【#毎週ショートショートnote】親切な暗殺
「あのさ、話したいことがあるんだ」
高校からの帰り道、智也が話しかける。
「…なに?」
私は明るく返したつもりだったが、正直なところ自信はなかった。なぜならそれは私が聞きたくないことだったからだ。
「小夜子のこと?」
智也は幼稚園からの幼馴染だ。そして、よくある話で、私は智也にずっと片想いをしていた。しかし、高校に入学してから、小夜子のことを話す智也の表情は恋をしている者のそれだと気づくのにそれほど時間はかからなかった。
小夜子は美人で性格もよく、学校でも人気者だ。同じクラスの私とはなぜか仲が良かった。そこから智也ともよく話すようになっていった。
「うん、彼女と付き合うことになった。これもお前のおかげだな」
智也の声だけで嬉しさが伝わってくる。
『あなたは優しく、静かに私の恋心を殺してくれる、親切な暗殺ね…』
私は涙が溢れるのを智也に気づかれないよう、沈む夕日を真っ直ぐ見て言った。
「仲良くやりなよ、応援してるからね」
(410字)
久しぶりに参戦しました!
もう少し書き足したかったのですが、かなり字数オーバー…大分ブランクあり過ぎを実感しました。