セカンドハーフ通信 第16話 銭湯好き

銭湯好き

旅先ではいくつも温泉をはしごするほど大の風呂好きだ。休日の銭湯通いも長年の習慣となっている。今は新宿区に住んでいるが、山手線の中にも結構銭湯はある。新宿区はもとより、文京区、豊島区、中央区あたりまで銭湯目当てで足をのばす。

最近では、銭湯は過去の遺物と思われているかもしれない。特に若い人は銭湯に行ったことがない人もいるだろう。平成17年に東京都で1025軒あった銭湯が、平成29年には562軒まで減少しているそうだ。

銭湯の魅力は、広い湯船に浸かる解放感、豊富なお湯の感触だと思うが、さらには建物自体のレトロな魅力もある。銭湯にいくとタイムスリップしたような、ほっとした気持ちになる。

銭湯に通う人は意外にバラエティに富んでいる。近所のおじいさん、職人系のおにいさん、趣味のランニングをする人、クラブ活動後の学生さんなどだ。最近は外国人の利用者も増えている。

広い湯船のお湯に身を任せると慌ただしい日常を離れ、ゆったりと心を開放することができる。気持ちのリセットの場でもある。銭湯は私にとって貴重なリラックスの場所なのだ。

しかし昨今銭湯を経営することは大変だと思う。昨年は家に一番近いお気に入りの銭湯が廃業した。利用者数は昔に比べれば減少しているし、夜遅くまでの営業は大変だ。施設が大きいため、古くなればその補修も結構なコストがかかると思う。ほとんどの銭湯は年老いた店主がやっており、その後継者問題に頭を悩ませている。

しかし銭湯は地域のコミュニティとしての役割もある。知らない人でも一緒に風呂に入って日常会話をかわし、なんとなく地域の情報を聞くことができる。落し物をして脱衣所で探していると、見ず知らずのおじさんが一緒になって探してくれたこともある。

都会では他人とのコミュニケーションは希少になってきているが、銭湯には昔ながらのコミュニケーションがある。なんとなく時代遅れという先入観を捨ててみると、私にとって、銭湯は心休まる場所なのだ。だからできるだけ長く銭湯が存続していくことを心から願っている。

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