教員4年目で初3担のはなし(後編)
前回の記事では、教員4年目で初めて進学校の3担を経験した私の戸惑いと、11月までの出願検討や進路指導、出願に関わる準備のことについて書きました。この記事では、共通テストまでの指導や、上位者指導での難関大対策指導、共通テスト後の出願、2次試験に向けての指導について、卒業までの流れについて書いてみたいと思います。
共通テスト
1月の第二土曜日と日曜日に実施される共通テストは、毎年全国の受験生が一斉に受ける非常に重要な試験です。特に私が担当した2022年度はその前の年に初めてセンター試験から共通テストに形態が変わった後の次の年だったので、過去問も本試験と追試験の2つしかなく、傾向も読みづらく、難化が予想されていた試験でした。
センター試験以上に共通テストでは情報処理能力が求められます。英語では特に、形式が大きく変わり、時間内にいかに効率よく読み進めるかが重要です。ですので、大量の文章を読んだり聞いたりする経験が少ない生徒達が共通テストの問題に順応するまでには時間がかかりました。
実際に指導してみて感じたのは、やはり文章の精読力、文構造(語順)の知識と感覚が速読、リスニングの両方において非常に大切だと思います。センター試験の頃は、文法問題に対応するため、必然的に文法の基礎固めをします。それをやっていくうちに、段々と精読力が上がり、大問3がとけるようになり、長文に対応できるといった成長段階をある種、サポートしてくれるような試験でした。対照的に、共通テストでは、全てが読解問題ですので、生徒も、指導者も、精読より多読だと舵を振り切ってしまいがちになります。しかし、それでは必ず5,6割くらいの所で伸び悩みが起こります。精読と多読、どちらか片方という指導ではなく、どちらもバランスよく訓練していく必要があるなと感じましたし、特に、1年生の内から、文構造を意識した読み方(勉強の仕方)を指導してあげることが、3年生になった時の伸びしろを生む気がします。
共通テスト対策について熱く語ってしまいましたが、共通テスト本番に話を戻すと、2022年の共通テストは本当に波乱でした。
1.東京大学会場での切りつけ事件
2.トンガ地震による津波→岩手県沿岸では避難警報発令
3.数学ⅠAの傾向大変更、生徒パニック、平均点がた落ち
4.JRが計画運休、代行バスもなし
特に、津波警報発令は本当に驚きました。私も海に近い場所に住んでいたので、避難所で夜を過ごし、そこから会場に向かいました。夜中に避難警報が鳴ったので、一睡もできていない生徒や、避難所に避難した生徒など、混乱の状況で共通テストがスタートしました。
試験自体は何とか無事に行うことができ、生徒も全力で戦いました。あの逆境の中で本当によく頑張ったと思います。
上位者難関大指導
上位者指導は2年生の時から行っていました。主に東北大学レベルの大学を目指す生徒達への指導です。志望校はもちろんそれぞれ異なりますが、東北大学の過去問やオープン模試の過去問等を使って指導します。
私もこの上位者指導を通して、大学2次試験の指導力をつけることができたと思います。英語を自分が使いこなせることと、教えることは本当に全く異なるスキルです。それを教員1年目に痛感させられました。
共通テスト後の出願
共通テストの自己採点が終わり、各予備校からの合格判定が出ると、出願先の検討が始まります。これまで3学年の先生方がやってきたのは見てきましたが、実際に自分がやるとなると、ちゃんとできるかどうかかなり不安でした。各大学の過去数年の出願数から今年の出願倍率を予測し(倍率めちゃ大事です)、度数分布から、共通テストの点数からの合格可能性を考えます。また、2次試験の試験科目、問題形式との相性も加味して、出願大学を決定します。この作業と生徒とのすり合わせを共通テスト後から出願までの間に行うのは不可能なので、ある程度12月の内に、2者面談でプランを決め、12月と1月の3者面談で保護者も交えて決定します。(私大の場合は、共通テストは、点数だしっぱなしの出願以外はあまり関係ありません。)
共通テスト後は、3学年団で、会議室で、昼過ぎから夜8時くらいまで、一人一人の判定をスクリーンに映しながら全員で検討します。
この出願検討を検討して、なおさら生徒だけではベストな出願先を決めるのは不可能だなと思いましたし、保護者がこの知識と経験を持っていることもあまりないため、丁寧な情報共有が大事だなと思いました。(都会では塾がやるのかな?田舎だと、そういった塾はないので、学校がやります。)
2次試験指導
共通テストが終わり、出願校が決まると、2次試験対策が始まります。私大コースと国公立大学コースと最難関コース(東大)の3つに分けて指導が始まりました。私は国公立大学コースを担当しました。出願校は、岩手大学から新潟大学、茨城大学、千葉大学、東北大学などなど、多岐にわたり、それぞれの過去問題を混ぜながら、傾向を加味して教材を作って2次対策指導を行いました。また、土曜日には英作文対策講座として課外を行い、十分に受験校の対策を行った上で、2次試験に臨んでもらいました。
担任した生徒も、コロナ渦中の波乱の大学入試を戦い抜き、何とか志望進路に進むことができました。
受験シーズンでは、心身のバランスを崩してしまう生徒や、学校に気持ちが向かなくなってしまう生徒も多数出ます。そういった生徒の気持ちを理解し、寄り添うこともすごく大切だと実感しました。
卒業式
そして、3月1日に卒業式を迎えます。
2年前に高校に入学してきた時を思い返すと、生徒達は本当にたくましく成長しました。高校3年間は年齢で言うと、15歳から18歳で、心も脳も体も大きく成長します。1年生の入学写真と見比べると同じ生徒だと分からないくらいです。
私も初めて、2年前にこの生徒達を担任として関わり、すごく緊張していたのを思い出しました。また、教師として接すること、ある程度の距離感を持って接することを常に気を付けていました。ただ、これは今振り返ってみると後悔していることのうちの一つです。
なので、最後のホームルームで生徒達にこのことを話して、最後は友達として一緒に記念撮影ができたことはよかったと思いますし、卒業後、大学から帰省してきた生徒が学校に顔を出してくれると本当にうれしいです。
なにごとも初めてで、大変だった初担任の3年間でしたが、総じて充実させることができました。先生方と生徒達との出会いに感謝です。