僕が宝物にする演技論=『テキストとサブ・テキスト』
こんばんは。
戸松大河です。
今日は僕が脚本を書かせて頂く際に、特に大切にしていることをご紹介します。人生初めての演劇の授業を受けたときに僕はこれに感動して、これを大切に生きてます!
『テキストとサブ・テキスト』
テキスト=台本に書かれたモノ。
台詞のことです。
サブ・テキスト=台本に書かれてないモノ。
台詞の背後のことです。
背後とは、例えば、その人物の生い立ち、過去、背景、性格、他の登場人物との人間関係などです。
イメージで言うなれば、
テキストを『木』の見えている部分とするならば、サブ・テキストに当たるのはその『木』の地面に隠れた根っ子の部分のイメージです。
テキストを『氷山』の見えている部分とするなら、サブ・テキストに当たるのは海面の下に隠れた部分と言った具合です。
極端な解釈にすると、
テキスト=役が『言っていること』。
サブ・テキスト=役が『思っていること』。
口ではこう言ってるが、
心の中ではこう思ってる--------と言う時の心の部分。
テキストはすでにあるもの!
それが台本作者が書いた言葉だ!
サブ・テキストは、まだない!
サブ・テキストは俳優さんが作るもの!
創造するものと言ってもいいと思います。
勿論、場面によっては、
言ってることと思っていることが
一致しているテキストも当然あります。
これは僕の価値観ですが、
本当に面白いテキストには、
必ずそのズレが描かれている
と思います。
つくづく痛感する事でもあり、
よくよく言われることなのですが、
サブ・テキストの作り甲斐がある脚本こそ、
いい脚本と感じます。
例えば
男同士のビジネス交渉の会話劇
不条理な駆け引きをする場面
男女の恋愛会話劇
などは
まさにそうでしょう!
演出をさせて頂いて常に感じることは、
サブ・テキストの作り込みに傾注し、
感性豊かな俳優さんほど、
良い俳優さんと感じます。
そして、
面白く可笑しく楽しいのです。
俳優さんとお仕事をして
毎度1つ
感動することがあります。
良いサブ・テキストを持つ俳優さんは、
台詞を変えたり、
余分なアドリブを入れない方が多いと感じます。
特にカズさん!
まぢで台本通りです。
とにかく沢山の可能性(アイディア)を考え
分かりやすく
愛くるしく
共感しやすい
サブ・テキストを用いてくださります。
台本の読み方が優しい。
丁寧で親切なのです。
そんな俳優さんに魅力を感じ、
観る側に衝動と興味深ささえ与えてくれます。
おそらく、常にテキストを根拠として逆算し、サブ・テキストを作っているのか。とか、本当に感性で瞬時に台本の前後を読む天才的な才能があるのか。とか勝手に僕自身が夢中なる興味や想像さえをもかきたてます。
また、
上記の話には数学の様な答えは一切なく、
正解もないと強く思います。
恩師曰く
『アドリブを足して成立することもあるが、
それで成立して全員が満足したことは特にない。
特にできない俳優さんほど足す。』
僕も上記には同意です。
僕自身も反省ですね。
確かに…。うん。。深い。
感性豊かな人とのお仕事は
ほんとに難しくて、楽しくて、面白い!
こうやって偉そうに
言ってる僕はできないときが多いです。汗
例えばですが、こちらの台本をご覧ください。
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夫婦の住む高価なマンションの居間。
妻と女が茶を飲みながら談笑している。
女『気に入りましたわ。』
妻『ほんとですか!なによりです!』
女『是非。週末にでもお返事しますわ。』
妻『メイドさんは週に一度。ご希望であればベビーシッターさんも来てくれますよ。』
夫が帰宅してくる。
妻『あら、お帰りなさい。こちら竹芝さん。』
女『はじめまして。竹芝でございます。』
妻『主人です。』
女『よろしくお願いいたします。』
夫『あー。はじめまして。』
女『どこかでお逢いしたことありましたか?』
夫『え、ん。そうでしたか?』
女『たしか先日の田島先生の講演会で。今出版社にお勤めとか。』
夫『あ、あー。あの時隣にいた!確かにそうでしたね!すいません。記憶力がいいですね。』
女『顔は忘れないんです。』
妻『びっくりですね。世間は狭いね。』
夫『あぁ。全くだ。』
女『ホント。フフ。』
妻『こちらが、私の携帯番号です。私たちの新居の住所も書いておきました。書類のご返送はそちらにお願いします。』
女『ありがとう。気持ちが固まったらお電話するわ。でも、いいのかしらこんなに良い家をこんな低価格で。』
妻『ええ。なんか主人も手放して田舎に暮らしたいって急に。この人昔からすぐ思ったらすぐ行動するタイプなの。ふふ。』
夫『ああ。はは。』
女『素敵なことですわ。本当にありがとうございます。そろそろ、私次の約束があるので失礼しますわ。』
妻『え、今ケーキを。』
女『そんなお構い無く。ありがとう。またの機会にごめんなさい。』
女、玄関へ。
妻『ではまた。』
女『ありがとうございました。また。』
夫『お気をつけて。』
女出ていく。
妻『買ってくれそうよ!』
夫『あぁ。そうなのか。』
妻『どうかしたの?』
夫『いや、ちょっと今日疲れちゃってさ。』
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皆様はどんな背景やどんな絵を浮かべましたか?
そしてどれも正解でどれも間違いでないです。
実はこの台本が世に出た時は、こんな設定です。
↓
条件・設定
⚫女と夫は不倫関係であった。
⚫夫は女に『遊びだ、魔が差しただけだ。すまない。』と別れを告げた。
⚫女は逆上し電話をかけ続ける。夫は無視する。
⚫夫は逃げようと引っ越しを決意した。
⚫女は名前を偽り、物件購入希望者として夫婦の家にやって来た。
⚫女の目的は新居の住所を知ること。
⚫女の目的は夫への復讐。
⚫妻の目的は少しでも言い値で家を売ること。
⚫夫の目的は、女から逃げること。
上記を設定を決めるだけで、サブ・テキストはガラりと変わり。役者の表情や動きテキストへの表現もちろん間も空気感もガラりと変わります。
何度も言っちゃいますが、
演劇の面白味はここにある!
と
いつも感銘を受けます☺️
特にですが子供の作るサブ・テキストは格別に面白味があります。
ほんとに勉強になるのです。
最近はよく子供の演劇ワークショップをやるのですが、全てが予期せぬ、裏切る、想定外の答えを出して頂けて毎回僕が学ばされるのです。
勿論上記の様な設定は与えませんよww
演劇や映画も、もしこの概論が世間一般化になったとしたら、事前に、御客様に台本をお渡して、観劇頂く企画も面白いかもしれません✨
ご一読ありがとうございました。
次回は僕の人生初のブログ式小説をお届けします!
作・戸松大河