カナディアン・オープンの振り返り
先日行われたグランドスラム第4戦「カナディアン・オープン」ですが、私的見どころについても書かせていただいたので、その振り返りもしておきたいと思います。日本選手権が始まったら、その前のグランドスラムのこととか忘れてしまいそうですし…。
(開催地となったアルバータ州レッドディアに向かう途中で、きっとエアカナダを使った選手も少なからずいるでしょう…ということでこのトップ写真です🛫)
今季初の予選通過を果たした🇯🇵ロコ・ソラーレ
カナディアン・オープンにおける日本のカーリングファンの主な関心事は、やはり🇯🇵ロコ・ソラーレの試合だったでしょう。結果は予選で初戦vs🇺🇸ピーターソン、2戦目vs🇨🇦スターメイと連勝し予選通過に王手をかけましたが、3戦目vs🇨🇭ティリンツォーニには完敗。4戦目vs🇨🇦キャンベルも不利な展開でしたが、相手のミスをとがめて逆転し、3勝1敗で今季グランドスラムで初めて予選通過を決めました。シュートアウト(DSC)の合計スコアは93.0cmと、参加チームの中で8番目でしたが、3勝チームにはスコアの良いチームも多く、6位通過となり、準々決勝の相手が全勝で3位通過した🇨🇦エイナーソンになりました。
🇨🇦エイナーソンとの準々決勝は、予選の勝ち星の差により先攻スタートでしたが、後攻ラストロックで狭いギャップを通されて2点取られた第1エンドも含め、比較的安定した立ち上がりでした。第6エンドに1点を取って同点に追いついたものの、後攻でブランクになった第5エンドには後攻2点のチャンスを逸していたようでした。その後、第7エンドをブランクにされたことで、第8エンドにスチールを狙わなければならなくなりました。先攻ラストロックではガードを置いてドローを投げさせようとするも、リリースが強くなり、反対に自分たちの石の奥まで伸ばそうとしますが、そこまでの強さもなかったことで2つの石がくっついた状態で止まってしまうミスが出ます。K.エイナーソン選手はこの比較的簡単なダブルテイクアウトを決め、🇯🇵ロコ・ソラーレは準々決勝敗退となりました。
当初の予定(🏴パース・マスターズ出場)を変更して出場を決めたカナディアン・オープンでしたが、自分たちが主戦場と呼ぶグランドスラムの舞台で、予選通過という“最低限の目標”はクリアし、今季ではPCCC準優勝に次ぐポイント(30p)を獲得し、また私の知り得た範囲の試合内容を含めて考えても、“落ち込むほど悪い結果ではなく、同時に、満たされるほど好成績ではない”、それなりに有意義な大会になったのではないかと思います。長距離移動による体調への影響はありそうですが、まもなく始まる日本選手権に向けても弾みがついたのではないでしょうか。
気の早い「プレイヤーズ選手権」ボーダー予想
カナディアン・オープンでポイントが欲しかった理由の1つは、今後もグランドスラムに出場し続けるためだという説がありますが、次戦である「プレイヤーズ選手権」は通常よりも少ない男女12チームずつで行われる大会で、その分出場するのも難しいと言えます。カナディアン・オープンを終えて、🇯🇵ロコ・ソラーレはどのぐらい出場に近づいたのでしょう?
プレイヤーズ選手権の出場チームは第33週(3月11日付)のランキングに基づいて選ばれますが、すでに獲得したポイントでこの週のポイントを計算(今季上位8大会のポイント合計のみ)にすると、🇯🇵ロコ・ソラーレは173.5pの10位に位置しています。そして、日本選手権という加点の機会がまだ1回残っています。その上で3チームに抜かれなければ、12位以上に残れます。
仮に🇯🇵ロコ・ソラーレが日本選手権(SFM5.5)で2次予選突破の3位になったとすると、23.375pを獲得し、ポイントを189.38pまで伸ばします。そして、他の大会については、昨季の同じ大会のポイントを基準に考えた上で、この189.38pを超える可能性を感じるチームを3チーム選ぶとすると、次の3チームになります。(括弧内は第33週に換算したポイントおよび順位)
🇨🇦ローズ(167.6p、11位):マニトバ州選手権と女子カナダ選手権で2回加点できる上に、現状の7番目・8番目の大会のポイントが10p未満なので、210pぐらいまで伸びる可能性がある。
🇨🇭X.シュヴァラー(150.8p、14位):現在出場中の🇨🇭ベルン・レディースカップに加えて、🇨🇭スイス選手権、🇫🇮世界ジュニアと、3回の加点機会がある。🇨🇭ティリンツォーニに勝って優勝しなくても良いが、準優勝、準優勝、優勝ぐらいの驚異的な成績を取ると、195p近くまでポイントを伸ばす可能性を残している。
🇨🇦スターメイ(133.9p、16位):ローズ同様、アルバータ州選手権と女子カナダ選手権で2回加点できるが、現在の3強(ホーマン、エイナーソン、ジョーンズ)に食い込むほどの成績が取れた場合には、190p近くまでポイントが伸びる可能性がある。
意外なチームが並んだかもしれませんが、世界的に国内選手権のシーズンで、1つの大会で獲得できるポイントは大きいこともありますが、大会の数が多いわけではないため、加点する機会の数自体は少ないです。すでに10p未満の差しかない🇨🇦ローズには、高い確率でポイントを抜かされそうですが、他の2チームはかなり狭い門を通り抜けなければならないことを考えると、本当に3チームが同時にこの条件を満たすとは考えづらいでしょう。
一方で、日本選手権2次予選敗退となった場合には、🇯🇵ロコ・ソラーレのポイントは、180pにも満たないことになり、上の3チームの条件も軽くなります。加えて、🇺🇸ストラウスがアメリカ選手権で優勝した場合に180pを超えて来る可能性などもあり、少し雲行きが怪しくなると言わざるを得ません。
ということで、私の結論としては、日本選手権で2次予選通過すれば、「プレイヤーズ選手権」出場は90%決まりということになります。藤澤選手加入後の🇯🇵ロコ・ソラーレは、五輪で出場できなかった年を除くと、日本選手権で1位か2位しか取ったことがなく、3位すら取ったことがないことを考えると、すでにかなり高い確率で「プレイヤーズ選手権」にも出場できそうです。あとは日本で待ち受けるチームがどこまで🇯🇵ロコ・ソラーレを苦しめるか次第でしょう。
全体の結果:システム変更の影響はあったのか
私的見どころの中で、組み合わせのシステム変更をやたらと気にしていた私としては、どのぐらい影響があったのかは検証してみたいところです。男女それぞれの結果とともに、考えてみたいと思います。(ちなみに、私の予選通過チーム予想は、女子が6チーム、男子が5チーム当たりでした。)
女子の結果
女子はシード順1位〜8位のうち、7チームが予選を通過しました。準決勝に進出したのは、🇨🇦ホーマン、🇨🇦ジョーンズ、🇨🇦エイナーソンのカナダ3強に加えて、🇨🇭ティリンツォーニの4チーム。決勝はマスターズと同じ🇨🇦ホーマンvs🇨🇭ティリンツォーニの対戦になり、🇨🇦ホーマンがグランドスラム2連勝を飾りました。
決勝は両チームともペースをつかみ切れない試合でしたが、バイスのラインコールがいまひとつ合わない場面も多かった🇨🇦ホーマンが第7エンドのミスの後も辛抱強く投げ続け、第8エンド、エクストラエンドと相手のミスを誘発したような印象でした。
男子の結果
男子も同様にシード順上位8チームのうち、7チームが予選を通過しました。準決勝に進出したのは、スコットランド勢の直接対決となった🏴モウアットと🏴ホワイト、そして、カナダ勢の直接対決となった🇨🇦ボッチャーと🇨🇦グジューで、決勝では🏴モウアットが🇨🇦ボッチャーを下して、久しぶりの優勝を遂げるとともに、キャリア・グランドスラム(主要4大会すべてでの優勝)を達成しました。男子の海外チームでは初めてのことです。
決勝は拮抗した試合だったと思いますが、スキップ2人のうち、大事な1投をより多く決めたのが🏴モウアットだったという気がします。特に🏴先攻で迎えた第4エンドでは、ハウス内は相手の石ばかりという中で、先攻ラストロックで完璧なカムアラウンドを決め、アングルランバックを強いる形となりました。これがミスを誘って1点スチールし、試合を優位に進められるようになったようです。
上位シードチームは強かったが、前から強い
今回のシステム変更は、より上位シードに有利になる変更だと思っていましたが、グランドスラムは元々上位シードが予選通過することの多い大会なので、その傾向がハッキリと見えるほどの変化は起こらなかったと言えそうです。まだ1大会ですから、当然と言えば当然です。
例えば、下位シード(シード順9位〜16位)のチームが予選通過した回数は、今季の最初の3大会合計(全24回)で男子が6回、女子が5回で、平均すると1大会で2チーム弱。カナディアン・オープンでは1チームずつ(🇰🇷キム ウンジョンと🏴クレイク)で、若干少ないとは言え、大きな違いとは言えないでしょう。
何かその兆候を無理やり見つけようとするなら、タイブレークの可能性が残る2勝2敗に到達しないチームが多かったような印象はあります。男子は1勝+0勝が合計7チーム、女子は0勝が4チームありました。下位シードチームにとっては、下位シード同士の対戦1試合を除くと、他の3試合が上位チームとの対戦となることもあり、2勝目がなかなか難しい対戦方式なのかという気はします。
下位シードが勝ち上がる1つのパターン
そんな中で第13シードから予選通過した🏴クレイクの勝ち上がり方は、「下位シードから予選通過する方法」の1つだった気がします。
それは“DSCを良くし、下位シード同士の対戦に勝てば、あとは上位シード3チームのうち1チームになんとか勝てば、予選通過できる”という印象のものでした。もちろん下位シードとはいえ、世界ランキングの9位〜16位付近のチームなので、弱いチームではありません。ただ、初戦で🇮🇹レトルナスに勝ち、最終的に全体の4位となったDSCで良い数値を残しておいたことで、最終戦の下位シード同士の対戦に勝てば予選通過濃厚という状況ができていたことで、落ち着いて力を発揮しやすかったのかと思いました。
世界選手権へ向けて
グランドスラムも4大会が終わり、次のグランドスラムは男女それぞれの世界選手権の後です。つまり、これだけのチームが集まる次の大会は、もう世界選手権になる訳です。国によっては、すでに大会によって代表が決まっている国(韓国)や世界ランキングで代表を決めた国(スイス、スウェーデン)がありますが、日本を含め、国内選手権で代表を決める国がいくつか残っています。どのチームがプレイヤーズ選手権に出場するのか、そして、その前に行われる世界選手権で、どんな歴史が新たに作られているのか、今からもう楽しみです。
アメリカ選手権(1/29-2/4)
男女それぞれ8チームずつで優勝と代表の座を争います。男子はドロプキン、シュスター、キャスパーの3チーム、女子はピーターソン、ストラウス、アンダーソンの3チームが優勝候補と言えそうです。
ただ、今季の成績は必ずしも良くないチームが多く、前述したプレイヤーズ選手権に出場が濃厚と言えるチームはありません。一番近いのは女子のストラウスで、男子のドロプキンも今回は出場が難しそうな状態です。これまで代表を務めてきたようなチームが良いパフォーマンスを見せられないのであれば、前回準優勝のキャスパーやストラウスのような若いチームにも今まで以上にチャンスがあるのかもしれません。
スコットランド選手権(2/4-10)
女子は6チームの争いで、🏴モリソンが本命でしょうが、前回世界ジュニア優勝スキップが率いる🏴ヘンダーソン、F.ヘンダーソン選手が年齢要件により抜けた現ジュニア代表🏴ムンロあたりが、どのぐらいその地位を脅かせるかに注目です。
一方、男子は9チームの争いで、世界ランキングTop25に5チーム(モウアット、ホワイト、J.クレイク、ブライス、ワデル)もいる状態なので、気の抜けない対戦が多く繰り広げられそうです。ただし、スコットランド代表は、選手権の結果を元に協会が決定する方式で、優勝すれば即代表ではありません。調子に波があるとはいえ、今季グランドスラム1勝で欧州王者の🏴モウアットがいる以上、他のチームは優勝してもやっと同じスタートラインに立てたという感じになりそうで、優勝できなかった場合でも🏴モウアットが代表になる可能性があります。
カナダ選手権(女子:2/16-25、男子:3/1-10)
現在、目下、州予選が進行中のカナダ選手権。女子はエイナーソン、男子はグジューが連覇している中で、その回数を伸ばせるのかが注目です。今季だけの成績で言えば、女子はホーマン、男子はボッチャーの方が上ですが、カナダ選手権には独特の難しさがあるようです。
順当に行けば、女子はチームJ.ジョーンズを含めた3チームが優勝候補でしょう。男子の方が混戦になるようなイメージがあり、4強とも呼ばれるグジュー、ボッチャー、クーイー、ダンストンが優勝争いの中心になるとは思いますが、カラザース/ジェイコブスやマキューウェンのような出場回数の多い選手を抱えるチームがそこに食い込むこともありそうです。
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