墓穴

大学生活において二度目の春が訪れた矢先、純さんとモカちゃんカップルとマッチョとアキちゃんカップルが破局を迎えた。
私はというと、あの夏の日の出来事を周囲の友人たちに漏らさず一人で抱えていた。それなりに時間は経っているので自分の中では風化しつつあった。

マッチョはアキちゃんと付き合う前までは交際経験が無かったと言っていた。
アキちゃんの傍若無人かつ自己・他者に対する心無い行動に耐えかねて別れを決意した、と涙ながらに私の家でそう語った。

話を聞いた私たちカップルの間で、何か出来ることがあればいいね、と話したと思う。私たちは交際を続けていけたらいいなと思っていた。

いろいろあったが、一年記念日が訪れた。
「一年おめでとう!これからもよろしく!」といった旨の長文のLINEを用意している最中に、あの子からLINEが届く。くそ、先を越されてしまったか。と薄ら笑いを浮かべながら、LINEを開いた。

あの子から送られてきたメッセージは、『あなたを支えるの疲れちゃった。もう我慢できない。』という内容のものであった。
本当に突然だった。
サインを出している、という話をよく耳にしていたが、私が鈍感なのか予兆が全く見受けられなかった。

また食い下がったが、私は折れた。

ちょうど一年目に、私たちは破局した。
別れることに同意するやいなや、あの子は女性の友人たちに報告をしにいった。

私はレン兄、純さん、マッチョなどの男性の友人に
送った。
レン兄は好きな人にフラれたというか気のない態度を取られ続けたことで暴走し、純さんの家でワインをカブ飲みした結果、紫色のゲロを吐いたがとても優しい男だった。
私たちは心理学部に属していたので、そういう観点から感情のコントロールをしてみては?というアドバイスをくれた。

純さんはLINEでは多くは語らなかったが、彼なりに慰めてくれたと思う。
後日、昼間から飲みに連れていってくれた。

マッチョからは「そっか、残念だね。お互い独り身頑張ろう。」といったような返事がきた。

レン兄がブルーベリーヨーグルトを胃から生成した日のことである。
ファミリーマートで買っためんたい味のスナックをパーティ開きで開封しようとしたが、なかなか開封できず、突然開封できた瞬間の匂いが、"股から誤ってプレーンヨーグルトを生成してしまったので、急いで拭いた時に使ったティッシュ"の匂いと同等だった事実が発覚した。
開封直後、私は思わず笑ってしまったのだが、全く同じタイミングでマッチョも爆笑した。
「なwwwwアレなwwww」
『なwwwwなwwww』
純さんとレン兄はきょとんとしていた、という思い出がある。

講義にはちゃんと出ていたが、家に帰ると私は何もする気になれず、学校が終わって遊びなどに誘われても断っていた。
家で天井を見つめ、腹が減ったらご飯を食べ、眠くなったら寝るという非生産的な日々を一週間ほど過ごした。

それから数日後、あの子の私物や衣類など数点が私の家のロフトにまだ保管してあったので、取りに行くねと言われた。
家に着いて、あの子はしばらくくつろいでいた。
学校が休みの日にどこかに行ったらしいので、iPhoneで撮った写真を見てほしいという話の流れになった。
『ここ行ってきたのーすごいよかったー』とか色々言っていたが、あまり一緒にいると辛いし、早く帰ってほしい気持ちが強かった。
『でねー次が…』とスライドして見せた写真が

満面の笑みで笑うあの子と
あの子を後ろから抱擁する
マッチョとのプリクラだった。


つづく

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