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さよなら、ページ方式。〜2024年4人制日本選手権の競技方式について思うこと

前回、4人制のチーム選考について、Noteを書いてみましたが、今度は競技方式、つまり、リーグやプレーオフの方式について、思ったことや調べてみたことをまとめてみました。

新旧の競技方式を比べてみる

チーム数の増加と試合数の減少

最初に、これまでの競技方式をおさらいしておくと、こんな感じでした。

表1:2023年日本選手権で採用された競技方式(数字は試合数)

これが下のように変化します。チーム数こそ増えます(9→10)が、全体の試合数は40試合から31試合に少なくなります。

表2:2024年日本選手権で採用される予定の競技方式(数字は試合数)

1チーム当たりの試合数を考えると、以前は…
最多なのが、ページ方式の準決勝から決勝進出した場合の11試合
最少なのが、予選敗退の8試合(5チーム)

そして、新しい競技方式だと…
最多なのが、2次予選2位・3位から決勝進出した場合の9試合
2次予選に進出すれば、7試合
最少なのが、1次予選敗退の4試合(4チーム)

1つ、良い面としては、試合数が減って、運営側も選手側も負担が軽くなる部分はあるのかと想像します。反対に、「7日で最低12試合を戦わないといけない世界選手権に出るチームを選ぶのに、最大9試合で良いのかな?」という気はします。むやみに過密日程にすべきではないでしょうけれども。

すでに気になる一次予選の組み合わせ

一次予選は、2組に分けて行われることになりました。試合数を数えたところでも察しがついたかと思いますが、参加チーム数を増やす時には、予選を2組に分けるのは、よくある対処法です。下でご紹介したカナダの事例でも、そうでした。

今後は、優勝・準優勝枠はもちろん、世界ランキング枠の3チームも先に決まりますし、出場チーム同士でも当たる/当たらないができてしまうので、一次予選のカードがどうなるのか考えるのが、楽しくなるかもしれません。

詳しい組み合わせの決め方が発表されていませんが…
・前回優勝チームと前回準優勝チームは別の組
・世界ランキング枠の1位・3位チームは、前回準優勝チームの組
・世界ランキング枠の2位チームは、前回優勝チームの組
となるのが自然なのかなと。そこに残りのブロック代表5チームがランダムに入るとして、前の記事で推定したシーズン開幕時の順位のままでランキング判定日を迎えると仮定すると、すでにこんな組分け表ができます。

現時点での推定世界ランキングを元に
勝手に考えた日本選手権組分け表

女子は、特に上位2チームは今の順位で決定だと思っていますが、片方の組では北海道頂上対決とも言える対戦が一次予選から見られそうですし、もう片方でも去年の準決勝と同じ長野頂上対決が見られます。3位がどこになるのかはまったく未知数ですが、3位争いをしたチームがブロック代表で2組の方に入ったりすると、”鬼の2組”が誕生するかもしれません。

反対に、男子は長野勢も北海道勢も分散する感じになりそうです。平昌五輪あたりから追いかけている人にとっては、山口選手だけが残るSC軽井沢という名前のチームが、2次予選で平田選手のチームと戦い、両角兄弟のチームと戦い、清水選手のチームと戦うなんていう組み合わせは、なかなか興味深いのではないかと思います。

この通りにならない可能性も全然あるのですが、今までの“最終的に全チーム当たるし…。”という見方とは、少し変わってきそうです。

二次予選の導入、全チーム総当たり制の廃止

新しく登場した二次予選

そして、一次予選の先には、二次予選が待っています。

(再掲)表2:2024年日本選手権で採用される予定の競技方式(数字は試合数)

最初は少しわかりづらいシステムにも見えます。例えば、上の表を参考にしながら、この問題の答えを考えてみてください。

問題:チームAは、一次予選4試合・二次予選3試合の合計7試合を全勝で通過しました。チームAの二次予選の成績は、何勝何敗でしょう。

これが「5勝0敗」となるのが、この仕組みのやり方です。一次予選から繰り越した2勝+二次予選の3勝ということになります。

このように一次予選を通過したチーム同士の対戦成績だけが、二次予選に引き継がれます。こうすることで、二次予選でもう一度同じ対戦を繰り返す必要がなくなります

それでも、最終成績が6位以上になるチーム同士は必ず一度は対戦する仕組みになっています。上位チームからすると、“自分たちが対戦してもいない別組のチームが優勝した”というようなことにはなりません。それを解消するために、別組の上位3チームと1試合ずつ、合計3試合対戦するのが二次予選ということになります。

また、片方のグループから一次予選を突破した3チームが、そのまま二次予選を通過することもあります。

過去の方式とどう違うのか、そして、どういうシナリオが考えられるのかは、実際に大会が進むにつれて、いろいろと見えてくるのでしょう。

例えば、序盤から安定した成績を残すことが必要になりそうです。一例として、前回日本選手権で女子の部を大いに盛り上げたフィロシーク青森をあげると、前回は1勝2敗から5連勝して、6勝2敗の3位で予選を通過しました。(もちろん、全チーム総当たりの大会だったので、強い相手と先に当たっただけとも言えます。)

ただし、新しいシステムだと、前半4試合が2勝2敗の場合、二次予選を全勝する実力があっても、一次予選を通過できないかもしれません。序盤から気が抜けない戦いになり、一段ずつステップを上がる必要がありそうです。

もう1つ、私が気づいたのは、一次予選通過順位と二次予選に引き継ぐ勝ち星の多さは、必ずしも一致しないということです。

一次予選通過順位と二次予選に引き継ぐ成績が一致しない例

このすぐ上の例がそうですが、“どのチームに勝ったか”によって、1位通過でも二次予選が1勝1敗からのスタートになる場合もあれば、2位通過でも2勝0敗からのスタートになることもあります。

ただ、少し残念な感じがするのは、全チーム総当たりではないので
・“日本選手権であの強いチームと戦いたい!”
・“友達のいるチームと戦いたい!”
・“前回のリベンジがしたい!”
といった希望が叶わないこともあることです。

カナダでのこの競技方式の評判

今回の日本選手権の競技方式は、2018〜2021年(特に2021年)のカナダ選手権と似た競技方式となっています。

10年前の2013年時点では、カナダ選手権も“12チーム総当たり+ページ方式のプレーオフ”というこれまでの日本選手権の方式と似たものでした。2015年からはすべての州・地域が個別のチームを持つようになりましたが、事前に本大会出場が決まるのは成績の良かった11チームで、残りの4つの州・地域は残りの1枠をかけて予選を行っていました。そのため、本大会自体の競技方式は以前と同じでした。

そして、予選を廃止して、全14の州・地域のチームが本大会に出場できるようになったのが2018年で、この年から前回優勝チームとワイルドカードを1チームずつ加えた16チームを2組に分けて予選を行う競技方式が始まりました。そして、各組上位4チームずつがもう1つの組の上位4チームと対戦する今回の二次予選に相当する段階(Championship Pool)を経て、プレーオフで優勝を決めていました。ただし、二次予選に加味されるのが一次予選の全成績であることや、プレーオフが二次予選の順位を基準にしたページ方式である(2021年を除く)ことは、新しい日本選手権の競技方式とは異なります。ワイルドカードが3枠に増えた2021年も含め、4年間はほぼ同じ競技方式でしたが、2022年に現在の方式に変更され、総当たり形式の二次予選は廃止されました。

では、2018年からの4年間に採用された方式に対して、カナダではどのような評判だったのでしょう?(評価には、これまで予選で敗退していた“弱い州・地域”が出場することに対するものも含まれます。)

参加チーム数が16に増えたカナダ選手権の直前の記事(2018年1月)では、チーム数の増加に対して…
「予選なしでやるには、この方式でやるしかない。」(C.キャリー選手)
と受け入れるような声と同時に、
「今後は、強い組・弱い組ができる可能性がある。」(C.キャリー選手)「序盤のプレッシャーが大きくなるのは間違いない。」(S.カーティス選手)
と、これまでと違う展開を予想する声が聞かれました。

その後、この形式で2大会を終えた後のある記事(2019年3月)では…
「かなり良い方式だと思う。この方式でも価値のあるカナダ王者は誕生する。」(B.ジェイコブス選手)
と好意的に評価する選手がいる一方で…
2つの違う大会があるような感じがする。半分のチームと当たらない一次予選があって、その後に、急に強豪だらけの大会になる感じ。前半は力の差がある対戦が多くなるし、後半はどの試合も見たい試合になる。見る側から考えると、私はあまり好きじゃない。」(B.グジュー選手)
と、実際に経験して、その課題を指摘する選手もいました。

さよなら、ページ方式。

私がページ方式を嫌う理由

一次予選から順番に書いてきましたが、次はプレーオフの話です。前回までのプレーオフの方式は、ページ方式と呼ばれるものでした。元々、オーストラリアン・フットボールで1954年から1972年まで使われていたもので、この仕組みを奨励した人の名前から“ページ方式”と呼ばれるようになったそうです。カーリングの世界に入ってきたのは、1995年の男子カナダ選手権が最初だそうで、世界選手権でも2005年から2017年まで使われていました。

私の個人的な考えを言うと、ページ方式は好きではありませんでした。その理由は「大会を通じて、同じ2チームが3試合対戦することがあり、その対戦成績が2勝vs1勝の時に、1勝の方が優勝になる」場合があって、それにいまひとつ納得できないからです。

日本選手権でも「決勝まで全勝で、直接対決も2回勝っているのに、決勝で負けて準優勝」というチームがちらほら登場しています。最近の結果から私が見つけた限りでは、男子だと、2012年青森大会の両角兄弟がいる頃のSC軽井沢クラブ、2018年名寄大会のコンサドーレになる直前のチーム北海道、そして、女子だと、2017年軽井沢大会と2021年稚内大会のロコ・ソラーレです。海外では、去年のカナダ・ブリティッシュコロンビア州の女子州代表決定戦で偶然見かけて、やっぱりモヤっとしました。(どちらかと言えば、決勝で勝った方を応援していたにもかかわらず。)

そういう意味では、“今後はモヤっとしないで済む!”みたいな気持ちも多少はあるのですが、決勝で対戦する2チームの直接対決は2試合に減ってしまいます

余談ですが、まだページ方式だった2016年女子世界選手権で2位に入った🇯🇵ロコ・ソラーレは、優勝したチーム🇨🇭フェルツァーに3回負けています。仮に、そこでロコが2連敗から決勝で1勝返して優勝していたら、本来ならモヤっとするところなのですが…ページ方式が嫌いじゃなかったかもしれないですね。

決勝は1試合でいいのか?

今後は、プレーオフ自体が準決勝1回、決勝1回の2試合だけなのですが、個人的には、決勝の試合数は増えても良いような気がしています。理由は、複数試合やった方が“日本で一番強いチーム”をより正確に選べると思うからです。(最近観戦した韓国選手権の影響かもしれません。)

もし、決勝に残ったチームAとチームBのどちらが強いのかを決めたいなら、10試合でも100試合でも、多くやった方が本当の実力通りの結果になるはずです。当然ながら、そんなことはできませんが、それでも単純に1試合よりも最大3試合か5試合できれば、相対的に弱い方が偶然勝つ可能性は低くなります。

現実的には、どのぐらい試合数をかけて慎重に“日本で一番強いチーム”を選ぶべきかと、それだけの試合数を実施するために必要な負担や日程バランスで決まるのかなと思います。個人的には、現状の日本選手権は、やはり優勝するかどうかがとても重要な大会なので、2〜3戦先勝になるように試合数を増やしたりしても良いかなぁとは思います。私の場合は、単純に面白い試合がもっと見たいだけなのかもしれませんが。細かいことを気にすると、決勝戦が複数試合になると、連勝して日曜の午前中に日本代表が決まってしまうようなパターンもありそうですが、それはテレビ放送的にはイマイチかもしれませんね。

結局、完ぺきな大会方式なんてない

話のオチとしてはまったく平凡で面白くないのですが、やはり絶対的な正解なんてないというのが適切な認識なのかなと思えてしまいます。上で紹介したカナダ選手権に関する1つ目の記事の中でも、
「何かが正しいとか、間違っているとか、ではない。人によって、好みも分かれる。」(K.クーイー選手)
という選手の意見がありました。失敗と成功を繰り返しながら、より良いものを目指して、変更を重ねていくしかないのかもしれません。

ただ、見る側からすれば、上に挙げたように楽しみ方が変わることにはなりそうです。一次予選の組み合わせ発表を、ドキドキしながら確認する。強豪対決になりやすいことから、二次予選に合わせて観戦する時間を確保する。それぞれのファンの方が知恵をしぼって、それぞれの方に合った楽しみ方を見つけていくような気がします。

私のような見ているだけの人からすると、「自分の好きな大会方式でやってほしい」と言うのも悪くはないのでしょうが、同時に、決定された方式の中で楽しみ方を見つけることができるような、そんな柔軟性は持っていたいと思います。

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