自分の記憶に残った4つの場面〜世界ミックスダブルス/シニアカーリング選手権 現地観戦記 その1
今回、2023年4月20日(木)〜30日(日)の11日間、韓国の江陵市(カンヌン市)に滞在して、世界ミックスダブルスカーリング選手権(世界MD)および世界シニアカーリング選手権(世界シニア)を観戦してきました。
自分の中でもいろいろと感じたこと、考えたことが多過ぎて、その整理のためにも、いくつかに分けてNoteに書いてみようと思います。1本目では、全試合観戦した世界MD日本代表の試合で、記憶に残った場面をここに書き残しておきたいと思います。
その1:🇺🇸アメリカ戦(2試合目)の8エンド後攻ラストロック
初戦の🇩🇪ドイツ戦は前半からリードする展開も、第7エンドのビックエンドで追いつかれるヒヤッとする試合になりました。それでも、前回銅メダルのドイツに対して、最終8エンドで後攻1点を取り切り、初戦を🇯🇵7-6🇩🇪で勝利。「まず、1つ勝つのが大事だよなぁ」と思った翌朝の🇺🇸アメリカ戦でした。(逆にドイツは、最初の1勝をあげるのに苦労して、結果として、とても苦しい大会になった感じがしました。)
試合はお互いにスチールを許さない拮抗した試合になり、🇯🇵5-5🇺🇸で迎えた最終第8エンド、日本が後攻。常にNo.1を取られ続ける展開で、ガードで正面からのラインは完全に切られた状態でした。
ただ、後攻4投目の中心に届かなかったドローの石があの外側の場所に残った(プランBで考えていたのかも)ことで、ランバックのコースが2つになり、アメリカは片方しかガードできなくて、このショットが生まれたのかなと思いました。
今大会通じてそうですが、大事なところでのキーショットが決まったことが好成績につながったと思います。特に、後から結果を見直せばなおさら、この1投が決まったことの重要性は大きいですし、気分よく試合に臨めたという意味では、他の試合にも良い影響があったのではないかと想像します。
あとは、「谷田さんの“フォー”が聞けるうちは、順調に大会が進んでいくんじゃないかな」と思った記憶があります。
その2:🇸🇪スウェーデン戦(3試合目)のエキストラエンド
そして、アメリカ戦の夜に行われた🇸🇪スウェーデン戦。運良く巡ってきたチャンスを活かし、“今日の1投”にも選ばれた第2エンド後攻ラストロックでリードを奪いますが、粘り強く戦う相手に第8エンドで再度追いつかれます。
🇯🇵7-7🇸🇪で迎えたエキストラエンド。日本が後攻。後攻1投目がショートして、先攻2投目のタップバックでかなり良い形を作られてしまうのですが、ここから谷田選手の“3連続ダブルテイクアウト”が決まります。
後攻2投目はガードをハウス内に飛ばしてのダブル。ただ、この時点ではNo.1はスウェーデンのまま。
そして、後攻3投目がこのダブル。シニア男子チームから「よしっ!」と声が出るのも納得です。これでエンドの大勢が決まったと思いました。
ちなみに、後攻4投目は、ドローのコースを確保する自分たちのガードのダブルテイクアウトでした。(3連続ダブルと言われた時点で「後攻4投目の時点で、相手の石は5つしかないはずでは?」と思った方は、鋭いですね。)
ここまで完璧なお膳立てができて、バックストーンまであると、あとはラストロックを決めるだけ。周りのシートはすべて終わっている緊張感のある雰囲気の中で、先攻ラストロックも少しズレると怖いところにありましたが、きっちり決めて3連勝。対戦カードを考えると、実力のあるペアを相手に序盤の3試合をすべて勝てたのはとても大きいと感じましたし、少なくともプレーオフ争いに絡めることは、この時点でほぼ確信していました。
その3:🇳🇴ノルウェー戦(6試合目)の第6エンド
その後、ドキッとする場面もありつつ、4試合目と5試合目を順当に勝ち、6試合目は🇳🇴ノルウェーとの全勝対決になりました。個人的には、ノルウェーの応援団(選手のご家族)の方々には仲良くしていただいていて、ここまではお互いに“勝利おめでとう”と声をかけあっていた訳ですが、当然この試合はそうもいきません。
試合は序盤から点数の取り合いに。4人制ではそれぞれフロントエンドを務める🇳🇴ルンニン/ブレンドゥン組は、これまでの試合と同様に、エンド序盤に効果的なドローでボタン付近を先に支配して安定させる作戦のようでした。後攻でビックエンドを積み重ねていくノルウェーに対し、日本も後攻で複数点を取って追いすがります。私からすると、ドローで石を貯めるのは相手も得意な展開に見えていて、「そうじゃない戦い方ができれば良いのになぁ」と思っていました。(Twitterに書いたことは、的外れなこともあるとは思いますが…。)
相手の得意なドローを封じた第6エンド
🇯🇵6-7🇳🇴で迎えた第6エンド。ノルウェーがそんな日本を振り切ろうと後攻でパワープレイを選択。日本はこれまで相手のパワープレイの1投目では手前の置き石をハウス内にズラすショットが多かった気がするのですが、この試合ではセンターガードを置きます。そして、後攻1投目がTライン奥まで少し伸びたところで、日本の先攻2投目がボタン中央、センターガードの真裏に止まります。
ここから、これまでの5エンドとは違う展開になります。ボタン付近で石を安定させることの大切さを知っているからか、ノルウェーは後攻2投目からランバックを選択。自分たちの石も含めて、ハウスの中の石を出しに行きます。このダブルテイクアウトが決まって、ハウス内は後攻の置き石1つだけになりました。
その後、ガードとして残った後攻2投目で投げた石の裏に、日本は石をきれいに隠して行きます。ノルウェーは続けてランバックを狙いますが、これが決まりません。ドローが得意なペアに対して、ランバックを強いることができ、それが相手のミスを呼んでいるように見えていました。
最終的にノルウェーの後攻ラストロックは、ドローを投げるしかなくなります。しっかりボタンにはかけてきましたが、日本の石の方が中心に近く、1点スチールで同点とし、偶数エンドの後攻も手にすることになりました。ちなみに、このエンドの日本のショット率は100%でした。
結果的には、第7エンドでノルウェーに1点を取らせ、第8エンドのこの後攻3投目でNo.1、2を確保するフリーズを決めたことで、複数点が濃厚になりました。最終スコアは🇯🇵10-8🇳🇴でした。
変な言い方かもしれませんが、今大会で“自分の脳内と目の前の試合が一番シンクロしたと感じた”のが、このエンドだったと思います。そういう意味では、この大会で一番強く記憶に残ったのが、このエンドでした。
その4:準決勝(vs🇳🇴ノルウェー)第8エンドのラストロックの投げ合い
🇳🇴ノルウェー戦の後、🇹🇷トルコ、🇪🇸スペインに連勝したことで、早々と1位通過を決めた日本は、最終戦で🇨🇭スイスの高いレベルのパフォーマンスに直面し、初めての負け。「すでに1位通過が決まっていて良かったぁ」と強く感じたのを覚えています。
準決勝の相手は、🇪🇪エストニアに勝利した🇳🇴ノルウェー。出場選手こそ違えど、3大会連続の4位以上を決めており、強い国だなと思ったのを思い出しました。(そのレベルのペアが3つあると考えると、選手が違うからこそ、余計にすごいと思います。)
試合は前回と違って、各エンドともお互いにもう1点が取りきれず、緊張感のある1点の取り合いになりました。序盤から配置が絶妙で、ラストロックを投げる前に、すでにそのエンドの結果が決しているような試合展開でした。
日本がピンチを迎えたのは第6エンド。ノルウェーのパワープレイに対して、ウィックやダブルテイクアウトが決まらず、3点取られるおそれがありましたが、ジャムに助けられて、ノルウェーは後攻2点止まり。ただ、日本が先行して、ノルウェーが追いつく展開から、ノルウェーが初めてリードを奪いました。
第7エンドをフォースされ、🇯🇵4-4🇳🇴で迎えた最終第8エンド。後攻はノルウェー。序盤は日本の石の裏にノルウェーの石がある形で良さそうでしたが、先攻3投目でノルウェーの石を中に押し込んでしまう格好になりました。私の方からはどちらがNo.1か、はっきりわかりませんでしたが、後攻が4投目にガードを置いたことで、ノルウェーがNo.1を持っていることがわかりました。
相手のNo.1を出すしかない、先攻ラストロック。
劇的な幕切れかと思いましたが、ここで終わりではありませんでした。最後、ブレンドゥン選手がスイープをやめた時点で私は“負け”なのではないかと思い、同時にノルウェーの応援団からは歓声が上がりました。
最終的に、メジャーで結果が決まることになりました。
私も当然その結果をうれしいと思いましたが、何よりも選手自身がうれしそうだったことが強く印象に残りました。
金メダルか?銀メダルか?というぜいたくな時間
決勝は残念ながら負けてしまい、結果は銀メダルでした。それでも、“金メダルか?銀メダルか?”なんてワクワクしながら試合を見られるのは、何物にも代えがたい、ぜいたくな時間であり、貴重な体験だったと思います。
テレビで見られた方も楽しまれたと思いますが、私も現地まで行ったことを本当に良かったと思いましたし、行くと決めた過去の自分をほめてあげたいと思いました。もちろん結果が良かったこともそう思えた理由の1つですが、選手やその周りの人たちが必死に力を尽くす姿をテレビ越し以上に見られたという意味では、行っただけの価値はあったと思います。
きっとこの8日間の、そして、特にこの4つの場面の記憶は、これからも幸せな記憶として何度も思い出されてしまうのだと思います。
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