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アバウト・タイム
6/12 Amazon prime
まず大切な前提を書く。
この物語はタイムトラベルものである。
ネタばらしをいきなりするな、と憤ったかもしれないが、タイムトラベルができるという情報はオチでも核心でもない、ただの事実だと観た方はおそらく分かるはず。
タイムトラベルができるとしたら、あなたは人生のどの瞬間に、どのようにその能力を使い、どのようにしたいですか?
というのがこの物語の核にはある。
一族の男性にだけ、タイムトラベルの能力があり、子どもが産まれる前に戻ると子どもがまったく別の子どもに変わる危険性(精子や卵子の偶然性、育成環境の偶然性など)があるので、子どもが産まれる度に戻れる過去が減るという設定が、命とは偶然の積み重ねによるものだ、というメッセージのようで僕はこの設定が好きだった。
アラジンや時をかける少女と同じで主人公は現実を変える力を身に付けると、超身近なところでその力を試し出す。
それは100%自分の欲望と都合であり、自分の為だ。
だが人はそれに飽きる。
叶ったからだとも言えるが、何度も繰り返して自分の思い通り細部まで完璧にすることを人は愛せない。
そして叶わなかったことや、うまくいかなかったところに愛着を持てること、許せることが教養であり、豊かさなのかとも思う。
主人公は父親にタイムトラベルの能力で人生を豊かにする秘訣を教えてもらう。
「今日をもう一度繰り返す」。
というとてもシンプルなものだ。
二度目は心も落ち着いていて、世界のあらゆる事柄を冷静に見ることができる。
だから見過ごしていた小さな動きも気付くことができて、人生がより豊かになる、ということらしい。
何となく腑に落ちない。
ラーメンとパスタで悩んでいたら、両方食べたら?
と言われる感覚に近い。
しかし主人公は父の方法も素直に試し、考えて、自分なりのタイムトラベルとの向き合い方を模索する。
そして物語の最後に彼は彼なりのタイムトラベルとの向き合い方を見つけるところで物語は終了する。
つまりまとめると、この物語がタイムトラベルという設定によって見せたかったものは、まず今「ある」ものに気付き、感謝すること。
そして我々が「ない」と思っている多くのものが本当は「ある」ということ。
そしてその「ある」に気付き、感じ、感謝して味わうことで、この世界のあなたの「ある」の総量が増えて、世界や出来事が自分ごとになればなるほど、今「ある」今を楽しむことができる。
それって幸せなことじゃない?
と問われている気がしたのだ。
もちろんその答えは観た人それぞれに委ねられているし、違うことももちろんいいが、僕はとても共感できる内容だった。
生きていくうえで、本当に大切なことが、たっぷりのユーモアと共に描かれている素晴らしい映画だった。
シチュエーションも選ばないので、大切な人とぜひ、という映画。
おすすめです。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
リアクションもとても励みになっています、ありがとう。
それでは、また。