大組織では各階層に仕事をしているフリをするインセンティブが生まれる:Bullshit Jobの起源
生産性の向上と労働を美徳とみなす価値観が組み合わさるとBullshit Job生まれてしまうかもしれないことを先日議論しました。
ここで、もう一つBullshit Jobが生まれる原因について考え付いたのでメモです。
組織が大きくなると各階層に仕事をしてるフリをするインセンティブが生まれる:エージェンシー問題
生産性を向上させるには組織を大きくすることが合理的な場合があります。例えば、ハンバーガー屋さんを考えてみると、毎日100個ハンバーガーを作って売るより、毎日1万個ハンバーガーを作って売る方が効率的です。
材料(パンとか肉とか)の調達費の単価は下がるだろうし、調達時の交渉力も上がって値下げ交渉ができるだろうし。
組織を大きくすると分業が必要になってきます。最初は一人で全部やってた仕事が、この人は調達担当、この人は製造担当、この人は会計担当、みたいに役割を分けていく必要が出てくる。
そして、もっと組織が大きくなると、調達担当が複数人でてきて、その人たちをまとめる管理職みたいな人が出てくる。
複数の部署があって、部長とか課長とかが出てくる。普通の会社のできあがりです。
そして、評価制度が導入されます。誰がよく働いているか、だれがサボっているかを管理して、賃金に差をつけたりします。
最初のうちは「みんなでおいしいハンバーガーを売る店を作ろう!」という想いで始めたので評価制度なんて必要なかったのですが、組織が大きくなるとどうしても必要となってきます。(この心理メカニズムについては別途きちんと考えたいと思います。)
そうするとどうなるか?
「上司に評価してもらうための仕事」が生まれるんです。
いくら頑張っても、上司に評価してもらえないと給料が上がりません。
これを逆に言うと、頑張らなくても上司に評価してもらえさえすればいいんです。そうすれば給料が上がる。
従業員だけの問題ではない
それはほんとにダメな考え方だな、モチベーションが低いよ。雇われサラリーマンの考え方だ。とご指摘されるかもしれません。
でもこれは企業の上層部でも起きることです。
例えば社長(代表取締役社長)は株主から経営を委任されているだけなので、株主から評価されなければ株主総会で解任されてしまいます。
(株式の大半を持っている創業社長にはこういうことは起きませんが。。。)
なので、株主から評価されるための仕事が生まれます。
逆に言うと、頑張らなくても株主から評価されさえすればいいんです。
(これらの問題をエージェンシー問題と言ったりすると思います。)
(もちろん、頑張りをきちんと評価してもらえるように丁寧に説明することは大事ですが。)
狩猟採集民族時代にはBullshit Jobはなかったかもしれない
狩猟採集民族時代には、巨大組織というのはなかったでしょう。なので生産性も低かった。けど、仕事をするフリをするインセンティブはあまりなかったはずです。(部族グループのリーダーに気に入られるようにふるまう、みたいなことをするインセンティブはあったでしょうが。)
でも現代は、生産性向上を追求したがゆえに巨大組織がたくさん生まれました。その巨大組織には何層も階層があります。社長、取締役、専務、常務、執行役員、本部長、部長、課長、係長、主任、チームリーダー、etc etc etc....!!!!
その各層の人たちに「上の人に評価してもらえるように良い仕事をしてるフリをしよう。。。」というインセンティブが生まれるんです。もちろん、自分が良いと思う仕事をしてそれが上司から評価されればこんなにうれしいことはありません。
でも、必ずしもそうとは限らない。「いい仕事」の定義は一つじゃないからです。自分が「良い」と思っている仕事の仕方を必ずしも上司が「良い」と思うかは分からない。
それは仕方のない事、というか自然な事です。多様性を認めるとはそういうことでもあると思います。
こうして、「あんまり意味ないと思うけど上司に評価される為に仕方なくやっとくかあああ」というBullshit Jobが出来上がります。
生産性とやりがいはトレードオフか??
効率性を追求することで巨大組織が生まれ、巨大組織では仕事が細分化されすぎたりエージェンシー問題がおきまくったりして人々がやりがいをもって働けない、とすると、今後は多少効率性を犠牲にしてもやりがいを優先するような組織の在り方や働き方が主流になってくるのかもしれません。
(生産性とやりがいはトレードオフなのかどうかは別途考える必要がありそうですが。)
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