他の国の五輪代表争いを遠くから眺める（その１：アメリカ／ノルウェー）
世の中は夏のパリ五輪に沸いている時期ですが、カーリングをはじめとする冬季スポーツの世界では、ミラノ・コルティナ五輪の🇯🇵日本代表争いが本格化しているのではないでしょうか。カーリングでは、今季の4人制日本選手権および日本ミックスダブルス選手権で五輪代表候補が絞られ、複数の候補がある場合には2025年9月末までに行われる五輪代表候補決定戦で代表候補が決まることになります。
現時点で五輪出場が確実なのは開催国の🇮🇹イタリアだけなので、今後、他の国も五輪出場権をかけて世界選手権、そして、その後の世界最終予選を戦うわけですが、同時にどの国でも国内の五輪代表争いが進行していきます。選考方法は国によって少しずつ違うため、どの国のチームかによって、どの大会が大事なのか、どの時点での世界ランキングが重要なのかにも、少しずつ差があります。
ここでは、各国協会のウェブサイトに情報が公開されていた🇺🇸アメリカと🇳🇴ノルウェーの五輪代表選考方法をまとめてみました。（この時期になると、Noteさんから“1ヶ月に1本ぐらいは書こうね”と催促されるので…）
🇺🇸アメリカ合衆国の場合：特定の大会の結果重視
まず、ミラノ・コルティナ五輪に向けてのアメリカ代表は、このように選ばれます。
MD五輪代表候補：2025年2月のMDアメリカ選手権で決定
順番的に先に決まるのは、ミックスダブルスのアメリカ代表です。2025年2月17〜23日にコロラド州ラファイエットで行われるミックスダブルスアメリカ選手権を五輪代表決定戦とみなして、その優勝チームが五輪代表候補となります。
大会に参加するのは10組のペアで、現時点で出場権を持っているのが2024年MDアメリカ選手権の上位3組（ハミルトン／ハミルトン、ティーシー／ドロプキン、ゲヴィング／シュスター）で、残りの7組は、すでに出場権を持っているペアを除き…
五輪代表決定戦出場ペア決定戦（8月8日〜11日）の上位4組
コロラド・カップ（9月27〜29日）の最上位ペア1組
五輪代表決定戦最終予選（11月15〜17日）の最上位ペア1組
2025年1月14日時点でのMD今季獲得ポイント最上位ペア1組
となります。
この中でも枠の多い「五輪代表決定戦出場ペア決定戦」への出場にも条件が設けられており、以下のいずれかに当てはまる必要があります。
2024年5月1日時点の4人制世界ランキングで50位以内のチーム（男女3チームずつが該当）の選手を1人以上含む
2024年5月1日時点のMD世界ランキングで75位以上のペア（出場権のないペアでは、5組が該当）
2024年MDアメリカ選手権で上半分の順位だったペア（上の条件で出場権を得られないペアでは、2組が該当）
日本の強化委員会推薦のように4人制の上位選手にもチャンスを与えるという意味合いが強い大会なのかと思います。複数の条件を満たしているペアも含め、10組がこの出場ペア決定戦に出場予定です。ここで上位4組に残れなかった場合には、コロラド・カップなどの他の大会で優勝するなどして、五輪代表決定戦への出場権を獲得する必要があります。
4人制五輪代表候補：2025年11月に代表決定戦を実施
一方で、男女4人制の五輪代表候補は、2025年11月11〜16日にサウスダコタ州スーフォールズで行われる五輪代表候補決定戦で、五輪代表が決まります。参加できるのは男女4チームずつです。
2024年アメリカ選手権を優勝して、2024年世界選手権で6位以上に入ったチーム（男子：シュスター、女子：該当なし）
2025年アメリカ選手権を優勝して、2025年世界選手権で6位以上に入ったチーム
2025年5月1日時点の世界ランキング国内最上位チーム（すでに出場権を持つチームを除く。世界選手権の結果で該当チームがない場合は、同じ世界ランキングで穴埋めをする。）
2025年9月に開催予定の代表決定戦最終予選の優勝チーム（2025年5月1日時点に世界ランキング100位以上のチームにのみ出場権あり）
現時点では、前回のアメリカ選手権に優勝したチームでも、男子世界選手権で6位に入った🇺🇸シュスターには代表決定戦の出場権があり、女子世界選手権で7位だった🇺🇸ピーターソンには出場権がないという状況です。MDと比べると、少数精鋭から選ぶ選考基準だという印象です。
🇳🇴ノルウェーの場合：シーズンを通しての結果重視
次に、ミラノ・コルティナ五輪に向けてのノルウェー代表は、このように選ばれます。
4人制もMDも世界選手権代表になれば五輪代表が近づく
ノルウェーの五輪代表争いは、男子・女子・MDともに基本的に同じ選考基準が適用され、もう少しシンプルな感じです。
2024年と2025年の世界選手権に出場するチームが…
同じ場合には、そのチームが五輪代表候補に決定
違う場合には、2025年秋に行われる４戦先勝の代表決定戦で決定（世界選手権の結果が良い方のチームには、1勝のアドバンテージ）
簡単に書けば、これだけです。2024年の世界選手権はすでに終わっていますので、女子の🇳🇴ルルヴィク、男子の🇳🇴ラムスフィエル、MDの🇳🇴スカスリエン／ネドレゴッテンが一歩リードしており、他のチームが五輪出場を目指すには2025年の世界選手権に出場しなくてはいけないことになります。
今季4大会のポイントから決まる世界選手権代表
その世界選手権代表争いは、昨季と似た以下のようなシステムで決まります。
今季4大会分の合計ポイントの多いチームが世界選手権代表
それぞれの期限日までの大会が対象（女子：2月10日、男子：2月25日、MD：3月17日）
シーズン前半のポイントは獲得ポイントの80％、それ以降は100％が加算される（100％加算されるのは、男女4人制は欧州選手権以降に獲得したポイントから、MDは12月17日以降に獲得したポイントから）
4人制の欧州選手権で獲得したポイントは加算されない。（欧州選手権代表は過去の実績から協会が選定）
シーズン前半の結果よりも後半の結果を重視するのが、面白い重みづけの仕方だと思います。
ノルウェー代表争いの対抗馬は？
世界ランキングや年間の獲得ポイントを重視する方式だと、代表となる可能性のあるチームはある程度限られてくるかと思います。
4人制は前回の世界ジュニア出場チームが対抗馬になりそうで、男子は優勝した🇳🇴ホスマリゲン、女子は3位になった🇳🇴ビョルンスタが、最有力の対抗馬と言えるでしょう。この2チームには、2020年ユース五輪ミックス4で優勝したメンバーが含まれていて、🇯🇵日本（前田・田畑・中原・小林）が決勝で負けた相手です。選手の年齢についてはハッキリわかりませんが、ジュニアの年齢を超えて、一般の大会への出場を増やすようなタイミングであれば、昨季よりも接ったポイント勝負になるかもしれません。
一方で、ミックスダブルスでは、今季開始時の世界ランキングが2位で、2024年MD世界選手権銅メダルの🇳🇴スカスリエン／ネドレゴッテンの他にも、同7位で、2023年ミックスダブルス世界選手権銅メダルの🇳🇴ルンニン／ブレンドゥンがおり、2チームが協会から強化指定されている状態です。今季もこの2つのペアが中心となって、ノルウェー代表という1つの席を争うことになりそうです。女子の選手が4人制の同じチームに在籍していることもあり、片方のペアの出られる大会には、だいたいもう片方のペアも出場できます。今年もすでに🇪🇪タリンでの大会に両ペアがエントリーしていますし、今季もバチバチの代表争いになるでしょう。
🇳🇴ノルウェーのMD以外はまだ出場できるか不透明
両国の五輪代表争いの状況は以上の通りですが、当然ながら、国として出場権を獲得しなければなりません。出場権争いは、まずは、2024年と2025年の世界選手権で獲得できる五輪ポイントの合計で、開催国🇮🇹イタリアを含む上位8カ国に入ることを目指します。（残り2チームは最終予選で決定）
2024年の世界選手権で獲得した五輪ポイントをおさらいすると、女子は🇺🇸アメリカが７ポイント（暫定7位）、🇳🇴ノルウェーが５ポイント（暫定9位）と、十分可能性のあるポイントですが、安心できるポイントではありません。男子は🇺🇸アメリカが８ポイント（暫定6位）、🇳🇴ノルウェーが４ポイント（暫定10位）と、こちらも似たような感じで、余裕があるようには見えず、次の世界選手権では（当然ながら）1つでも上の順位を目指すでしょう。
ミックスダブルスについては、以前「2大会合計で28p」ぐらいが五輪出場ラインになるのではないかという記事を書きました。
現時点での五輪ポイントは、🇳🇴ノルウェーが20ポイント（暫定3位）、🇺🇸アメリカが11ポイント（暫定11位）となっています。🇳🇴ノルウェーは次のMD世界選手権では20チーム中13位でも合計28ポイントに到達しますし、前述のように世界ランキングTOP10に2チームが入っていることを考えると、ノルウェーがMDで五輪に出場する可能性はかなり高そうだと思います。🇺🇸アメリカも次の大会でプレーオフ出場すれば合計27p以上なので、十分現実的な条件が残っているとは思います。こう考えると、すでに五輪出場が厳しいカテゴリーはありませんが、出場濃厚と言えるのは🇳🇴ノルウェーのMDぐらいで、2025年世界選手権に出場するチームは、国内の五輪代表候補に前進することになりますが、最初に「出場権獲得」という大仕事が待っていることになりそうです。
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