カナダMD五輪トライアルと日本のチームのグランドスラム初戦:2024-25シーズンのスケジュールを見る①
各チームが着々と2024-25シーズンの準備を始めている様子がSNSなどから伝わってくる今日この頃。ミラノ・コルティナ五輪が近づくにつれて、世界レベルでも各国レベルでも五輪のための大会が増え、そのスケジュールに合わせた活動が各チームに求められると推測されます。この記事では、その中でもスケジュールに大きな影響を与えていそうな“カナダMD五輪トライアル”(代表決定戦)を取り上げ、その影響を加味した上で日本のチームがグランドスラム初戦「ツアーチャレンジ」にどのぐらい参加できそうかを考えてみました。
カナダMD五輪トライアルとは?
2026年のオリンピックでは、カナダ五輪代表の選び方が大きく変わります。特に大きな変化は、4人制代表とMD代表を兼任できるということ。そして、それのために考えられたのが、2026年2月の五輪に向けて、1年以上前の2025年1月にカナダMD五輪代表を決めるという今回のスケジュールです。2025年1月にカナダMD五輪代表を決めるメリットには
以前のように直前の2026年1月にMD五輪代表を決めるよりも、休養や回復の時間を確保できる。
MD五輪代表が決まった後に、2025年11月にある4人制五輪トライアルに向けて活動する時間が取れる。
MD五輪代表が五輪前最後のMD世界選手権(2025年4月)に出場して国際経験を確実に積むことができる。また、MDでのオリンピック出場権のための五輪ポイントの獲得を、MD五輪代表に任せることができる。1月に行うことで、MD世界選手権の準備にも3ヶ月かけられる。
などがあり、十分な利点のある仕組みに見えます。
MDトライアルの出場ペア決定方法
このカナダMD五輪トライアルには16ペアが出場します。内訳は以下の通りです。
2024カナダMD選手権メダリストペア 3組(🥇ロット/ロット、🥈ウォーカー/マイヤーズ、🥉ピーターマン/ギャラント)
まだ出場権を持っていないペアのうち、23-24シーズン後の国内ランキング(CMDR)上位ペア2組(マーティン/レイコック、ジョーンズ/レイング?)
まだ出場権を持っていないペアのうち、2024年秋の予選会優勝ペア3組
まだ出場権を持っていないペアのうち、2024年12月9日時点での国内ランキング(CMDR)上位ペア8組
スケジュールに与える影響
ここで全体のスケジュールに影響を与えそうなのが、“2024年秋の予選会優勝ペア3組”の部分。つまり、予選会を3回開催しないといけません。
Curling Zone にはすでに日程が掲載されています。
第1回:10/31-11/3(第14週) アボッツフォード(ブリティッシュコロンビア州)
第2回:11/21-24(第17週) ゲルフ(オンタリオ州)
第3回:12/5-8(第19週) キャンモア/バンフ(アルバータ州)
そして
12/30-1/4(第23週)のカナダMD五輪トライアルに挑みます。
この日程の影響を受けたと思われるのが、男女4人制のグランドスラムです。元々、PCCCや欧州選手権のある週は避けて行われていたグランドスラムですが、この予選会もカナダの五輪代表選考に直結する大会なので、同じ週にやる訳にはいかないのでしょう。
最終的には、PCCC開催中の第14週や欧州選手権開催中の第17週にもカナダMD五輪トライアル予選会を行うことになりました。そして、その余波なのか、グランドスラム初戦は去年より3週間も早く行われ、12月1日までにグランドスラム3大会を終わらせて、12月のそれ以降はMD五輪トライアルの準備に当てられるグランドスラムのない月という感じになりました。
グランドスラム「ツアーチャレンジ」の出場は欧州勢が有利?
グランドスラムの出場チームは通常基準日における世界ランキングによって決まりますが、去年は各大会の5週間前の大会後の成績まで加味されていました。もし、同様のルールで出場チームが決まるとすると、第10週に行われるグランドスラム初戦「ツアーチャレンジ」の出場チームは、第5週の大会の結果まで加味した世界ランキングで決まります。
ただ、第5週というのは、9月1日までに終わった大会しか加味されないということで、タイミングとしてはかなり早いと言えるでしょう。日本では、女子のアルゴグラフィックスカップがある週で、カナダ遠征に行っていないチームも多そうな状況。ヨーロッパでは男子で3大会、女子で2大会、大きな大会があるので、第5週までにポイントを積み重ねることもできそう。一方で、カナダでは第5週に中規模の大会がいくつかあるだけで、最大2大会分までポイントが加算できるにも関わらず、1大会しか出場できないという状況になりそうです。チームによっては、他の地域の大会に出て少しでもランキングを上げようとするかもしれません。(グランドスラム側がチーム選定を遅らせる可能性もあるかなとは思っています。)
特に今年のグランドスラムは初戦が「ツアーチャレンジ」という(Tier1とTier2を合わせて)32チームが出場する大会なので、16位に入るかどうかを争うとともに、32位に入るかどうかも争うことになります。基準日までにランキングを上げたいチームは多そうですが、そういうチームがどういう大会でポイントを伸ばそうとするのか、または昨季のポイント上位がそのまま出場する形になるのか、各チームからの発表やCurling Zoneでの情報の更新が楽しみです。
日本からは何チームが「ツアーチャレンジ」に出場できそうか
では、日本のチームは「ツアーチャレンジ」に出場できそうなのでしょうか?昨年の「ツアーチャレンジ」には、女子でTier1に1チーム(🇯🇵ロコ・ソラーレ)とTier2に2チーム(🇯🇵中部電力と🇯🇵フォルティウス)、男子でTier1に1チーム(🇯🇵SC軽井沢クラブ)とTier2に1チーム(🇯🇵TM軽井沢)、合計5チームが出場していました。
第5週時点でのポイントは「昨季ポイント100%+今季2大会分のポイント」となる見込みです。女子の場合、昨季ポイントで17位と25p以上離れている12位の🇯🇵ロコ・ソラーレは今のポイントのままでも“出場濃厚”で、北海道ツアーなどで10pでも上乗せできれば、ほぼ出場確実と言えそうです。🇯🇵ロコ・ソラーレには、予選通過以上を期待したいですね。
16位とおよそ19p差の🇯🇵中部電力と26p差の🇯🇵フォルティウスは、相手チームのポイントも伸びることを考えると、Tier1は難しそうですが、32位とは35〜40pの差があるため、Tier2には出場確実と言えそう。グランドスラム2大会目以降の出場を目指すなら、Tier2での上位進出も大きなポイントの加算になるため、Tier2で昨年のベスト4を超える成績を期待したいです。
さらに、シーズン開始時で29位の🇯🇵SC軽井沢クラブ女子と30位の🇯🇵北海道銀行にもTier2出場の可能性があるのが、楽しみなところ。北海道ツアーなどでうまくポイントを積み重ね、33位との12〜15p差を詰められなければ、Tier2に出場ができそうです。競争相手がカナダのチームになりそうで、前述の理由からカナダ勢がポイントを伸ばしづらいと考えると、十分に可能性があると思います。
一方男子は、🇯🇵TM軽井沢と🇯🇵SC軽井沢クラブに可能性がありそうです。16位と13p差の19位🇯🇵TM軽井沢にとって、Tier1出場は十分射程圏内ではありますが、16位争いの競争相手が欧州のチームになりそう。北海道ツアーよりもポイントが稼ぎやすい欧州の大会に出ているチームとのポイント差を詰めるのは、決して簡単ではないため、去年準優勝だったTier2でもう1つ上の順位を目指すことになるかもしれません。一方で、🇯🇵SC軽井沢クラブは、30位での今季スタートとなりそうで、33位とは16p離れているため、Tier2に出場できる可能性はかなり高いと思われます。SC軽井沢も今後のグランドスラム出場を狙うなら、Tier2含め、それぞれの大会で上位進出して、各大会で大きめのポイントを獲得できるのが理想的でしょう。
という訳で、期待も込めて、今年の「ツアーチャレンジ」では、出場32チーム中7チームが日本のチームになれば、個人的にはうれしいです。Tier2もグランドスラムの登竜門として、今後のステップアップに活用できれば良いと思います。