
「飯沼一家に謝罪します」第4話までの考察
「イシナガキクエを探しています」もとても面白かったので、今回「飯沼一家に謝罪します」も楽しく見ることができました!考察の余地が多分にありそうなので、少し考えてみました。
もちろん重大なネタバレを含みます。
動画:
全体像の整理(だいたい時系列)
下記は番組自体から読み取れる事実(おそらく)を並べています。
飯沼一家は、経営する会社の経営難により、資金繰りも兼ねて100万円がもらえる番組に応募する。家族で参加せねばらないが、引きこもりの息子・明正の替え玉で会社関係の知り合いの子ども・良樹を明正として番組には参加することにした。
番組に向けて運気を上げるため、知り合い経由で学者の矢代に相談し、矢代は「影の行列」というオリジナル儀式を執り行う。このとき、良樹も明正として儀式に参加する。
番組に出演した飯沼一家は、奇跡のように100万円とハワイ旅行を獲得する。
この後、ハワイ旅行に向かったという内容のビデオでは、飯沼一家(と良樹)はハワイではなく曰く付きの心霊スポット巡りをして、各所でその場所の物を収集している。
もとの家族の元に戻った良樹は元気がなくなり、喋らなくなり、ついには動かなくなってしまった。また「向こう側に行くため」のゲートのようなものを作っていた。
飯沼一家(本物の明正を除く)も様子がおかしくなり、また良樹同様に向こう側に向かうためのゲートを曰く付きスポットで収集した物で作っていた。明正は様子のおかしい家族をビデオ撮影している。最終的には飯沼家は全消し、緊急搬送された明正以外は全員死亡した。
明正はその後おじの養子となり北海道で暮らす。
良樹の母は、息子の身に何が起きたのか独自に調査し、矢代とその儀式にたどり着く。矢代と接触し、「儀式が原因かもしれない」という矢代に対し、公共の場での謝罪を要求する。テレビ番組という場を使うため、知り合い経由で食品会社まででっち上げた。
矢代は番組の場を借りて、飯沼一家に謝罪する。同時に、その罪を償うために「四十九日の裁き」というオリジナル儀式を良樹の家で執り行う。
飯沼一家に謝罪しますの取材が開始される。
明正は妻と息子と3人で札幌で暮らしていた。
良樹の母は徳島で良樹と暮らしていた。良樹は家の二回で寝たきりになっている様子。良樹が替え玉のせいでこうなってしまったのではないかと、心配する明正から毎年りんごが届いている。
こうまとめると、本作は割とストレートな表の流れがありますよね。しかしながら、全体に散りばめられた違和感や謎が、裏にある何か(真相?)を示しているような気がしてきます。
「影の行列」は何だったのか
これは正直、まだわかりません。悪い結果をもたらしたのは事実のようなので、失敗なのか間違いなのかは置いておきましょう。
飯沼一家(と良樹)は、儀式中に「自分の中にある悪い感情や不運を思い浮かべ、心のなかでそれらを鏡に映し出すイメージをしてください」と言われ、最終的にそのものを紙に書いています。
良樹:「数学の成績」
飯沼母:「明正」
飯沼妹:「お兄ちゃん」
飯沼父:「明正」
これそのものが十分ホラーですが‥飯沼一家が明正と書いたこと自体が何かに繋がっているわけではないような気がします。良樹は可愛い回答なのに結局呪いを受けていますしね。
また矢代は儀式中に鏡を割っているようです。鏡の中に悪いものを封じ込め、割ることで出てこれないようにするとか。鏡を割ることには、良い意味もあれば悪い意味もあるようで、これもいまいちなんとも言えそうにありません。
「センテンナムフルホビル」と生徒たちが読み上げている呪文も気になってググりましたが(番組見た人の8割くらい調べてるんじゃないかと思いますけども)、迷信なのか何なのかいまいちよくわかりません。
ただ下記のヤフー知恵袋はちょっと気になりました。
こちらの質問は「魔法の言葉や呪文を教えて下さい」ですが、そのベストアンサーが以下になっています。
センテンナムフルホビル 自分を守ってくれている守護霊がパワーアップします。 ただし、ただ唱えるだけでは効果は弱いです。 超強力に守ってもらうには、ちょっとしたコツがあります。 唱える回数もね イジメにあっている人は、イジメから守ってもらえます
まぁなんてことはない内容なんですが、そもそもヤフー知恵袋で「センテンナムフルホビル」を検索して出てくるページは対して多くなく、これ以前に遡ると 2020年、2012年、2007年、のようにかなり稀な質問であることがわかります。何が言いたいのかというと、この回答は2024年10月29日と割と直近に行われており、偶然といえばそれまでなのですがタイミング良すぎない?(仕込み?)とか思ったのでした。
「唱える回数もね」と何故かコツがあると言っている割にその答えには触れておらず、なんだか怪しいニオイがプンプンするんですがね!
ちなみに唱える回数は 36 回が必要らしいです。一応覚えておこうかな。
ちなみに回答の投稿者はちゃんと活動しているアカウントでした。質問の投稿者もアカウント開設は2006年で、これも活動のあるアカウント。仕込みだとしたらえらく手が込んでるので‥さすがに邪推ですね。
とにかく、この儀式で行われていることは全体的に良いとも悪いとも言えそうなことの寄せ集めで(寄せ集めなのは本人も言ってますけど)、矢代という人物がどんなロジックでこの儀式を生み出したのか問いただしたいところですが、実際に呪いという効果は発揮したのですごいはすごい。
「四十九日の裁き」は何だったのか
これに関しては、儀式自体の映像も本編には登場しないので推測の域を出ません。しかしながら、そのヒントは明確に映像に残っているので、もう少し具体的にイメージができそうです。
儀式は良樹の家(徳島)で行われました。これは映像から明らかです。
良樹の母は、取材への表向きは「公共の場で謝罪する」ことを求めていましたが、それは謝罪番組自体で達成されているのではと思います。ではなんのために「四十九日の裁き」を受けるのでしょうか。これは明らかに飯沼一家ではなく良樹に対しての罪の償いであるように思います。良樹の母は「飯沼一家を不幸にしたことの後悔のために」と言っていますが‥それなら徳島の良樹の家の二階でやらなくてもいいのではと‥
矢代は飯沼一家への謝罪を正装で済ました後、白装束に着替えて手を清め、良樹が寝たきりになっている二階へ向かって映像は終わります。この儀式について良樹の母は、
「でも‥あれじゃあねぇ‥やっぱりダメみたいですね」
「中途半端な知識で、儀式なんかやっちゃいけないんですよ」
と言っています。やっぱりダメみたいですねっていう言い回しは、過去に行われた儀式に対しては少々おかしくないでしょうか。普通は、「なんの意味もありませんでした」とかね。
いま矢代はどこにいるのかという問い合わせに良樹の母は沈黙でした。
この時点で、矢代はそのまま良樹家の二階に現在もいることが予想できます。
そして、まさに「中途半端な知識で、儀式なんかやっちゃいけないんですよ」の裏で流れている良樹?と思われる映像をよく見ると‥腕が二本重なっています。

腕だけだと、もしかしたら両腕を折り重ねているのかもと思いましたが、足もよく見ると少なくとも3本あります。良樹の部屋に入る場面で、良樹?は仰向けで寝ているようですから、動けない良樹?が横向きにならなければ両腕を重ねることはできませんしね。
つまり、あれは良樹と矢代がどういう状態なのか折り重なって寝ています。そして少なくとも片方は動いて生きている。
もう少しこの映像に注目すると、どちらのものかわかりませんが手や足に溝のような物が見えます。指輪をはめるくらいの位置と、足はスネのあたり。
儀式の名前は「四十九日の裁き」。四十九日といえば法事が思い浮かびます。全然内容を知らなかったのでWebページを引用します。
輪廻転生とは『また生まれ変わる』という意味で、ご逝去から49日後に生まれ変わりの行き先が決まります。
その行き先がどこになるか――それを七日ごとに行われる仏様の裁判で決定するのです。
生まれ変わる世界は、現世での行いをもとに6つの行き先に分かれていて、これを「六道(ろくどう)」と呼びます。地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間(=いわゆる人間界)・天上(=いわゆる天国)。この六道のひとつが「地獄」なのです。
死後49日目までに7日ごとに裁判を受けて、どこに輪廻転生するのか決まると。少なくともこの意味での「四十九日の裁き」を受けるためには、まず死亡する必要がありそうです。
しかしながら、ただ「死ぬ」ということを言い換えて「四十九日の裁き」と言っているだけなワケがないですよね。
良樹と矢代の状態を考えると‥矢代は儀式により何の結果を得ようとしたのでしょうか。ただ矢代自身が後悔・贖罪のためだけに儀式を行うのであれば、良樹を巻き込む必要はないわけですから、何か「良樹に関すること」で矢代が儀式に結果を求めていたのではないかと推測します。
良樹母の願いと矢代が儀式に求める結果はおそらく同一で、「良樹の魂をこちら側に戻す」ようなことであると思われます。良樹は今の状態(寝たきり、生命維持装置)となるまで、あちら側に行くためのゲートを作っていたようですし、現在は良樹の魂はあちら側に行ってしまっているのだと思います。
どんなおぞましい方法を取り入れたのかは、知りようがありませんが、果たして儀式は成功したのでしょうか?ここからは突拍子もない話ですが、もう少し続けます。
明正の息子は‥
札幌で現在親子三人で暮らしている明正。その息子を見たとき率直に思ったんですよね。あの子、明正というより良樹に似ていませんか?
特に初回、まだテレビに出ていた明正(替え玉良樹)を明正だと思ってみていたとき、息子が出てきて「おお、明正の息子は明正に似ているな」と思ったんです。真相はその明正は替え玉良樹だったわけで‥
明正の奥さんは目鼻立ちもくっきりされているので、奥さんに似たんだと言われればそうかもしれませんけど。
明正の息子はやたらとカメラ目線でいる時間があるので、より印象的でした。もうひとつ、くだらないとは思いますけど明正がカメラ前に一瞬持ち込んだ、折り紙が気になったんです。
いわゆる「ぱっくんちょ」というんですかね。花のような形で指を裏から差し込んでパクパクやるやつです。あれ一般的には四角形・花弁が4枚のものだと思うんですが、明正の息子が持ち込んだのはより複雑な形のパックンチョでした。

星の頂点の数が8つのもの。八芒星っていうんですかね。めずらしい形だなぁと思って意味を調べてみました。
八芒星とは完全性や再生、無限の循環などを象徴する八角形の図形です。
再生・循環。矢代が行った「四十九日の裁き」、四十九日は輪廻転生のためのプロセス‥ちょっと考えすぎですかね。
「四十九日の裁き」が行われたのは2003年~2006年の間です。明正の息子の年齢は明らかにされていませんが、小学校高学年くらいでしょうか。少なくとも儀式より後に生まれた存在であることは間違いありませんが、それだけではなんとも言えませんね。
ちなみに明正の家(札幌)には、六芒星の鉄製の鍋敷き?も壁にかかっています。明正の実家の引きこもり部屋の写真にも、六芒星が写っていました。六芒星の意味は、魔除けだそうです。
明正は何かしたのか
明正は、ただ呪われた飯沼父の一家心中に巻き込まれただけだったのでしょうか?これは、悩みましたが謎のままです。
第4話最後のスタッフとのやり取りが気になりますね。明度を上げた写真を見せられ、六芒星や祭壇?のようなものと一緒に当時の明正が写されています。これを見たスタッフは、「オカルトにハマってたんですか?」と明正に問いかけますが、目を泳がせるだけで返答はしませんでした。
明正がオカルトにハマっていたとすると、何が起きるでしょうか。
オカルトと聞くと、まずは矢代の儀式との関連を疑いますが、そこを結びつける何かが見えてきません。「影の行列」の最中、確かに明正はあの家にいたはずですから、儀式を見ていた・聞いていたかもしれません。行われたことについて調べることもできたでしょう。
また、明正は自身の?ビデオカメラで様子のおかしい家族を撮影していました。
実は「影の行列」ではなく明正が何かを行うことで呪いが成立したのか?と思ったりもしましたが、儀式直後の写真ですでに呪われていましたので、その説はなさそうです。
では飯沼一家の心霊スポット巡りに関わっている?ですがあの映像の中に明正は存在せず、常に番組に出演した偽一家のうちの一人がカメラを回していました。
では、火事はどうでしょうか。
「影の行列」は、良樹の例を見ると、魂を奪うものであっても、現世の生命が奪われるのかはいまいち判然としません。飯沼一家(3人)についても、最終的には火事で命を落としているのであり、呪いが直接の死因ではありません(火事が呪いの結果であれば間接的にはそうですが)。
呪われた家族の様子をつぶさに観察していた明正が、火事を引き起こした?あまりオカルトにハマっているかどうかは関係ない上に、それを指し示すものはあまりありません。明正が火事から助かっているのは一つありますが、新聞記事には「救急搬送された」とありますから、少なくとも家に火をつけて逃げたとかではないわけです。
明正には、父・母・妹を呪う動機はあるでしょう。良樹家に毎年りんごを送るのも、自身の呪いに巻き込んでしまった罪の意識だと捉えれば、そうかもしれません。「すみません」という最後の言葉は自分以外の飯沼一家への謝罪なのでしょうか?
真相はどこに‥
おわりに
個人的には、矢代は実は何もしておらず(呪いは成立しておらず)、明正が正しい呪いをかけたという説を推したいですが、それを示す確固たるものは何もありません。もしかしたら、最後に放火しただけなのかもしれません。
前回のように、また追加の話があれば答え合わせができるかもしれませんが、今回は表のストーリーも第4話で完結しているような気もするので、これで終わりなんですかね!
長々書いたんですけど、結局全部謎のままですね(笑)
今回も楽しませてもらいました。
ありがとうございました。