2022年11月の記事一覧
【#毎週ショートショートnote】男子宝石
「今日は誰にしようかな」
私は大事にしている宝石図鑑を開く。
二重人格っぽいA君はアレキサンドライト。
C君は楽しいことが大好きなカーネリアン。
人を寄せ付けない雰囲気を出しているG君はギベオン。
リーダー的存在のI君はインペリアルトパーズ。
みんなキラキラしている。ページを捲り続ける。
自分ファーストが上手なK君はクンツァイト。
L君は優しく包み込んでくれるラリマー。
【#毎週ショートショートnote】バイリンガルギョウザ
「ようやく見つけたぞ」
H氏は長い年月をかけて、この骨董屋を探していたのだ。
ドアを開くとなぜかニンニクの匂いがした。
「いらっしゃいませ。何をお探しで」
出てきたのは清楚で気品のある婦人だった。
「バイリンガルになれる食べ物を探しています」
それを聞くと、「ああ、これを求めて世界中からお客様が来ますよ」と婦人は奥に入り、皿に乗った餃子を持ってきた。
「バイリンガルギョウザです。これを食べ
【#毎週ショートショートnote】全力で推したいダジャレ
「どうしてもこの企画を出したいのです」
そう言って若い学芸員が立ち上がった。
それは、来年開催する展示会の企画を出し合っている最中だった。なかなか良いアイデアが出ない中、彼は言った。
「こんな世の中だからこそ、見た人が明るくなる展示会が必要なのではないでしょうか」
彼の手には一枚の古い絵があった。
「それは…」
ベテラン学芸員が息を飲む。周りのスタッフたちに緊張が走る。少しして、ベテラン
【#毎週ショートショートnote】立方体の思い出
「これ、やる」
保育園でよく他の子にオモチャを取られて泣いていた私に彼がくれたのは、小さな四角い積み木だった。いつも近くにいて、私が泣くとすぐに来てくれた。赤く塗られたそれは、私の宝物になった。
「ほら、これ食べろよ」
学校でお腹を空かす私に彼がくれたのは、小さな四角いキャラメルだった。私がお腹空いたと言うとすぐに出してくれた。茶色いそれは、私の宝物になった。
「またなくしたのかよ、しょう
【#毎週ショートショートnote】音声燻製
「親父、レコードプレーヤー持っていたよな」
アルバムを見ながら僕は尋ねた。三歳くらいの僕が大きなヘッドホンを付けて立っている写真。後ろには父が若い時に奮発して買ったレコードプレーヤーがある。
大学に合格した僕は、この春、父と暮らした実家を離れる。そして引越のため、荷造りをしていた。
「物置にあるぞ。まだ使えるはずだ。持っていくか」
そう言って父はプレーヤーと何枚かレコードを持ってきた。
「