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大一番で輝くためのカギとは?〜日本選手権プレビューその2

先日投稿した日本選手権プレビューその1では、今季の成績をまとめて、そこから日本選手権を見る上でのヒントを得ようとしました。実際には、今季の成績と一口に言っても、結果が大事な大会もあれば、いつもと違う4人の組み合わせを試したい大会もあるでしょう。そういう意味では、ここまでの成績だけで日本選手権の展開を語るのは、なかなか難しいでしょう。

このプレビューその2では、それ以外の部分で気になることを書いてみた…のですが、長くなったので、これが中編です。その3は、また後ほど。第42回日本選手権のことを具体的に考えていくために、組み合わせの謎を解き、会期中、自分が意識し続けるであろう3つのキーワードを挙げてみました。


なぜこの組み合わせなのか

まず、最初に、組み合わせの話をしなくてはならないでしょう。昨年は男子のCブロックに、TM軽井沢、札幌国際大、KiT、ドラーゴが共存する形になり、私も正直、なぜあんな組み合わせになったのか理解できませんでした。今回の女子Aブロックも、ロコ・ソラーレ、北海道銀行、中部電力、札幌国際大が入り、同様の「死の組」と言えるでしょう。そこで、どういう仕組みで組み合わせが決まったのか、私が分析してみた結果を書いておきたいと思います。(あくまで私見です)

大事だったのは地方ブロック代表の成績

組み合わせの決定には、前回大会の地方ブロック代表チームの成績が反映されています。詳しいデータは、文末の付録に置いておきますが、その順位に基づいて、以下の方法で分けられています。

(A/C ブロック) 前回準優勝、推薦1位、推薦2位、地方1位、地方5位
(B/D ブロック) 前回優勝、推薦3位、地方2位、地方3位、地方4位

ファンの方の中には、恣意的に決まったのではないかと疑っていた人もいそうですが、この分析が正しければ、その疑惑は払拭されたと言えるでしょう。ただ、機械的に決めたにしても、今の組分けよりは、次の組分けの方が自然に感じます。

(A/C ブロック) 前回準優勝、推薦1位、推薦3位、地方2位、地方4位
(B/D ブロック) 前回優勝、推薦2位、地方1位、地方3位、地方5位

1次予選では2次予選に進めるのが各組3位までですから、前回の成績が1位だった地方ブロックのチームは、前回優勝・準優勝チームや強化委員会推薦チームが2チームの方のブロックに分けるべきだと思います。私の案でも、今回の出場チームなら、グループAは、北海道銀行、ロコ・ソラーレ、フォルティウス、チーム御代田、フィロシーク青森、となるので、いずれにしても、BよりはAの方がきつい組み合わせにはなるかもしれません。

注目したい3つのキーワード

アリーナアイス

今回の日本選手権の特徴といえば、首都圏開催とアリーナアイス競技への影響が大きいのは、もちろんアリーナアイスの方でしょう。アリーナアイスというだけでなく、公式練習までどの選手も使ったことのない氷の上での大会で、観客を入れてどうなるかは、アイスメーカーさんも試したことはないはず。刻一刻と変化していくアイスへの対応は、この大会で好成績を残す上では必須と言っても過言ではありません。

その1の方でもご紹介しましたが、今季は女子5チーム、男子3チームがアリーナアイスでの大会を経験してきています。専用施設とは違うアイスに適応することが大事であると考えれば、女子5チームが複数のアリーナアイスを経験しているのも大きなアドバンテージになり得るでしょう。その中でも、過去にアリーナアイスでの大会に出場した回数が一番多いのは、ほぼ間違いなくロコ・ソラーレで、フォルティウスがその次でしょう。一方で、直前にアリーナアイスでの大会に出たのが、グランドスラム第4戦「マスターズ」に参加し、予選ではどのチームも2勝2敗だったロコ・ソラーレ、北海道銀行、中部電力の3チーム、そして、冬季ワールドユニバーシティゲームズの優勝メンバーでもある札幌国際大の敦賀選手と鈴木選手です。

男子では、その1で挙げた3チーム(コンサドーレ、SC軽井沢、TM軽井沢)以外でも、LOCOSOLARE(ロコ・ドラーゴ)は2022年の世界ジュニアB選手権などでアリーナアイスの経験はあるはず。KiTもチームとしてのアリーナアイスの経験はなくても、2018年の平昌五輪に帯同した平田選手もいますし、「選手としてまったく初めて」ということはなさそう。ただ、そういう意味では、男女の地方ブロック代表チームの中にも、世界ジュニア選手権やユニバーシアードの出場経験者がいます。

競技歴の長い選手が過去の経験をひも解いてアリーナアイスを攻略するのか、または、直近の鮮明な経験がアリーナアイスへの対応に効果的なのか。対応力の差が出るのにおそらく時間はかからず、第1試合目の第1エンドから影響が出る気がしますし、その差を踏まえた作戦選択なども見られそうです。

女子5チームの24-25シーズンのアリーナアイスでの成績

ランバック

ここはランバックというより「ノーティック・ルール」と書く方が適切なのかもしれません。「センターライン上に置かれたガードストーンを、センターライン上から動かしてはいけない」ノーティック・ルールが導入されたのは2022年頃からですから、だいぶ前のことにも感じられます。3年も経てば、選手も慣れているとは思います。

ただ、“ウィック禁止”はルール適用日から禁止ですが、“ウィックが禁止された中で、どういう戦術で戦うのが良いだろう?”という問題の答えはすぐには出ないでしょう。そして、相手の出した答えに対し、また対応を強いられると思えば、「1つ答えが出て終わり」にはなりづらい問題です。

以前よりもセンターガードが残りやすい状況、複数のセンターガードが置かれやすい状況になるので、相手にセンターガード&No.1の石を持たれた場合、または自分たちのセンターガードの裏に相手の強いNo.1を作られた場合の対応は、考えなければなりません。その対策の1つとして、ランバックが投げられる機会は以前より増えたように思います。そして、ランバックというショットの難しさは変わらないまま、その位置付けが“学校で今までは選択科目だったものが、必修科目に変わった”ような印象を受けています。

対応の仕方は、ざっくり2通りあると思います。ランバックの精度を上げるか、ランバック以外の対処法の精度を上げるかです。ただ、あらゆるルール変更が有利に働くチーム/不利に働くチームを生み出すように、ルール変更への対応としてランバックを多用するのに向いた/向かない選手やチームというのはありそうです。例えば、身長が高い(テコが長い)とか、体重が重い(おもりが重い)とかいう選手は、少ない力で速い石を投げることができます。野球のボールを投げる時と似ていると思えば、全力で投げる時よりも、少し力を抜いて投げる時の方が、力むことが減り、コントロールは定まりやすいはずです。

ランバック以外の対処法の一例としては、“ガードをギリギリかわして、投げた石はその場には止まらないけど、相手の石よりは中に残す”ショットが挙げられます。チーム🇨🇦クーイーのT.タルディ選手の動画を参考にすれば、チェース(Chase)という種類のショットです。ランバックほどの速い石は必要なく、スイープを活用しやすいショットですが、ガードとハウスの距離やアイスの曲がり具合から、チェースで対応できる状況かを判断しないといけません。チェースが無理なら、しぶしぶランバックです。

こう書くと、ランバックが得意なチームが単に有利になったように見えるかもしれませんが、そうでもない気がしています。それはランバックの練習を熱心にするチームが増え、ランバックを投げる技術が上達したことで、“ランバックが上手である”ことの優位性が相対的に目減りしたとも捉えられるからです。自分たちにしか決められなかったランバックを、みんな決めてしまうようになれば、自分たちの特技は埋もれてしまいます。

もちろん、“フォースでもいいから1点取る後攻ラストロックのドロー”など、他にも大切なショットはありますが、このタイミングでの日本選手権では、どのぐらいランバックを決められるのか、そして、どのぐらいランバックを相手に強いることができるのかが、勝負の分かれ目になる試合も少なくないと予想しています。

勝ちたい気持ち

日本選手権に優勝したり、オリンピックに出場したりするには、絶対に勝ちたいという強い気持ちが必要です。

…って言うと思いました?

私は、そこを強く意識しすぎるのは逆効果にもなりかねず、一方で、勝ちたいという気持ちだけでは足りないと考えています。

ある意味では、勝ちたいと思うのは当然。その上で、勝つために必要な小さな成功を積み重ねていくこと、そして、それぞれの小さな成功を実現するための方法が必要だと思っています。詳しい説明は、考え方が近そうだと思う下の動画にお任せしたいと思います。

しかし、日本選手権のような大きな大会の前になると、「目標は優勝です」とか、「どうしてもオリンピックに出たいです」とか、そういう発言が選手から多く聞こえてきます。そして、私のようなひねくれ者は「あぁ…このチーム、本当に大丈夫なのかな?」と心配になります。

もちろん、メディアを介して伝わる言葉ですから、リップサービス的な要素もあるかもしれません。難しいことを説明しても仕方ないと思われているかもしれません。優勝とかオリンピックとか言うと、みんなが喜ぶと思ったり、メディアに掲載されやすいと思ったりして、意図的にそう言っているかもしれません。その上で、試合の中では、きちんと自分たちのすべきことがわかっているのかもしれません。

ただ、考え方の習慣として、結果を意識しすぎないことが身についている選手の方が、極限の状態で「優勝できなかったらどうしよう」「オリンピックに行けなかったらどうしよう」という不安が現れても、上手に対処できるのかなと思っています。日頃の習慣って、想像以上に影響大きいと思うんですよね。

ということで、ここではNHKの選手紹介から、「今大会の目標」を、単に“良い結果が欲しい”ではなく、こういう風に捉えているのであれば、期待したいなぁと思った選手を挙げておきたいと思います。

上野 美優 選手:「新たな自分に出会う。優勝」(SC軽井沢クラブ女子

鈴木 夕湖 選手:「がんばる
吉田 知那美 選手:「すっごいがんばる
松澤 弥子選手:「最大限の力を尽くす
ロコ・ソラーレ、吉田 夕梨花 選手と藤澤 五月 選手は、おそらく未記入)

田中 美咲 選手:「一番輝く」(フィロシーク青森

土屋 海 選手:「楽しんでもらえるような良い試合をする
チーム御代田の選手は、他の選手も“全力を尽くす”という主旨の書き方でした)

山口 剛史 選手:「今ここ全力
栁澤 李空 選手:「優勝に相応しいプレーをする
SC軽井沢クラブ男子

その2はここまで。その3の後編へと続きます。

付録:想像される1次予選組み合わせの決め方

(A/C ブロック) 前回準優勝、推薦1、推薦2、ブロック1位、ブロック5位
(B/D ブロック) 前回優勝、推薦3、ブロック2位、ブロック3位、ブロック4位

第41回大会の女子ブロック代表の順位
1位 北海道(北海道銀行、全体2位)
2位 中部(SC軽井沢クラブ Jr.、Aブロック4位、DSC 104.0)
3位 関東(GRANDIR、Bブロック4位、DSC 106.6)
4位 東北(岩手県協会、Bブロック5位、DSC 68.9)
5位 西日本(チーム広島、Aブロック5位、DSC 85.5)
→ 今回第42回大会でAブロックに入るのは、北海道代表(札幌国際大)と西日本代表(チーム大阪)

第41回大会の男子ブロック代表の順位
1位 北海道(LOCOSOLARE、全体3位)
2位 中部(SC軽井沢クラブ Jr.、全体6位)
3位 東北(チーム佐藤、Dブロック4位)
4位 西日本(岡山CA、Cブロック5位、DSC 45.8)
5位 関東(チームTANI、Dブロック5位、DSC 76.6)
→今回第42回大会でCブロックに入るのは、北海道代表(LOCOSOLARE)と関東代表(チームTANI)

前回第41回の組み合わせでも、A/Cブロックに入ったのは、第40回のブロック代表チーム(ワイルドカードは含まない)の中で順位が1位と5位のブロック。女子は、中部代表(SC軽井沢クラブ:全体2位→ SC軽井沢クラブJr.)と西日本代表(チーム広島:全体9位→チーム広島)がAブロック。男子は北海道代表(北見協会:全体2位→LOCOSOLARE)と西日本代表(岡山CA:全体8位→岡山CA)がCブロック。

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