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FIREとBullshit Jobは密接に関係している:ケインズの週15時間労働論

FIRE(Financial Independence, Retire Early)という早期退職ムーブメントが話題になっていることは以前記事に書きました。

最近、FIREは日経新聞でも頻繁に取り上げられるテーマで、今日も記事が出てました

(元)猛烈サラリーマンの方々や、(元)24時間戦える企業戦士の方々は、「若者が早期退職なんて何甘えたことを言っとるんじゃ!」と憤慨するかもしれませんが、「贅沢しなければ(そんなに)働かなくても食うには困らない時代が来るよね」というのは、ずーーーーっと昔から言われていたことでもあります。

ケインズの週15時間労働論、etc

あの有名な経済学者のケインズは、1930年に「Economic Possibilities for our
Grandchildren」というエッセイ
を書いていますが、その中で、「100年後には週15時間労働でよくなるでしょ」というようなことを言っています。

アメリカ建国の父と呼ばれるベンジャミンフランクリンも1784年に「1日4時間労働で基本的な生活に必要な物資は生産できるようになり、そのほかの時間は余暇と楽しみ(leisure and pleasure)に使われるだろう」みたいなことを言っています

マルクスも同様に「国民全員が午前中は猟を楽しみ、午後は釣りを楽しみ、夜はディスカッションを楽しめるようになるよね。プロの猟師や漁師、批評家としてではなく」みたいなことを言っています。

(このセクションは以下の本の6章を参考にしました。)

FIREする人たちはケインズの理論に従って合理的な意思決定をしているだけ

FIREを目指す人たちや、FIREした人たちは、これらの理論に従って行動しているだけだと思います。もう生産性は十分高まってて、贅沢しなければそんなに働く必要もない時代になったから、自由な時間を手に入れて余暇を楽しみたいよね、と。

ケインズが1930年のエッセーで予想した100年後の世界が2030年に迫っていますが、近ごろFIREが話題になっているところを見ると、ケインズはFIREがトレンドになる時期まで正しく予想してたのかもしれません。おそるべし!

Bullshit Jobをしている人は、余暇に充てられる時間にBullshit Jobをしている

そう、結局、もうそんなに働かなくてもいい時代になってるんだと思います。生産性が高まりまくって、むしろ人間の基本的欲求(衣食住とか)を満たす物資に関しては作りすぎて捨てられています。衣(アパレル産業とか)は値崩れを防ぐために大量に捨てられています。食も同じです。住に関しても空き家問題が深刻です。

では、これがどうBullshit Jobと関連しているのでしょうか?

昨日書いたように、生産性の向上を追求しまくった結果、「人がいなくても生産できる仕組み」を持つ会社が最も利益率が高くなり、資本はそこに集まります。そうすると、そこで働く人の給料が高くなりますが、そこで働く人は「人がいなくても生産できる仕組み」を見守っているだけ、もしくは、その仕組みになんかトラブルがあった際に便宜的に責任をとるためだけに雇われているので、大した量の仕事はありません。もしくは、大量の仕事があっても、それは全部「今日は問題なしでした!」という(ぶっちゃけどうでもよさそうな)報告書の作成とかです。

本当は彼らも一日3時間労働でいいんです。人がいなくても回る仕組みを管理してるだけなんで。でも、正社員として雇われて高給をもらってる限り、一日最低でも8時間労働しているフリをしなければいけない。

会社側もそれが都合がいい。なぜかというと、一日3時間で年収1000万なんていうと、株主から「だったら彼らの年収下げて俺らに還元しろよー!」みたいな圧力がかかるし、社会一般からも「あの会社は一日3時間労働なのに年収1000万らしい。なにか悪い事や言えないことをしてるに違いない」と余計なことを勘繰られる。週刊誌とかが書き立てる。家族も「うちのお父さん毎日3時間出社して帰ってきちゃうけど大丈夫かしら?」となっちゃう。

さらにそこに、働くことは素晴らしいことだ!という価値観が追い打ちをかける。

だから、一日3時間でいい仕事も、一応8時間(かそれ以上)勤務にしておきます。

こうしてBullshit Jobがたくさん生まれます。本当は自由時間にできるはずなのに、仕事をしているフリをする5時間がBullshit Jobタイムです。

生産性の劇的向上がFIREとBullshit Jobを同時にもたらした

まとめます。

人類が長い歴史をかけて追及してきた生産性の向上により、ついに人類はほぼ働かなくても基本的欲求(衣食住など)を満たせる時代を創り出しました。今日の世界では、餓死する人より、肥満で死ぬ人の方が圧倒的に多い。これは、歴史上経験したことのない事です。(ホモ・デウス参照

それによって、当然のことながら、「あまり働かずに余暇を楽しみたいよね」という人々が出てきました。FIREムーブメントです。

一方で、生産性の向上を極めた結果、人がいらなくなったのに、便宜的に人を置いている仕事も増えてきました。Bullshit Jobです。

まあ、それだけの話なのですが、Bullshit Jobが蔓延しているのはあまり好ましい状況とは言えなそうです。何らかの解決策を考える必要がありそうです。

つづく

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