セカンドハーフ通信 第99話 決断の背景
決断の背景
真田氏は天下分け目の戦い、関が原の戦いにおいて、兄弟が西軍と東軍に分かれて戦った。父 真田昌幸と次男の雪村は西軍、長男の真田信幸は東軍である。
もともと仲の良い兄弟だったといわれており、なぜ東西に分かれたのだろう。確かに血縁の問題はあった。兄 真田信幸の妻は徳川家康の重臣、本田忠勝の娘であった。一方、弟 真田雪村の妻は石田三成の親友 大谷吉継の娘であった。普段からの付き合いが判断への重要な要素になっただろう。
しかしそれは1つの要素に過ぎない。むしろそれを超える視点があったと思う。
1つ目の視点は、どちらが勝つか?という判断だ。武将が誰かと組して戦う場合、それはそのまま生死をかけた決断になる。だから勝てると思う側につくことが自然だ。武将には多くの家臣や親族がいる。戦いに勝つか負けるかは1人の問題ではない。情で動くには重過ぎる判断だ。判断が分かれたのはそもそも2つの勢力が拮抗していて甲乙つけがたかったからだろう。
2つ目の視点は、何を正義と考えるかだ。西軍は豊臣秀吉の後継は嫡子秀頼であるべきということを正義とした。一方、東軍は国を束ねるのはその時点で最も優れたリーダーたる家康であるべきとした。
血縁上の理由はあったものの、最終的には利と理念という相反する視点を踏まえ総合判断したのだろう。その判断の上で血縁、つまり同じ家が分かれて戦うということに苦しんだのではないだろうか。
結果は、東軍が勝ち、昌幸と幸村は高野山への蟄居が命じられる。死罪を免れたのは兄 信幸の尽力が大きかったといわれている。
ここには自分の意に反したことに対する憎しみはない。戦国武将のドラマティックな生き様にしばらく思いをはせてみる。