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勝てない時間が 愛 育てるのさ〜24-25シーズン第12週振り返り

何を隠そう、郷ひろみ『よろしく哀愁』です。英語でも"Absence makes the heart grow fonder"(会えないことで、好きな気持ちがより強まる)という表現があるそうですね。勝てないことで育つのが、カーリング愛なのか、チーム愛なのか、他の何かなのかはわかりませんが、勝てない時間をどう大切にするかが大事なのかなと思う瞬間が多い週末でした。第12週のプレビューはこちら


日本の各チーム

第12週の海外遠征中の日本のチームの結果一覧

🇨🇦グジューや🇮🇹レトルナスに勝てなかった男子の各チーム

「Henderson Metal フォール クラシック」(SFM:7.0)には、🇯🇵コンサドーレ、🇯🇵TM軽井沢、🇯🇵ロコ・ドラーゴの3チームが日本から出場しましたが、残念ながら、どのチームも予選は通過できませんでした。早い段階でCイベントに進んだチームもあったため、「ここからしぶとく予選通過を…」と思っていましたが、対戦相手が世界ランキングでトップ3に入る🇨🇦グジュー(メンバー変更の最中とはいえ)や🇮🇹レトルナスになると、そう簡単には勝てません。そこまでの間でかなり接戦だった試合もあったので、そこでなんとかなっていれば…とは思いますが、他のチームも強敵ぞろいでした。グランドスラムに出場するレベルのチームともそれぞれ2〜3チーム対戦できましたし、この対戦経験から何を引き出すかが大事になりそうです。🇯🇵コンサドーレは、PCCCでも🇨🇦グジューと対戦することが決まっていますが、その対戦を良い勝負にするためのヒントが見つかっていればなぁと思いますが…1回対戦したぐらいで弱点がわかるなら、苦労しませんね…。🇯🇵ロコ・ドラーゴもチームとしての伸び代はまだまだあると思うので、こういう経験がプラスに働いてほしいと思います。

特に健闘を見せたのは、🇯🇵TM軽井沢だったでしょう。カナダのトップチームの1つである🇨🇦ジェイコブスに勝ち、最後の試合になったCイベント決勝の🇨🇦グジュー戦も“今季最高の1投”と呼ばれ始めている相手の第7エンド後攻ラストロックが決まっていなければ勝っていたような試合でした(下線部をクリックすると、そこから見られます)。強いチームと対戦するのが経験として貴重だというのは、単に“対戦がレア”ということではなく、“自分たちが良いパフォーマンスを見せても、その上を行かれる”という経験が大事なのだと思います。“今の自分たちのベストではまだ足りない”と感じさせてくれれば、その先を追いかけるヒントにもモチベーションにもなるでしょう。そういう意味では、この🇨🇦グジュー戦が、今後にもつながる“良い試合”になれば良いと思います。

MDでは逆転が起こりやすいのか?逆転しづらいのか?

「サヴィルMDクラシック」(SFM:推定3.5)に出場した🇯🇵松村/谷田は、準決勝で🇨🇦パプレー/ヴァン=アムステルダムに敗れてベスト4でした。試合は第7エンドに5点のビックエンドを許し、それを第8エンドに4点取って追いつくという激しい終盤になりましたが、先攻だったエクストラエンドでスチールするには至りませんでした。

5点取られた直後に4点取り返すというような場面は、MDでもなかなか見られないものですが、“MDでは逆転が起こりやすい”と言われることの意味を再考させられました。今回のように1つの試合の中で、次のエンドに大量点を取り返すことは、MDで起こりやすい現象でしょうし、4点・5点のエンドの割合を集計すれば、4人制よりもMDの方が高いと想像します。それを取り上げて“MDでは逆転が起こりやすい”と言うのは、確かにその通りでしょう。

ただ、1つのエンドに注目すると、“MDの方が試合展開を逆転させづらい”とも言えるのでしょう。単純に考えて、8回石を投げられる4人制よりも、5回しか石を投げられないMDの方が、少しずつ状況を好転させて、有利な状況を作るチャンスは少ないと言えるでしょう。したがって、あるエンドでミスが続いたりすると、“逆転しづらい”ので片方に大量点が入りやすい。ただし、そのエンドが終わって、一度リセットされた状況に戻れば、先後が変わることもあり、大量点が入る先が反対のチームにもなりうる。だから、MDの試合は”逆転が起こりやすい”のでしょう。(大量点が入りやすい理由は、他にもあるとは思います。)

5点取られた第7エンドでは、先攻ラストロックで挽回のフリーズが決まったかと思った(選手もちょっとうれしそうだった気が…)直後に、それが5点になったので、感情の起伏が大きかったですが、次のエンドで4点取り返せるあたりの平常心は、🇯🇵松村/谷田の強さかなと思いました。ただ、「MDで5投目に速いテイクアウトが投げられる選手がいるチームは、相手にすると怖いなぁ」と、ここ最近特に思っていたので、🇨🇦P.パプレー選手(4人制では🇨🇦スターメイのリードで、背は高い方)にそれを再認識させられたような気分でした。(守備の面でも有利だと思っています)

女子グランドスラム出場ボーダー付近のせめぎ合い

「アルバータ・カーリング・シリーズ 4人制 #1」(SFM:3.0)には、日本から🇯🇵北海道銀行と🇯🇵SC軽井沢クラブが出場しました。両チームとも予選は全勝で通過しましたが、🇯🇵北海道銀行は🇨🇦キャメロンに負けてベスト4、🇯🇵SC軽井沢クラブは優勝した🇰🇷パク・ユビンに負けてベスト8となりました。ベスト4だった🇰🇷ハ・スンヨンを含め、プレーオフには“グランドスラムに出られるか、出られないか”ぐらいの世界ランキングのチームが多かったので、その辺りのチームと勝ったり負けたりになるのも、現時点では妥当なのかなと思います。

この後、PCCCに向かう🇯🇵SC軽井沢クラブについては、他の試合を取りこぼすようなことがなかったのを好材料だと捉えたいです。PCCCで世界選手権の出場権を獲得するには、格下のチームには確実に勝ちたいからです。上野美優選手が予選を全試合欠場し、準々決勝はマスクをしてプレーしていましたが、残りの3人でも堅実なカーリングができていたように思いますし、大会が始まるまでに体調を整えてもらえば、大丈夫な気がしています。

世界ミックスカーリング選手権で日本代表初の準優勝

ご紹介が最後になりましたが、ミックスカーリング日本代表となった🇯🇵チーム市坪(東京都協会)が、日本代表として初めて世界ミックスカーリング選手権で準優勝に輝きました。近年はプレーオフ進出が続いていましたが、“ベスト8の壁”をついに突破したかと思うと、そのまま決勝まで勝ち上がりました。決勝では敗れましたが、初めての快挙ですし、胸を張って帰ってきてほしいと思っています。

4人制のミックスカーリング(通称“ミックス4”)は、五輪種目ではありません。参加に制約がかかっている訳ではなく、出場したい人なら誰でも参加できるようですが、現在では有力国のトップ選手は出場を目指さない傾向にあります。過去には、カナダの女子代表のスキップが、ミックス4の代表を兼任していた年もありますが、複数の代表の座を同時に目指すなら、同じく五輪種目であるミックスダブルスとの両立を目指す方が、今は一般的です。競技の位置付けは国によって異なる印象で、ジュニア年代のチームが参加することの多い国もあれば、4人制代表の中心選手が出場する国(スペインなど)もあります。世界ミックスカーリング選手権自体もオープン参加で、参加したい国が出場できます。広く門戸が開かれた競技である分、仕事などと両立しながら目指しやすい大会になっているとも言えます。次回は2年後の予定ですが、「2年後なら、今から準備して間に合うかも?」と思うチームが国内予選に参加するようになって、日本代表争いが盛り上がると良いと思っています。(その時にはこのチームが返り討ちにしてくれるのかな?)

今週の大会結果

日本のチームが出場した大会を含め、今週の気になった大会を表にまとめてみました。

24-25シーズン第12週の気になった大会の結果

韓国3強に迫る🇰🇷パク・ユビンと🇰🇷カン・ボベ

今週、印象的だったのは、🇰🇷パク・ユビン(ソウル市役所)がカナダの大会で初めて優勝したことです。チームを結成して今季が3シーズン目ですが、最初の2シーズンは4人制チームとしてあまり大きな成果をあげられなかった印象でした。去年の軽井沢国際でも3連敗でしたし、試合の合間に女性コーチと5人でミーティングしていた様子を直接見かけたので、よく覚えています。今季は、少し投げる順番を変えて、パク・ユビン選手をフォーススキップにしていました。

9月に韓国で行われていた2つの大会では、🇰🇷パク・ユビンと🇰🇷カン・ボベ(チョンブク道庁)がともに決勝で対戦し、1勝1敗で優勝を分け合っていました。2チームは同じ時期にカナダ遠征を開始し、🇰🇷カン・ボベは2週間前にカナダでの初優勝(実質SFM:2.0)を飾っていましたが、🇰🇷パク・ユビンもそれに並びました。一部の選手はソンヒョン高校の先輩後輩(チーム🇰🇷パク・ユビンの2人が、チーム🇰🇷カン・ボベの3人の先輩)に当たりますが、🇰🇷カン・ボベ選手が高校1年の時からジュニア代表を2年務めたのに対し、チーム🇰🇷パク・ユビンの選手たちはその2回の韓国ジュニア選手権で準優勝でしたし、意識するところはあるのでしょう。今回、特に準決勝で🇰🇷ハ・スンヨンに勝ったのが印象的で、これまで3強と考えられてきた🇰🇷キム・ウンジ、🇰🇷キム・ウンジョン、🇰🇷ハ・スンヨンの3チームに、“勝てなかった時間”を乗り越えつつあるこの2チームが割って入るようなことになると、国内での勢力争いも変わってくるでしょう。

スイスで感じた有力MDペアの底力

今週、スイスでは1週間に2つのMDの大会が順に行われましたが、ベスト4には同じ4ペアが残り、前半の「🇨🇭ミックスダブルス・グシュタード」(SFM:4.5)では🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿ドッズ/󠁿󠁴󠁿󠁴マウアット、後半の「🇨🇭ミックスダブルス・ベルン」(SFM:推定5.5)では🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿モリソン/ラミーが優勝しました。4人中3人は世界ミックスダブルス選手権の優勝経験者で、2021年・2022年にスコットランドが連覇した時の立役者です。ベスト4に残った他の2ペアは、前回世界MDで3位だった🇳🇴スカスリエン/ネドレゴッテンと5位タイだった🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿ジャクソン/マクファジンでした。

今週はスコットランドから5つのペアがこの2大会に送り込まれていたのですが、普段は4人制を中心に活動する実績のあるペアが、MDでもその実力を発揮できることを示したような印象です。世界MD選手権には、どのペアが出ても、ほぼ間違いなく日本にとって強敵になるでしょう(予選で当たるかはわかりませんが)。また、🇳🇴スカスリエン/ネドレゴッテンは、どこのどんな大会でも必ずと言って良いほど上位に残ってきます(4大会に出て、準優勝が3回・ベスト4が1回)。今週は🇪🇪カルドベー/リルが負傷により途中棄権となりましたが、急遽出場した🇨🇭シュヴァラー/シュヴァラーは、きっちり予選通過してベスト8でした。このあたりの国は、高い確率で五輪には出場するでしょうし、日本が次回の世界MD選手権で五輪出場権を得るには、乗り越えないといけない壁なのかもしれません。(1カ国1ペアで良かったかもしれない…)

その他の大会

  • 「サヴィルMDクラシック」の優勝は🇦🇺ギル/ヒューイット。ヒューイット選手は男子オーストラリア代表としてPCCCに出場予定。

  • カナダでは、冬季ユニバーシティゲームズのMD代表が🇨🇦ジャン/ピエトランジェロに決定。4人制は直近の大学選手権の優勝チーム(男子:🇨🇦ブライデン、女子:🇨🇦グレイ=ウィザース)が出場。

  • アメリカでは、「セントポール・キャッシュスペル」で今季アメリカ選手権出場チームが男女2チームずつ決定(男子:🇺🇸ダンナム・🇺🇸シネット、女子:🇺🇸ベンソン・🇺🇸カズンズ)

  • 「キング・キャッシュ・スピル」では、優勝チームがブリティッシュ・コロンビア州選手権への出場権獲得(男子:🇨🇦モンゴメリー、女子:🇨🇦ライアン)

第12週終了後のポイント状況

グランドスラム第3戦「ナショナル」の出場権争い

グランドスラム第3戦「ナショナル」は、10月22日時点のポイントで決まるとされています。「昨季ポイントの62.5%+今季4大会分」でポイントが計算されるのが同じ22日からなので、この基準が採用されるという前提で、どのチームが出場しそうか見ていきたいと思います。

「ナショナル」出場権争い 女子

女子は、🇨🇦ブラックが「ツアー・チャレンジ Tier 2」優勝の権利をここで行使するため、ポイントで決まるのは14チームまたは15チーム(スポンサー枠が使われなかった場合)となります。ポイントでは、13位🇯🇵北海道銀行、14位🇯🇵フォルティウスとなり、日本からは🇯🇵ロコ・ソラーレを含めた3チームが出場できそうです。14位まで3pに満たないわずかな差ではありますが、🇯🇵中部電力は出場が難しそうです。中部電力と他2チームを分けたものは、獲得ポイントが30pを超える大会があるかどうかに見えますが、反対に、上から4番目の大会のポイントなどを見ると、中部電力の方が安定して予選通過・ポイント獲得しているとも言えます。長期的に見た場合、例えば来季に入った時に、どちらがグランドスラム出場に近いかを考えると、実は中部電力の方が近い可能性もあります。

「ナショナル」出場権争い 男子

男子の方は、今週の大会で🇨🇦カラザースが大きくランキングを改善し、出場権内に入りました。第2戦ではギリギリ圏外だった🇩🇪ムスカテヴィッツが15位に踏みとどまり、出場が決定的です。グランドスラムを経験してから、軽井沢国際に出場することになりそうです。

日本とノルウェーのMD代表争い

日本でのミックスダブルス世界ランキング最上位争いは、🇯🇵松村/谷田が4大会目を終え、あとは“お互いにここからどれだけポイントを伸ばせるか”という勝負になってきました。現時点では、🇯🇵小穴/青木が9ポイント弱の差をつけて上回っているようです。(SFMの計算に間違いがあると、少しズレているかもしれません。)

第12週終了時のミックスダブルス世界ランキング国内最上位争い

一方で、ノルウェーでも世界選手権代表をかけたポイント争いが行われていますが、🇳🇴スカスリエン/ネドレゴッテンが大幅にリードしている状況です。🇳🇴M.ルンニン選手は世界ミックスカーリング選手権にも出場していましたが、かなり頑張らないとこの差は埋まらなさそうです…。

ノルウェーのMD世界選手権代表争い

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