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スインガー パンチャーを考えてみた。

目指すはホームラン

評価バッテリーの確立しているMLBではOPSなどの指標が打撃能力としては大きいですが、打撃における満点はホームランですよね。
基本的には打球速度が速い方がヒットになる確率も高くなるため、雑に言ってしまうと速い打球を打つ・遠くに飛ばす能力が重要ってことです。
(ミート力ありきの話)
もちろん、野球はドラコン競技ではないので、100mだろうが140mだろうがソロホームランはソロホームランで同じ1点です。
柵を超える距離が出せるようになったら、さらなる飛距離やスイングスピードを追求するのではなく、打率・正確性・再現性・対応力を追っていくのも練習の方向性としてはアリだと思います。
(目線をぶらさない。並進で大きくスウェイしないなど)

また、とことんスイングスピード、飛距離を追求するのもアリです。
スイングスピードが速ければ速いほどボールをより引きつけることができるので、球種やコースの見極めをする時間が長くなります。
さらに、160m飛ばさなくてもホームランは打てますが、160m飛ばせる人は少々ミスヒットしても100mくらい飛んでホームランになっちゃうなんてことも考えられます。

流行りのアッパー軌道

ボールは必ず上から下に来ます。
いわゆる「伸びる球」も経験などからの予想よりも落ちてないだけなので、バットは下から上に振ってボールの軌道に合わせることで長いインパクトゾーンを作るというのは正しいのでは無いかと思います。
また、ゴルフなどされる方は想像しやすいと思いますが、遠くに飛ばすには打ち出し角がある程度必要です。
しかし、その角度の作り方はタイプによって変わってくる気がしています。
フライボール革命の流行により、アッパー軌道が正解だろうという見識が広がりましたが、このアッパー軌道を作るためにヘッドを落とす等のスイングが流行ってきているのも感じます。
ただ、これが合わない人も居ると思うんです。
それを今回は深堀りします。

スインガー パンチャー

ネットなどでもよく目にするタイプ分類にスインガーパンチャーというものがあります。
今回はこの2タイプをメインに考えていきます。
選手へのインタビューやスポーツ特集番組などで以下のような表現を耳にしたことありませんか?

「バットの芯を先に出す。」

「手元・グリップエンドを先に出す。」

「捕手側の手でボールをつかむように打つ。」

「バットヘッドが自然に落っこちるのを利用する。」

「バットヘッドを立てる」

このようなプロの選手や指導者の言う感覚って真逆のこと言ってない?
って思うことありませんか?
これらの表現の相反もタイプの違いによるのではと考えています。

スインガーの特徴

スインガーのイメージgif

B2打撃


スインガーの特徴はバットヘッドを落とし下から上にすくい上げるように
バットの遠心力を大きく使う
スイングです。

スインガーの人の意識している特徴的な表現としては、

「グリップを先に出す、ヘッドを置いてくる」
「捕手側の肩・ヘッドを落とす」
「バットを放り投げるように遠心力を最大にする」
「インパクトは強く当てるというより、強く振ってる途中で当たる」

などです。

バットを最短距離で出せ!上から叩け!
という指導がイマイチではないかという流れは少し前からありますが、サイクロイド曲線などの特性から物理的にはバットヘッドを少し落としたほうが到達時間は最短では?という流れで言われているものです。
ヘッドを落下させたほうが速く振れると言ってる人はそういうことかなと思います。


サイクロイド曲線


また、短い回転半径のものよりも長いものの方が衝突した時の力が大きくなるのはなんとなくイメージできるのではないでしょうか。

ハーフスイングで特性が見やすいかと思います。
ヘッドを落とし、グリップを引っ張ってくるような動きが見えます。
スインガー型のハーフスイング 


パンチャーの特徴

パンチャーのイメージgif

A2打撃


パンチャーは小さい回転半径で、どちらかというとバットの慣性力などの外部的な勢いよりも、内部的な筋発揮を多く使って素早く鋭くインパクトするようなタイプです。

特徴的な表現としては

「ヘッドを立てる」
「コックを保つ」
「インパクト圧を高める」
「芯にボールを乗せて、押し込む」
「腕と体幹の三角形を崩さない」

などです

角運動量保存の法則などを考えると、回転半径が小さい方が回転は速くなります。
フィギュアスケートでのスピンの時に腕をキュッと小さくまとめると回転は速くなって広げると遅くなりますよね?
すごく簡単に言うとそういうことです。

パンチャー型のハーフスイングでは、ヘッドを立てた状態で速く小さく打ちにいくカタチが見てとれます。


サイクロイド曲線などを用いたり、回転半径を大きめに作ったりしてバットそのものの慣性力を活かしてパワーを強める傾向が強いか、回転半径を小さくして身体の回転を速め、インパクト時に向けて内部的な筋発揮でパワーを作る傾向が強いか。
がスインガー・パンチャーの特性の違いではないかと思われます。

グリップの持ち方については4スタンス別にかなり変わるかと思われます。
4スタンスについての解釈の記事にでも書きたいと思います。

バットを短く持つか、長く持つかはスインガー・パンチャーで分かれる可能性があると考えています。
スインガータイプはバットの慣性・サイクロイドを利用してスイングを作っていく傾向が強いため、トップバランスのバットを小指がグリップエンドに掛かるくらい長く持つのを好むかもしれません。

反対に回転半径を小さくして自身の身体の回転や筋力発揮によってエネルギーを作っていくパンチャー派はやや短めに持ったり、ミドルバランスのバットを好む可能性があります。

Jグリップなどグリップのカタチも様々な形状が出てきていますが、今後はアマチュアプレーヤーにおいてもゴルフクラブのようにバットのフィッティングが一般的になっていくのではないかと予想されます。


打球の打ち分けについて


スインガーの打ち分けイメージ図

スクリーンショット 2020-06-06 11.23.21

スインガーの打ち分けのイメージはバットヘッドとグリップの位置関係、ボールに対してバットがインサイドアウトに入れば流し打ち、スクエアならセンター返し、アウトサイドインなら引っ張りというイメージではないでしょうか?
腕とバットの角度は打ち分ける方向によって変化し、体幹と腕の三角形の向きは大きく変わりません。
肩が開くのは良くないという人はスインガー派かもしれません。


パンチャーの打ち分けイメージ図

スクリーンショット 2020-06-06 11.23.35

(写真は二次元なので補助線だけ見るとコックが変わっているように見えますが、実際には奥行きがあるので、バットと腕の角度はすべて同じです)

対してパンチャーの場合、身体の位置関係における理想のインパクト位置というのは変わらず、身体の向き(胸郭の回転によって胸郭と腕で作られた三角形をどこに向けるか)が打ち分けの方向となるのではと予想しています。

三角形を崩したくない、腕とバットによるコックの角度をキープしたい(下図水色線)という感覚の人はパンチャーの可能性が高いです。

スライド型・回転型

並進時のスライド型 or 回転型は4スタンスタイプやスインガー・パンチャー別での違いではなさそうです。
タイプ関係なく共通して並進時に大きく重心移動して打つ方がエネルギー的には大きくなります。
ロングティーでなるべく飛ばしてと言われたら、助走とってステップして打ったりしますよね?
ただし、ミート力は落ちると思います。
ティー打撃のように止まっているボールでもミート力に差が出るでしょうから、投手が投げたボールの場合にはさらに影響がでるかと思われます。
(球種もいろいろありますしね)

つまり、並進運動で大きく重心移動し、スライドすることはエネルギーを大きくできる反面、目線のブレ・スイング開始までの予備動作の多さ・長さなどとのトレード・オフになる可能性が高いです。

特に球速の高速化、高速な変化球(スラッターなど)の普及などもあり、大谷選手を筆頭にMLBでは並進動作がコンパクト化している傾向も感じます。

スイングプレーンの違い

A1打撃


スインガーの方が回転半径が大きい。
ダイナミックなスイング・バットを上に振り上げるようなフォロースルーに見える。

A2打撃



パンチャーではスインガーに比べると回転半径が小さく、コンパクトに見える。
素早い動きでパチン!と打っているようなリズム。

スインガータイプ向けのドリル



パンチャータイプ向けのドリル

どのタイプが最強?

結論から言うと、タイプ関係なく最強な人は最強です。
どのタイプでもタイトルを獲得するような素晴らしい選手は居ます(MLBでもNPBでも)。

根本から、今までとまるで違う身体の使い方への違和感と戦いながら、姿勢・握り方すべてを変えるのか、今の自分の特性でしっくりくる握り方・構え・スイングを作っていくのかはどちらが早く効果が出せそうかは想像がつきます。
そもそも本当に4スタンスのような個体差を変えられるのかは疑問です。
(B2タイプをA2タイプに変えられるのかということ)

タイプが違うからバリーボンズ選手のようになれなくても、松井秀喜選手のようになれるなら良いのではないでしょうか?
坂本勇人選手のようなバッティングはできないけど、ロビンソン・カノ選手のようなバッティングができるのなら良くないですか?
MLBでもNPBでも各タイプでトッププロとして活躍している人が居るということは、少なくともタイプを変えないとプロ選手になれないということは無いのです。

自分の身体・感覚と向き合う。

4スタンスタイプやスインガー・パンチャーなど、身体特性によってしっくりくるもの(動き・構え・持ち方)と、そうでないものがあると思います。
知識を増やすことも重要ですし、try and error を繰り返して誰よりも自分に詳しくなることも非常に重要です。
自分を分析し、向き合う時間をとってみてください。

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