赤男との邂逅
先日のNAHAマラソン、過酷ながらも楽しくゴールできました。前日にスラムダンクも観たし、沖縄の魅力も再発見したし、ランの発見もあったし、行って良かったなーってしみじみ思っています。
疲れ果てその日のnoteを書き忘れ、
翌日は時間いっぱいで書きそこね、
翌日も秋田出張の為書けずじまい。
結局、この大会はnoteの毎日更新を断念したきっかけにもなってしまいました。それ自体は納得しています。かねてより言ってたことですが、書きたいことファーストなのです。
NAHAマラソンの後半、見知らぬランナーとの交流のお話。
赤いシャツの男
大会中、不思議と何度も見かける人っているんです。ペースが合うのか、戦略が近いのか。途中置き去りにしたとおもったら、ペースダウン時に追い越されたりと、低レベルなデッドヒートを数時間にわたって繰り広げてしまう。前半・後半合わせて5人くらいいました。
第一関門を超えたあたりから、あるランナーと抜きつ抜かれつで過ごしました。たしか、ゴールもほぼ一緒だったと記憶しています。赤いシャツを着た、体格の良い男性ランナー。3回目に見かけた後、彼に「赤男」という名前をつけました。
おい待て赤男!
赤男、ついにトイレ脱落か。
いつのまにか赤男に追いつかれてる!
こんな感じで脳内チェイスを繰り広げてました。
本大会、コミーのライバル「赤男」
地元エイドの星
NAHAマラソンは地元の人らが自主的に準備してくれているエイドがめっちゃ豊富で、兵站の心配がまったくありません。
多いのは黒糖と塩タブレット、カットフルーツあたり。たまにペットボトルのアクエリアスなんかもあります。今回は気温がきつすぎたんで、かち割り氷も神でした。本当に本当にありがたいです。
そんな地元エイドでぶっちぎりでありがたいのが、ゼリー飲料です。
飲むと元気になった気になるし、甘くておいしいし、何と言っても携帯性がよい。片手に持って走るもよし、ポッケに入れるもよし。しんどくなったタイミングでいつでも摂取できるの本当に助かる。程よく冷えてる場合が多いので、ちょっとの間クールダウンにも使えたり。
最初のころは、特定の知人のために待ってるものだと思ってました。だってさ、いっこ200円くらいするよ?そんなもん見知らぬ他人のためにわざわざ買って、炎天下に出てくる?聖者なの?
何度か参加するうちに、これは地元エイドで、全てのランナーに向けたものだと理解するようになりました。が、やっぱり申し訳ないし照れくさいし、最初はなかなか受け取れなかったなぁw
ゼリー飲料は最強の地元エイド
もう一つの勇気
第一関門の後は「マイルストーンを達成した」テンションで、そこそこ足取りが軽くなります。小さな達成って効果ありますね。
もう一回同じ距離走るのかーって暗澹とした気持ちはあったものの、背後に聞こえる花火を聞きながら、(まずは)成し遂げたぞって思ってました。
そこからは、計画通りにペースを維持し、距離を潰していく…はずでした。
ビタンっ!!
10メートルくらい先で発せられた音に、周囲の視線が集まる。
Aquariusだ。水瓶座を意味する英語で、Aquaはラテン語で水・液体の意味があり、水分が体に吸収されやすいアイソトニック飲料をイメージしている。
落としたの、だれよ?
振り返った男の表情は、その刹那に悩み、躊躇し、そして進むことを決意していた。
オリュンポス山頂に住む神々に水を汲み運んだトロス王の息子「ガニュメデス」の神話から「水瓶座」の名を冠した飲料は、沖縄の道に打ち捨てられ、朽ちていく運命となった。
持ち主に目を凝らすと、よく知った人間~赤男~だということはすぐにわかった。赤男はいつの間にか私の前を走っていた。
2秒後、Aquariusは私の左手にあった。エイドの星「ゼリー飲料(厳密には違うものだが)」はFFで言うところのハイポーションだ。冷えた感触から、地元エイドとして受け取ったばかりなのがわかる。落下シーンを見ていない後続ランナーにとっては路傍のゴミだが、出自を知る私達はこれが生きたエイドであることがわかっている。そしてなにより今めっちゃのどが渇いているのだ。
結論から言うと、このアクエリアスは私を癒やすことになった。
加速+5
!?
次の瞬間、本レース一番のペースで走り出すコミー。
赤男にアクエリアスを渡し、ペースをあげて置き去りにする。
「落ちたよ」
『ありがとう』
この時間帯にこのあたりを走るランナーは当落線ギリギリのスローランナーで、30キロ地点でキロ6すら出せない亀ばかりだ。その中で異常なアクセルを開いた市民ランナー。なおこのオーバーペースが原因でその後2キロほど記憶がなかったりもします。
なぜ?
…赤男にカッコつけたかったんですよね。
「諦めたエイドを届けた男」が直後に失速したら、「自分のために無理して失速した」っていうマイナスな気持ちになってしまうんじゃないか?そんな後ろ向きな気持ちで、残り12キロの旅を続けるのか?
拾って良いことしたぜ(+1)
見知らぬ人が届けてくれた(+1)
でも届けてくれた人は失速した(-1)
これってワイのオナニーじゃないか。それだけは避けたい。なんとしても。せめて赤男の視界にいるうちは、余裕の走りを見せなければ…!
それが、この区間の走りを支えた勇気でした。
喉を潤すことはなかったけど、それは私をゴールに導いた。
この後も抜きつ抜かれつ、アクエリを飲みきって路上にポイするところも目撃しつつ、競技場のトラックで、ついに赤男を抜きさってフィニッシュしました。トラックでペース上げる人ってあんまりいないんだよねw
現地のみんなの応援に支えられた42キロですが、今回は見知らぬランナーからも、走るチカラをもらいました。
走るの好きかって言われたら、たぶんそうじゃないです。とはいえよく走ってます。
おしまい。