セカンドハーフ通信 第53話 年金と社会保障
年金と社会保障
60歳になって企業年金というものを受給するようになった。45歳で会社を辞めた時、一時金でもらうか、年金でもらうかという選択があり、何となく半分づつもらうことにした。その時はそれほど気にもしなかったが、いまさらながら毎月年金が支給されるのはうれしいし、役立つ。
年金を払いたくないという人が増えているが、年金を払っている頃と年金をもらう頃の自分の環境が違うことは、若い人にはなかなかイメージできないだろう。この年になると、年金をもらうという仕組みは、収入がなくなったり、収入が減少したりした場合に力を発揮することがわかる。
国民年金や厚生年金のような公的年金は投資に対するリターン率がわからない、あるいは合理的でないと考えるのは当然だと思う。個人の立場から払いたくないという気持ちもわかる。しかし、資産のタイムシフトという意味で年金の意義は大きい。また、投資が自己完結できるという意味では個人型確定拠出年金(IDECO)という制度があるのでこれは大いに使った方がよいと思う。節税効果もある。
公的年金は資産のタイムシフトという意味と同時に社会保障という観点が重要だ。つまり、社会が弱者を救済するセーフティネットとしての役割だ。本人の努力とは関係なく、病気やなんらかの理由で生活に困っている人を救うのは社会としての最低限の義務でもあるし、困窮者を減らすことは犯罪を未然に防ぐことにもかかわってくる。
ただし、支給額決定のロジックや困窮者への救済のスキームの考え方がもっとオープンに議論されるべきだと思うし、年金運用も透明性を持って運用・報告されることが必要である。今はそれができていないのでセーフティネットの納得性が高まっていない。仕組みの透明性や納得性を高めれば多くの人がもっと年金に対して社会的な意義を感じるようになれると思う。