しい瞬間をどこに感じるのかアメリという作品との対話できっと気付けてしまうはずなので感覚との対話も楽しんで。
ちなみに赤の使い方に注目すると楽しめるのと、アメリの好きな色は実は赤ではなくてワインレッドというのが僕の仮説。
最後まで読んでくださってありがとうございます。