株式のみへの長期積立投資が避けて通れないはずの苦痛
日本ではここ最近、国を挙げて資産運用はとにかくS&P500への長期積立投資をすべきと言ってきたように感じる。株式市場における銘柄の分散と投資タイミングの分散は王道であり、長期間では株式市場は上昇する(理論的な裏付けもあるが、あくまで経験則とも言える)ことに照らせば、理にかなっていると言えよう。
しかし本来、分散投資は日本以外の世界では、種類の異なる投資対象も混ぜて行うのが王道なのだ。もっともシンプルな考え方は、株と債券で60:40で保有するというものだ。それぞれの値動きが異なり相殺することが多い為、全体でみたときの損益の動きが穏やかになることが期待できる。
かなしいかな金利がほぼ付かない日本では、債券投資による収益はほぼ無い為、60:40という世界の主流は適用できない。
それと日本株が米国株に比べて劣後してきたことにより、日本での資産運用の議論は、S&P500への長期積立投資一辺倒になってしまった。これが筆者の見立てである。
ただ、いくら分散しても株式にだけ投資をすれば、かなりのリスクを取ることになるのは理解すべきだ。株式市場には上昇局面と下落局面の双方があるのは間違いがなく、下落局面とはどのようなものかの理解と心の準備は必要だろう。
その点を指摘した記事があったので転記させて頂く。過去の代表的なS&P500の下落局面では、およそ1年半から2年半にわたり、半値ほどまで下げたことが分かる。
長期投資が大事と説明され理解していても、1年半から2年半、毎月損をし続ける投資を続けることは人間心理としては苦しい。数十年にわたる長期投資を前提にすると何があっても積立投資を続けるべきというのが王道の考え方なのだが、対象が株式のみであれば、そのような苦痛に耐え続けなければならない可能性のことには、あまり目を向けられてないように思えるのだ。