外資系企業人事部長の部下へ宛てたHR Letter「グローバル企業での働きかた」 第9話 クロスカルチャーコミュニケーション
第9話 クロスカルチャーコミュニケーション
外国人との接点が増えるとクロスカルチャーの場面が多くなっていきます。私自身、業務の半分くらいは外国人とのネゴシエーションに費やしています。今後、グローバル企業で働く以上、クロスカルチャーと向きあうことは避けて通れないことです。私の経験の中から感じたことをいくつか皆さんにシェアしたいと思います。
「本音と建て前」
日本人には本音と建て前という概念がありますが、外国人にも同じように本音と建て前の概念があると私は思っていま す。我々の英語教育の初歩では「Yes・No をはっきりさせましょう」と言われてきました。しかしながら本音と建て前という概念がある以上、このアドバイスを単純に理解するのは危険です。よく言われるのは、Fine、Good、Greatと色々なほめ言葉がありますが、これは日本語訳ほど「良いこと」を示す表現ではありません。更に「OK」などは OK でない場合があります。また、話をよく聞かないとAgree なのかそうではないのかわからない場合もあります。
更に、スノッブな人ほど感情をストレートに表さないという傾向もあるように思います。ですから、ストレートに「Yes・No」をいうことで相手の感情を害する場合があります。ロジカルに話をすることは必要ですが、英語の言い回しにもダイレクトでない表現は多々あるこ とを理解すべきです。
本音と建て前についていえば、どの国に行っても存在し、それは個人のパーソナリティに由来するのではないかと思います。
「人種差別」
海外で暮らした経験のある方なら、多かれ少なかれ人種差別的な経験をしたことがあるのではないでしょうか。東洋人である私たちに対し、差別的とも思われる対応をする人が外国人の中にいることは事実です。
彼らにとって我々東洋人がよくわからない存在であり、彼ら自身をプロテクトするために差別的な感情を持ち、心を開かない場合にそのようなふるまいをしてしまうのだと思います。もちろん多くの人が差別的なふるまいをするわけではありませんが、経験するとやはりいやなものです。
しかしながら、最近は日本人の中にも他の国の人を差別する風潮もありますから、一部の外国人だけのことではありません。つまり、今後ダイバーシティが進めばそういうケースは増えていくでしょう。その時に、そんなことにとらわれず、むしろ跳ね返す、あるいは平然としているくらいのタフネスさを持っていかなくてはいけないと思っています。
「貪欲は美徳」
欧米では貪欲は美徳と考えられている、という内容の記事を見かけました。確かに欧米では貪欲、別の言い方をすれば自分のほしいもの、実現したいことに対するアグレッシブさをもつことは好ましいことだと捉えられています。いっぽう、日本では謙遜や沈黙は美徳という美意識があり、彼らのアグレッシブさに共感できない人は多いかもしれません。
この2つの考え方は全く対照的です。ある意味、相入れない考え方です。従って、我々がクロスカルチャーの世界に入っていく場合にはこのことをよく理解することが重要です。もちろん個人の価値観の問題もありますが、グローバルビジネスの世界で日本的な考え方はマイノリティです。ですから、我々からすると強引だったり、うるさく思えることも、西洋では普通に思われている場合があります。我々の方がそれを受け入れる必要があります。
以上、今回は3つのトピックスをとりあげてみました。クロスカルチャーに関するギャップや意外さは少なからずありますが、それを受け入れていくことが大切で、それも含めダイバーシティだと考えています。