ワンチャンあればワンチャンいく

初講義当日になり、私は純さんと共に登校した。
「対面では全然話せないのにハメ外しすぎちゃいました。ハードル上げすぎちゃったかもしれません。緊張します。」
『まぁそんなもんよ。』
みたいな会話をした気がする。

学校へ着くと、「着いたー!集合場所行きますー!」とグループLINEを飛ばした。
集合場所で待っていると、ぽつぽつ人が集まりだした。
あらかじめ、「アッドモ タイチャンデス」と初めてのオフ会で見られるようなやり取りを何度か交わした。
そうしていびつな輪になって、「○○です、よろしくお願いします」「××です、バスケのサークルに入ろうと思うので、一緒に入る人がいたらよろしくお願いします」
と、一言ずつの自己紹介が続いた。
私はというと、LINEのようにボケた方がいいのかな、逆に堅苦しい挨拶した方がウケるかもしれないななどと、失礼な話、みんなの自己紹介をスピードラーニングばりに流し聞きしていた。
しかし、そのあれこれ考える作業が停止する出来事が突然起こった。
「△△です、みんなより一個上だけど気を遣わないで普通に接してください!」
そんな自己紹介をしたのは、ガイダンスの時に私を感電死させた黄色いコートの女の子だった。
メルヘン理想主義者のクソ野郎である私は「これは運命なのでは?」と都合のいい思考を巡らせた。

そんなこんなで、私はボケ20パーセント、堅苦しさ80パーセントの自己紹介を済ませた。

これがその時の写真である。
生足魅惑のマーメイドこそが黄色いコートの女の子だ。

私とレディたちの間にソーシャルディスタンスが保たれているが、彼女たちは新型コロナウィルスが猛威を振るうことを予見していたのかもしれない。


『あの○○ちゃん可愛いから俺狙おうと思う。』と隣にいた純さんが私に耳打ちをしてきた。
「おー!頑張ってください!俺はガイダンスの時に(中略)」
『お互い頑張ろう』

彼は自己紹介から一週間後、○○ちゃんを巧みなテクニックでラブホテルへと誘い、本当に交際へと持ち込む華麗な手腕を見せつけた。

余談ではあるが、純さんと○○ちゃんは一年の交際期間をもって別れることになるのだが、そのまた一年後に○○ちゃんは私と交際することになるが10ヶ月ほどで破局してしまったのである。

本題に戻ると、黄色いコートの女の子はどうやら4年ほど付き合っている彼氏がいるらしい。
私の「ワンチャンあるかも。」という邪な考えは打ち砕かれた。
しかし、友人として心理的に距離を詰めていこうとは思っていた。
だが、下心が全くないと言ったら嘘になる。
なので、彼女とコミュニケーションを取る時と他の子たちとコミュニケーションを取る時では意識の持ち方が異なっていた。

自己紹介から半月も経たないうちに、30人弱のグループはどんどん分裂し、私たちは9人グループで行動するようになった。純さんとその彼女の○○ちゃん、焼きそばパンのレン兄、そして黄色いコートの女の子も一緒だった。
講義、昼食、空きコマ時間などはほぼ常に一緒に行動し、親密度を徐々に深めていった。
そうして、黄色いコートの女の子は彼氏の愚痴を吐くようになった。
そうなったタイミングと同時に、1泊2日で横浜へ行くプチ修学旅行のような大学の行事が催された。


つづく

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