障がい者とともに活動するダンスカンパニーIndepen-danceの上演とワークショップを見て
2019年1月17日 国立オリンピック記念青少年総合センター 中練習室43
TYAインクルーシブアーツフェスティバル2019
Indepen-dance
演出:Anna Newell
作曲:David Goodall
振付:Stevie Prickett
ダンスカンパニーIndepen-danceでは障がい者と健常者がともに活動している。カンパニーによる上演を見て、それからワークショップに参加した。3才~5才向けの作品や作品やワークショップをどう作っているのか。障がい者の演者とどのようにクリエーションを行っているのか。
▶上演『長靴をはいた四人組』
部屋に入ると4つ並んだ小型のテントに目がとまる。床には秋の落ち葉が散らばっているほか、長靴や上着なども落ちている。ここは秋の山のなかなのだろう。
部屋が暗くなると、テントが一つずつ動きはじめる。小型のテント一つにつき一人の演者が動かしている。テントが縮んだり揺れたりすることで、テント自体が一つの生き物として動いているようだ。テントたちは音楽に合わせてゆらゆらと揺れているが、一つだけ動かずにいる。どうしたのだろうとほかのテントがいぶかしがっていると、思いっきり飛び上がって見せる。そうやってほかのテントやお客さんを驚かしたのだ。
テントのチャックが開いて、そこからヌッと脚が出てくる。そしてまた音楽に合わせて揺れ動く。脚のダンスである。それから全員テントから出てくる。女子が二人に男子が二人。四人は床に落ちていた服を不思議そうに眺める。服を着る。上着を履こうとしたり、ズボンをかぶろうとしたりする。バラバラになったあれこれと長靴を並び替える。服を着るという動作でも、それをリズミカルにコミカルに演じることでダンスとなる。
それから、四人は「だるまさんが転んだ」のような遊びをする。一人が真ん中に立って目を瞑り、その周りをほかの三人が転がりながらからかっていく。音楽がとまると、周りの三人はピタッととまる。そのときに動いてしまうと鬼と交代する。くるくると回りながら遊んでいる様子もまたダンスとなる。
男子二人はおそらく障がい者なのだろうと思ったが、ワークショップで交流するまではっきりとしなかった。ダンスは四人で楽しく遊ぶ様子を振付にしている。ダンスはダンスでも、やや演劇的である。四人が楽しそうに秋の小山のなかを遊んでいる様子はとても自然に見えた。ニコッとアイコンタクトでやり取りをするさまはとても爽やかだった。こういう言い方が適切かどうか分からないが、男子二人はとても理知的で聡明そうに見えたのである。四人のうち女子二人が喧嘩をすると、男子二人が工夫・協力して、遊びを交えながら仲直りを図ろうとする。言葉はなく、ニコッとアイコンタクトを交わして、うまいこと女子二人を一緒に遊ばせようとする。そのやり取りをする二人の表情のなんと豊かなこと!
▶ワークショップ「モノを使って表現する」
上演が行われたのと同じ場所でワークショップが行われた。3~5才向けのワークショップであり、かつ障がい者とともに創作するためのワークショップでもある。『長靴をはいた四人組』でも使われたワークも体験できるという。ファシリテーターが実演してくれるのだが、身体および表情を思い切り使って示してくれるので、分かりやすかった。
以下のメモは数日経って思い出しながら書いているので、抜けているところ、間違っているところがあると思われる。
・身体をいたわる
自分の身体を感謝しながら、マッサージする。腕や脚をこすったり、筋肉をもんだり。参加者に身体のどこをマッサージしたいか聞くことも。
・輪になって、真ん中に向かって歩く
参加者は輪になって並んでいる。真ん中に向かって歩くように指示され、また輪に戻る。その次に、同様のことをさまざまなニュアンスも付与して行うように指示される。素早く行く。音を立てずにゆっくり行くなど。
・日常の動きのダンス
朝起きて、風呂に入って、服を着て、ご飯を食べるといった日常の動きを、大きくのびのびと行う。朝起きるときは、丸めた身体から思い切り伸ばす。風呂に入るときは、身体を磨いて、それから水を払う。服を着るときには、ストレッチ素材に苦戦するように。ご飯を食べるときは、両腕で大きなスポーンをつくって、それを口に注ぐように。これは上演のなかで実際に使われた振付で、カウントに合わせて何度か練習した後、音楽に合わせて行った。
・森のなかを歩きまわる
上演では、ダンサーたちが森のなかで遊んでいた。ワークショップでは、森のなかを歩き回ってもらう。音楽を流しながら、まずは自由に。その次には、森のなかの具体的な環境を指定されて、そのなかでの身体的な動きで遊んだ。環境設定としては次のようなものがあった。とげとげの茂みの下を進む。川の流れの上に点々と岩があり、その上を跳び移りながら移動する。沼の泥のなかを進む。一人だけで演じてもいいし、近くにいる人とコミュニケーションを取ってもいい。
環境についてとそこから生まれる身体的なニュアンスについては、出演していた障がいをもつダンサーによって説明された。彼が言葉で説明し、ファシリテーターがそれを身体的に表現してくれた。
・葉っぱをもって
上演で使われた落ち葉が配られる。それを手に乗せながら動いてみる。今度は森のなかの葉っぱとして動くのだ。そこにもニュアンスが加えられて、竜巻に吹かれたりする。葉っぱを持ったまま、ミラーリングをする。ペアになって、葉っぱを持ちながら。二つのグループに分かれて、お互いの演技を見せあって、感想を聞き合う。
▶感想
上演を見てすごく感心したが、あそこまで行くのには相当の苦労があったのだろう。ワークショップにあったように、身体と言葉の両方でニュアンスを共有することが重要なのだろう。障がい者と健常者とが、ともに長い時間をかけて共有したからこそ、あそこまでの上演が成立したのだと思う。
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