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龍ヶ崎リン、1stアルバム『Stairs』が良すぎたので【ゆるくディスクレビュー】

ななしいくん所属のVTuber・龍ヶ崎リンが、10月2日に1stフルアルバム『Stairs』をリリースした。

本作は、活動開始から4年を迎えた彼女の今日までの集大成であると同時に、明日からのこれからの未来に向けた覚悟が込められたものになっているという。

ここでは、そんな彼女が放つ今作について勝手にゆるくレビューを行う。

(ここでのレビューは配信リリース版を視聴してのものです。CD版は間に合わず...)

※以下敬称略。
※見出し画像はななしいんく公式X(旧Twitter)より


龍ヶ崎リンとは

プロフィールを簡潔にまとめると、龍ヶ崎リンは2020年3月より活動を開始したVTuberアーティスト。音楽的なルーツはHIPHOP・R&Bであり、これまでに様々な楽曲のカバー動画(歌ってみた)や、ラップと歌を織り交ぜたオリジナル楽曲を投稿している。

オリジナル楽曲では夜の静寂が似合うチルなナンバーを得意とし、巧みなライム(押韻)センスを駆使してグルーヴ感を生み出す。ラップシンガーとして高いスキルを持っており、それを裏付ける音楽への造詣の深さも日々の配信活動などから窺い知ることができる。


1stフルアルバム『Stairs』

過去〜未来を歌う構成美

今回リリースした1stフルアルバム『Stairs』には、既発曲7曲+新曲4曲の全11曲が収録されている(リリース発表時点)。

リード曲「Twilight Stream」から7曲目「do it」までは既発曲。リリース通り、今日までの集大成を追う構成だ。

しかし、比較的新参リスナーである筆者にとってはどれも真新しく、本作のリリースまでに聴きごたえのある作品をこんなに打ち出していたとは!と、改めてその実力を理解するに至った。

楽曲を紐解いていくと、その一つ一つは現実〜未来を歌っているものが多い印象を受ける。中でも「Twilight Stream」は過去・未来・現在全てにスポットを当て、これまでの経験全てが私を私たらしめる所以であると優しく肯定する作品だ。

また、自身が作詞を担当した「Roots」や「do it」が既発曲パートの後半に置かれることにより、未来―すなわち新曲を迎えるにあたって改めて龍ヶ崎リンとはどのような存在であるかを確立させるような構成となっている。

さらに驚くべき点は、ここまでの曲順がリリースした順番通りになっているということだ。天才か?

しかし、厳しくも未来に希望を抱けない時もある。
ここからは、理想と現実の距離から来る諦観を憂う「飾り窓」や、後ろめたさを残しながら過ぎ去る日々を受容する「壁に立つ日」、自信を取り巻くネガとポジの浮き沈みを綴った「tremolo」といった新曲が続く。
メロディにスポットを当てれば、どの楽曲も眠れない夜にスっと耳に入れたくなるようなものだ。

なお、新曲には4na水槽YACA IN DA HOUSEといったアーティストが制作に携わっている。

「OK,allright」で迎えた夜明け

そして、今作の最後に収録されている「OK,allright」について。
作詞・作曲・編曲は、シンガーソングライター/トラックメイカーの春野が担当している。

本楽曲は、過去と未来を赤裸々に唄ったものである。

これまでの楽曲とは異なった雰囲気を纏っており、暗闇の中を手探りに進んでいくような歌い出しから始まる。
歌詞の節々で押韻をみせてはいるが、ここではラップと呼ぶべき歌唱法はとっておらず、言葉一つ一つを丁寧に紡いでいく印象だ。

歌詞に目を向けると

こんな僕で悪かった
どうかあの日を忘れてほしい

「OK,allright」より

と過去の後悔を正直に見つめ、後半では視点が現在へと移っていく。

そして最後のサビでは

こんな僕でも良かった?
どうかあの日を忘れないで

こんな僕でしかないの
どうか明日は晴れますように

「OK,allright」より

清濁併せ呑んだ過去を受け入れて歩みを進める。夜明けのような情景が浮かぶ楽曲だ。

案外人生も捨てたもんじゃないって思ってる

「OK,allright」より

慈愛に満ちた本楽曲の印象的なフレーズだが、このアルバム全曲を通して聴いた後、改めてこう思える一作に仕上がっていると感じた。
階段を上った先には何が待っているのか、その景色をともに眺めたい。


おまけ:リリース後のラジオ配信を聴いて

アルバムの配信リリースから翌々日のラジオ配信では、本人が作品に込めた熱意を語っていた。リスナーからの感想メールに応えたり、後発となった配信リリースでマスタリングを変更した理由など、客観的視点で綿密に練られたものだということを実感させられた。

話は変わるが、このようにリリース直後に何らかの形でアーティストから発信する機会が用意されるのはすごく良いと思う。楽曲に込められた真意や本人の熱を感じることによって深みが増すし、自分なりの解釈と照らし合せることで何度でも聴ける作品へと昇華できるからだ。

別のもので例えるならシェフの解説。料理へのこだわりが感じられて食事が楽しくなるあの感覚に近い。シェフが解説してくれるようなお店に行ったことないんだけどね。

該当の配信はこちら


さいごに

ただ前に進んでいくための作品集ならば「Step」や「Skip」とした方が小気味よく聞こえる。
(上2つの単語だと前向きすぎる気がするんだよね)
しかし、楽曲を通して痛感させられたように喜楽だけの過去ではなく、紆余曲折を経てここまで辿り着いたのだ。その過去があるからこそ上ることのできる階段「Stairs」。今作は、シンガー/アーティストとして本格的に歩みを進める彼女の覚悟のあらわれである。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
オヤスミ またな

(細心の注意を払いましたが、誤記等ありましたらご連絡ください。)

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