村本大輔さんの「お笑い」に感じた凄みとフェア精神

僕が今猛烈に興味を持ち、
刺激を受ける人物がいる。
ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんだ。
「朝まで生テレビ!」に
出ていただいたこともある。
昨年、東京外国語大学教授の
伊勢崎賢治さんに誘われ、
初めてライブを観た。

ほとばしるように、
次々と飛び出す言葉、
ものすごい熱量だ。
社会問題を取り上げながら、
観衆を笑わせる力に、
凄みさえ感じた。
ライブ後、村本さんに、
「おもしろくなかったですか」
と心配されてしまった。
もちろん、おもしろかったのだが、
笑うのも忘れて
聞き入ってしまっていたのだ。

ウーマンラッシュアワーは、
2008年結成、
2013年の「THE MANZAI」で優勝、
人気のお笑いコンビとなる。
2017年、村本さんは、
abemaTVの番組出演をきっかけに、
社会問題をネタに取り入れ始めた。
当時の安倍政権批判、
震災後の原発や復興問題、
沖縄の基地問題……。

ネット上では、
「ネタが社会派過ぎて笑えない」
「漫才で主張を垂れ流すな」
という否定もある一方で、
「立派に芸であり、表現者ではある」
という肯定的意見も少なくなかった。
しかし、テレビ局は嫌がった。
日本というのは、
つくづく同調圧力が強い国だと思う。
テレビ番組出演数は激減。
2016年には年間250だったのが、
2020年、わずか1となった。

村本さんは、
「お笑い」で社会問題に切り込む、
信念の人だ。
そんな村本大輔という人物に
密着したドキュメンタリー映画、
「アイアム・ア・コメディアン
(I AM A COMEDIAN)」
(日向史有監督)を観た。
村本さんは必ず当事者に話を聞く。
福島原発事故の被災地に行き、
魚屋さんで刺身を食べる。
大阪で在日韓国人と話す。

東日本大震災後の被災地で、
仮設住宅に暮らす人たちの思いを聞く。
現地でお笑いを披露し、
笑ってもらえたのがうれしく、
「一瞬の幸せでも見せるのが、
お笑いだ」と確信する。
「お笑い」というのは大変だと思う。
観衆を笑わせながらも、
その問題を考えさせるのだから。

村本さんは2024年2月からは、
ニューヨークで勝負している。
一時帰国し、
今年1月8日にライブをする
というので観に行った。
石破首相のネタも登場した。
「石破さんのおにぎりの
食べ方が悪いとか言われてるけど、
いいじゃないですか、
今まで冷や飯食わされてたんだから」。
みんながどっと笑う。

政治家をからかうような、
馬鹿にする漫才は時々見るが、
村本さんのお笑いは違う。
批判はあっても意地悪さがないのだ。
村本さんは、
石破さんを目の前にしても、
同じネタをできるはずだ。
石破さん本人が聞いてもきっと笑うだろう。

問題の当事者に話を聞く、
批判はするが悪口は言わない、
彼のフェアな精神に、
強い共感を覚えた。
僕も必ず一次情報に当たる、
そして政治家に対して批判はするが、
本人がいるところで言う。
フェアを心掛けている。

村本さんは「お笑い」というジャンルで、
社会問題に切り込む。
僕はジャーナリストして発信していく。
年齢は違うが、
こんなにも刺激をくれる村本さんを、
僕はライバルだと思う。
またライブを見て、
いろんな話をしてみたい。