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イビサ島出張記(番外編)
仕事のプログラムを全て終え、直ぐに帰国するつもりだったが、ちょうど良いヒースロー経由の便が見当たらなかった。それで一日イビサ島で足止めを食うことになった。
もちろん”足止め”という悲壮感を与える言葉はこの場合適切ではない。素直に言うと最後一日をゆったりと過ごすことにしたのだ。出発は土曜日の早朝だったのだから、良しとしよう。
さてイビサ島というと、クラブの他に有名なのは”チルアウト”であろう。以前たしかブルータスという雑誌で見たことがあったのだ。チルアウトとは、つまるところゆったりと夕日が沈むのを観て過ごすことだ。
とにかく、チルアウトをするのに相応しい場所の近くに宿泊することにした。それで島の北西部、Sant Antoni(サン・アントニー)のあたりにある、「kumharas」という海沿いのバーレストランを目標に、その直ぐそばのGrand Paradisoというホテルをスマホで予約した。
早朝にホテルに到着し、受付のスタッフに聞くとお昼ごろに部屋に入れそうだという。簡単に朝食を取れるお店を聞いて行ってみると、地元の人々が集うローカル感漂うカフェだった。
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その後は海沿いをひたすら歩いて過ごすことにした。ホテルで「途中で海に入ったらいいじゃん」と言われてタオルを持たされ、45分先だというSant Antoniの街を目指してブラブラと歩いた。
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休憩がてら何度か海に入りながら、結局片道で2時間ほどは歩いただろうか。チルアウトで最も有名なカフェバーCafe Del Mar(カフェ・デル・マー)に着いたところで折り返すことにした。
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ホテルに戻ってしばらくスタッフと雑談すると、日本が大好きで「日本に行くのが目標の一つ」だと言う。「日本はとにかく綺麗で何でもきちんとしている(organized)」のが好きな理由だという。同じようなことを実際に日本を良く知る外国人からもしばしば聞くので、本当にそうなのだろう。
「逆に日本人はイビサ島の暮らしに憧れるかもよ」と言うと、島は10年前は良かったけど、今はパーティーとドラッグによる救急患者で病院は一杯だし、バスは平気で20分遅れるし、海は綺麗じゃないと言う。住む、人生を過ごすとなると、どちらが良いのだろう?物事には常に一長一短がある。
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部屋で日本のニュースを見ると、有名経営者の「移民を受け入れないと日本は滅びる」との主張について論争が起こっていた。個人的な印象として、外国人からの日本へのリスペクトは過去最高の状態なのではないかと感じている。綺麗できちんとしていることにリスペクトを持っている移民であれば、反対論者が懸念するような問題(犯罪や社会の乱れなど)は起こさないだろうなと思った。
夕方目的のkumharasに行くと、すでに夕日の見える席は一杯だった。しかし夕日を観るなら海辺に座るのが一番いい。
この辺りは湾になっているせいか、波がとても穏やかだ。背後のkumharasから相応しい音楽が流れる中、夕日はゆっくりと沈んでいく。
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完全に沈んだところで、皆から拍手が起こった。