今週はミックスダブルスの話をしようか〜24-25第9週プレビュー
今週は、カナダの上位チームが1つの大会(PointsBet インビテーショナル)に集まっていることもあり、日本の4人制チームでは“今週は大会出場なし”とするチームが多いです。一方で、ミックスダブルス(MD)では、“MD界のグランドスラム”ことMDスーパーシリーズの第2戦がカナダ西部のブリティッシュコロンビア州で行われますし、アメリカやカナダ東部でも大きめの大会が行われます。日頃は4人制を中心に選手の様子を気にしている人も、今週は少しミックスダブルスに関心を向けてみてはいかがでしょう?
ちなみに、トップ画像は、自分が撮った写真の中で、先週優勝した🇪🇪カルドベー/リルの写真を探してみましたが、写り込んでいる他の選手もだいぶ豪華になりました…🇨🇦🇮🇹
MDスーパーシリーズ第2戦@バーノン(小穴/青木、松村/谷田)
14大会目のMDスーパーシリーズ
2022年に始まったMDスーパーシリーズも今大会で14大会目を迎えます。日本のペアも松村/谷田が2022年から、小穴/青木が2023年から参戦しています。昨季はともに優勝を経験しています。先週の振り返りでも少し触れましたが、優勝回数が最も多いのが🇪🇪カルドベー/リルで、決勝出場4回で優勝4回と決勝で負けなし。それに次ぐのが、🇯🇵小穴/青木と🇨🇦マーティン/グリフィス(すでにペア解消)の2組で、ともに2回の決勝進出で2回の優勝を果たしています。🇯🇵松村/谷田はそれに次ぐ優勝1回のペアの1つです。
一方で、決勝進出の回数が1番多いのが🇨🇦ウォーカー/マイヤーズなのですが、5回出た決勝ではまだ1度も優勝できていません。2番目に多いのが、前述の🇪🇪カルドベー/リルで決勝4回で、それに次ぐのが🇯🇵松村/谷田の3回です。優勝できなかった2回の相手は、ともに🇯🇵小穴/青木でした。
日本の2つのペアの違いとは?
🇯🇵小穴/青木と🇯🇵松村/谷田は違った特徴を持つペアです。最大の違いは、1投目と5投目を男性選手(青木豪選手)が投げるか、女性選手(松村千秋選手)が投げるかで、世界のトップチームの多くでは女性選手が1投目と5投目を投げるのが一般的です。2週間前に🇯🇵小穴/青木が出場した🇪🇪タリンでの大会では、🇵🇱ポーランドや🇳🇴ノルウェーのペアも男性選手が1投目と5投目を投げていましたが、18ペアのうち、3ペアだけだったかと思います。
MDだと、“1投目と5投目を投げる選手は、ドローが上手ければ大丈夫”みたいな話もありますが、5投目に強いテイクアウトが投げられないと、ピンチの時に失点を減らすのが難しくなりますし、石がたまりがちなMDでは、相手の石を複数動かせれば自分たちの複数点につながることも少なくないため、“ドローは得意だけど…”という感じだと、世界の頂点を目指すようなレベルでは通用しないような気がしています。世界選手権や五輪のMDで、女子4人制のバックエンドの選手が5投目を投げて好成績を残しているのも、(単純に上手という話もありますが)これが理由の1つかと思っています。男子選手の中ですらテイクアウトショットに定評のある青木選手が、女子選手に混ざって5投目を投げるのが効果的なのも、この辺りに理由がありそうですが、男子選手に混ざって2〜4投目を投げる小穴選手が男子選手に引けを取らないぐらいのパフォーマンスを見せられるからこそ、青木選手に5投目を投げさせても問題なく戦えるという面はあるのでしょう。ただ、どちらがスイープをするのかは、2〜4投目が男性のチームとは少し違いそうで、その分、スイーパーの後ろからのラインコールでうまく対応しているのかと思います。
プレースタイルは、🇯🇵松村/谷田の方が石をためるショットが多いイメージで、攻撃的に分類されるのかと思いますし、“正統派MD専門ペア”という感じがしています。一方、🇯🇵小穴/青木は、相手の石をちゃんと出していくタイプで、相対的には守備的なのかと思いますし、投げる順番も含めて、割と“独自路線”のペアなのかと思います。また、MDで世界の頂点を目指そうとすると、日頃4人制を中心に活動している選手も日本選手権や世界選手権に出場してきますので、そういうチームとの戦いにも勝たないといけません。4人制中心の選手がMDの試合に出場する時には、その2人の選手の特徴にもよりますが、MDらしい攻撃的なスタイルを取り入れるよりは、4人制と似たようなバランスの組み立てになって、テイクアウトが多めの守備的な戦い方が多いような気がしていています。
今季の初戦@カルガリーでは日本の両ペアの対戦はなく、結果はともにベスト4でしたが、11月の第3戦まではどちらのペアも出場予定のようです。両ペアともミックスダブルス日本選手権時点でのランキング国内最上位(MD日本選手権で3位になれば五輪MD代表決定戦に出場できる)を目指していると思われ、今週の成績を含め、12月まで両ペアの成績が気になるところです。
今週は🇳🇴スカスリエン/ネドレゴッテンが参戦
先週と比べてみると、プレーオフ進出6組のうち、4組は今週も参戦します。🇯🇵小穴/青木、🇯🇵松村/谷田に加えて、先週優勝した🇪🇪カルドベー/リルと、長年欧州でMDの頂点を争ってきた🇨🇭ペレ/リオスです。今週はそこに“長年欧州でMDの頂点を争ってきた”もう1つのペア、🇳🇴スカスリエン/ネドレゴッテンが出場し、予選で🇯🇵松村/谷田や🇩🇪アッベス/ハーシュと同じ組に入ります。🇯🇵松村/谷田は難しい組に入ったという印象で、昨年もブリティッシュコロンビア州でのMDスーパーシリーズには苦戦していましたが、予選通過は十分に期待できそうです。🇯🇵小穴/青木と同じ組には、五輪出場経験を持つ🇦🇺ギル/ヒューイットや地元ブリティッシュコロンビア州の🇨🇦ボウルズ/ミドルトンが入っています。SFMは先週の6.0には及びませんが、5.0になる見込みです。また、来月末にブリティッシュコロンビア州アボッツフォードで行われるカナダMD五輪トライアル予選会にエントリーしているペアでは、小穴/青木が対戦する🇨🇦ジャスト/チャーピンやU25 NextGen MDでベスト8だった🇨🇦ラニセス/クロフがこの大会にも出場します。
マーテンズヴィル SaskTour シリーズ(KiTカーリングクラブ)
今週、日本のチームで一般の4人制の大会に唯一出場するのがKiTカーリングクラブで、出場するのがサスカチュワン州で開催される「マーテンズヴィル SaskTour シリーズ」(SFM2.0)です。出場する19チームの多くはサスカチュワン州のチームですが、州内で開催された大会でのポイント上位3チームが男子のサスカチュワン州選手権に出場できるというルールがあり、この大会が今季ある7大会のうちの1大会目なので、州内からチームが集まっているものと思われます。ただし、前回の州選手権で決勝を戦った🇨🇦マキューウェン(今年はすでにカナダ選手権出場権獲得)と🇨🇦クライターは、PointsBetインビテーショナルに出場しており、この大会には出場しません。
KiTカーリングクラブにとっては、4連戦の2大会目となります。4戦目の「Stu Sells トロント」が一番レベルの高い大会ですが、そこまでにいろいろな地域のカーリング場を転戦して、パフォーマンスや対応力を上げていくのでしょう。気になる対戦相手としては、一昨年の州王者である🇨🇦ナップや、2週間前に🇯🇵TM軽井沢や🇯🇵ロコ・ドラーゴを大会のプレーオフで下している🇨🇦カルソフがいます。
ラリー・ジョーンズ・ジュニア・クラシック(札幌国際大チーム三浦)
先週は一般の大会でベスト4まで残った🇯🇵札幌国際大チーム三浦ですが、今週は再びジュニアの大会に出場します。この大会も昨年優勝している大会です。開催地であるマニトバ州に加えて、隣接する北オンタリオやサスカチュワン州からジュニアの選手が参加しており、そこに混ざって連覇を狙います。ラリー・ジョーンズさんとは、“史上最高の女子カーリング選手”とも呼ばれるジェニファー・ジョーンズ選手のお父さんで、2019年に80歳で亡くなられています。
その他の大会
🇨🇦PointsBet インビテーショナル(SFM男女とも4.0…のはず)
毎年この時期に行われるシングルノックアウト方式の大会で、カナダの国内ランキング上位、および、大学、カレッジ、ジュニア、クラブなどのカテゴリーの国内チャンピオンが参加する、招待制の大会です。“シングルノックアウト”というと特別な方式のように見えるかもしれませんが、“1回負けたら終わり”のよくあるトーナメントなのですが、カーリングの大会で採用されるのは珍しいです。また、10エンドまで試合をやるのも、普通のツアー大会とは異なります。
男女16チームずつがシード順に配置されるので、最初の2日間はシード順の近い中堅同士の対戦が試合としては面白く、一方で、若いチームやツアー大会に参加しないチームでも、トップチームと対戦できる機会になります。そして、今回は前回の女子カナダ選手権と同じ会場を使っていますが、アリーナアイスでのカーリングを体験できる貴重な機会にもなります。また、グランドスラムと同じぐらいの賞金総額(今回は17万5000カナダドル)の大会で、1つ勝つごとに賞金が上がっていきます。全参加チームに5,000ドルずつ支給されるところから始まり、初戦に勝つと+3,000ドル、準々決勝に勝つと+6,000ドル、準決勝に勝つと+12,000ドル、決勝に勝つと+24,000ドルとなり、足し合わせていくと、優勝チームは合計50,000ドルの賞金を受け取ることになります。
ただし、賞金はもらえるのですが、ポイントは増やしづらい大会です。シングルノックアウトは、SFMが25%下がるので、SFMは4.0(現時点でCurilng Zoneは5.5となっていますが…)となり、さらに16チームのうち、予選通過扱いになるのが4チームだけ(通常は8チーム)となります。つまり、他の12チームには10ポイントも入らないので、ポイントを稼ぐ大会という感じではありません。
🇺🇸コロラド・カップ
🇺🇸コロラド州ラファイエットで行われるMDの大会で、30ペアが出場して行われます。この大会は来年2月に行われる🇺🇸MD五輪トライアルの予選会にもなっており、まだ出場権を持っていないアメリカのMDペアにとっては、とても大切な大会です。カナダのペアが2組、すでに出場権を得ているペアも6組出場しているので、残りの22組の中で最上位になれば、来年2月の🇺🇸MD五輪トライアルに出場できます。まずは、5チームずつ6組の予選で上位12ペアに残るところからです。
🇨🇦Dixie MDカップ
中東部のオンタリオ州ミシサガでも、今週はMDの大会があります。参加ペアには、世界的に有名な選手は少ないですが、カナダ国内のMDの大会では、よく見る名前が散見されます。カナダの場合には、国内のMDランキングがあり、そのランキングによっても年末のMD五輪代表決定戦に出場できるので、そちらの道でもなるべく上にあがっておきたいところでしょう。
🇪🇪タリン・メンズ・チャレンジャー(SFM2.0)
欧州の男子4人制チームで、カナダ遠征を行わない、欧州選手権Bに出場するぐらいのチームが集まっているのが、この大会です。前回世界ジュニア優勝の🇳🇴ホストマリンゲン、スウェーデンの国内2位🇸🇪ニーマン、前回スイス選手権準優勝🇨🇭シュニーダーあたりのチームがランキングは高いですが、🇵🇱スティフ、🇪🇸ヴェス、🇩🇰シュミット、🇪🇪ヴェルツマン、🇱🇻トゥルクサンなど、11月中旬の欧州B選手権に出場するとみられる各国代表チームも気になります。ちなみにこの大会に出場する🇨🇭L.ブルナーは、軽井沢国際に来る🇨🇭M.ブルナーとは別チームです。
🇨🇿プラハ・レディース・インターナショナル(SFM1.5)
上の大会の女性版のような感じなのが、この大会です。欧州選手権Aに出場するであろう🇹🇷ユルデュズ、🇭🇺カロチャイ=ヴァン・ドルプ、🇱🇹ポーロースカイテに、欧州選手権Bに出場するであろう🇩🇪メッセンツェール、🇨🇿パウロヴァー、🇦🇹フルーグラー、🇳🇱ボマスが出場しています。その中に、前回世界ジュニア選手権のカナダ代表だった🇨🇦プレットが混ざっているのが、なかなか興味深いです。