【#毎週ショートショートnote】タイムスリップコップ
「ねぇお父さん、電話作ったの」
3才の娘が見せてくれたのは紙コップで作った糸電話だった。カラフルな紙コップはやたらと長い白い糸で繋がっている。
「お父さん、電話してみて」
娘はそう言うと、台所へ走って行く。糸が伸び切ったところで紙コップを耳にあてる。
「もしもし、お父さんですか?」
狭いアパートで電話を通さなくても大きな娘の声は聞こえるため、必死で笑いを堪える。
「あのね、お母さんがお話したいって」
台所にいる妻に代わる。
「もしもし、今日、何の日か分かる?」
ギクリとする。何かの記念日ではない。沈黙の後、妻が笑う。
「5年前にあなたが電話で私に告白してくれた日よ。懐かしくて紙コップで電話作っちゃった。名付けて、タイムスリップコップ、なんちゃって」
そうだった、こんなユーモアを持っている妻に勇気を出して電話で告白した日をすぐに思い出した。せっかくタイムスリップしたのなら、もう一度妻に告白しようかな。(400字)
ちょっと間が空いてしまいましたが、久しぶりの『#毎週ショートショートnote』です。今回はほんわかものです。