⑵
そのチャットでは、「天地」というハンドルネームを使っていた。
気づけば、そのチャットにおいてはそこそこ有名人だった。
高校の友達より、チャットのメンツと連絡を取り合うことが圧倒的に多かった。
和気あいあいと、学校がだるいだの彼氏がああでこうでだの学生特有の話題で盛り上がっている。
そんな中、「ゆーき」という女の子と仲良くなった。
彼女は、南明奈を少しマイルドにした見た目で、男慣れしていない大人しい感じの子だった。
私は、学園チャットにおけるアイドル的な立ち位置だった彼女のことが少しだけ気になり始めた。
仲良くなるにあたり、なんとなくチャット内ではタブーだった直メの交換をして、しばらくやり取りを続けている中で、ゆーきに気がありますよ的なメールを送った。
私のことが好きだといった風な返信が届いた。
だが、付き合うとかそういった話はしなかった。皆に内緒で電話を掛けてみたり、ふわっとした関係を続けた。
しかし、彼女に対してどんどん興味が薄れていった。
彼女が悪いとかではない。私に気があることが分かってからなんだか関わるのか面倒になってしまったのだ。
つまり、私がゴミクソ野郎なのである。
メールの返信のペースがどんどん落ちてしまって、あげく彼女から「わはは!寂しいからメールしてみた!」というメールが届いた。
次第にその曖昧な関係は自然消滅して、彼女はチャットに来ることはなくなった。
チャットに通うようになってから1年ほど経った頃、誰からともなく、「そろそろ皆で集まって遊びたくね?」という話になった。
ほとんどの常連は関東一円に住んでおり、参加するとなると地方から来るのは私だけだった。
初めてのオフ会はめちゃくちゃ楽しくて緊張したし、オフ会が終わった後はしばらく寂しさでテンションが低かった。
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