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『あなたと行ったヴィーナスブリッジ』続【~ クリープ ~】

作 戸松大河

『やばいやばいやばいやばい。。』

想定外だ…ん…
慧斗はなにも知らない…
状況をわかっていない…

ここで慧斗は後ろにいる姉の存在に気づく前に、
いや、雅が慧斗の存在に気づく前に…。
いやーーどーしよう…、、

ふと彩愛が動く…
『なぁ、陵。雅ちゃん向いて話しかけて。』
『え、』
『多分また、気づいてへんから、ええから、あとほんまに任せて。』

『(息を飲む)』

 僕は不器用に振り返り、雅の方を向いた、下をうつむいてげっそりしている雅。。けど、僕には謎や焦りがマーブルの様にうずめく。彩愛は一体なんなんだ、なぜそこまで悟れる?解れる?俺のために動いてくれる。それか、もしくは、全部知っているのか?わかりきっているのか。彩愛の機転が利く。これに僕は感動と好感を越えて、不信感にさえなっていた。僕が今まで持っていた優越感は時間が経つにつれまた濁ってゆく、徐々に徐々に。
徐行しながら、雅がこちらを向く。

雅『いいん?』
陵『…』
雅『…もぉほんま。』
陵『…え?』

雅は慧斗がいることに気がついていない。

陵『…』
雅『そんな意地悪して楽しいん?』
陵『は?』
雅『なにがしたいん?』

雅は懲りて『ごめんなさい。』そんな言葉も言えないのかと言う気持ちもあった。けど、僕には彼女に『ごめんなさい。』と言わせる向上心のような希望のような、信念と言うような、いや所謂、エゴがある。俯瞰的に捉える5秒。自身が嫌いになり、何をやってるんだとさえ思う。僕は明るい未来や、両親との楽しい時間、地元の友達との時間、これから普通の大学生が過ごすような卒業旅行やゼミ合宿、追いコン、合コンさえも過ごせない。けれど、他人にはそんな過ごし方をして、充実していると言い張るのだろう。空や気候は明るいのに。さっきと何ら変わりないのに、1人の人間の登場によって、僕の世界は変わる。。。そういう意味では、雅の『なにがしたいん?』は模範解答のような、正しい問いかけの台詞に聞こえる。僕にはもう…ごまかして背伸びして突き進むしかないのだろうか。ここで、ここで、一言、『もういいや』と言って、彩愛か雪乃さんどちらかを選択する。ないしは、両方とも離して、すべてをリセットする。それが一番いいはずなのに…。

 とりあえず、

そのまま雅を連れて自分の部屋にいく。

…携帯電話を見る。
彩愛からのメール
『陵くん。大変な時こそ、楽しむとおもろなるで!こっちは任せて!』

雅『なぁ。mixiのこと信じてるん?』
陵『なにそれ?』
雅『…』
陵『…お前さ。…』
雅『お前さ…』

ふと雅は僕に襲いかかり
激しくキスをしてきた…

雅『…全部自分の物にせな

、気がすまへんねん。』


ふと見ると彼女の手には台所にあるはずの包丁。

(続く)

ご一読頂きありがとうございました。

あ、あ…

『あたなと行ったヴィーナスブリッジ』

戸松大河

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