セカンドハーフ通信 第76話 白河の鈴木食堂
白河の鈴木食堂
以前、那須高原に家があり、そこから車で1時間弱の福島県白河市によくラーメンを食べに行った。白河は小さな地方都市だが、ラーメン屋さんがたくさんある。
白河ラーメンの基本は伝統的な中華そばで、きりりとしたしょうゆ味。自家製麺に化学調味料を使わない手作りのスープというのが主流だ。
数ある白河ラーメンのお店の中で、私の好きな店のひとつ 鈴木食堂は、10数人でいっぱいになる小さなラーメン屋だ。この店のラーメンも昔ながらの中華そばスタイルだ。特別に特徴があるわけではないが、すべてのバランスが良い特別なラーメンだ。
それぞれの具が多すぎず、少なすぎない。しょうゆラーメンには、なると、わかめ、チャーシュー、のり、シナチクがまるで美しい絵のように配置されている。スープは様々な素材のエキスがいりまじるものの、バランスのとれたすっきりとした味わいだ。
店内はいたってシンプルで掃除が行き届いている。隅々まで清潔で、変な猥雑感はどこにもない。カウンターの向こう側には調理場があり、真っ白い調理服を着こなし、お父さんと息子さんが黙々と働いている。
何分待たないと入れませんという行列のできるような店ではなく、ひっそりと住宅街になじんでいる。お客さんは地元の人がほとんどだ。
何十年もこのスタイルでやっているのだろう。まるで時間がとまったような情景の中で、作り手の几帳面さがにじんでくるようなラーメンを食べることができる。作り手の性格が店内にもラーメンにも表れている。昭和の映画シーンのような場所で、ありがたく一杯のラーメンを頂くことはお金で買えない贅沢だ。
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