COLLOL 『このままでそのままであのままでかみさま』 初演 (2010)
※上演ご希望ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。著作権は関根正雄氏及び角本敦氏、Oscar Hammerstein II、The Beatles、そして田口アヤコに、上演権はCOLLOLに帰属します。
【上演記録】
COLLOL
『このままでそのままであのままでかみさま』
初演
@BankART Studio NYK / NYKホール
2010年3月26日(金)〜 30日(火)
http://www.COLLOL.jp/god/
staff:
劇作・演出:田口 アヤコ
音響・演出:江村 桂吾
研究・演出:角本 敦
衣裳:rei(GRENADINE)
映像:片山 春樹
照明:関口 裕二(balance,inc.DESIGN)
舞台監督:吉田 慎一(Y's factory)
制作:COLLOL
制作補:守山 亜希(tea for two)、高橋悌
宣伝美術:鈴木 順子
スチール:らっしー(GRENADINE)
広報協力:佐藤 道元
主催:COLLOL
協力:BankART1929
出演順:
田口 アヤコ
「ヨブ」
吾妻 由日
「あたしとこどもつくろうよ、」
廣瀨 瞬(犬と串)
「おれとこどもつくろうよ、」
千木良 悠子
「たぶん、言っても、伝わらないとおもう」
吉井 俊輔
「『正しさ』という言葉について、」
八ツ田 裕美
「”My Favorite Things”」
金子 裕紀
「薔薇の花びらの上の雨粒」
東京ディスティニーランド
「もう しゃべるの、やめる…」
大木 裕之
「答えとして autem 主は男に嵐より語った。」
引用テキスト:
『旧約書 ヨブ記』: 岩波文庫版 関根 正雄氏訳
『旧約書 ヨブ記』: 角本 敦訳 未公刊
各回アフタートーク&パフォーマンス有
・3/26(金)トークゲスト:
石神夏希氏(ペピン結構設計 劇作家・演出家)
・3/27(土)東京芸術見本市(TPAM)ショーケース参加作品
d'UOMO ex machina + COLLOL
『≪in solitudine secum loqui...≫ sive de Libro Iob Veteris
Testamenti』
(『旧約書のヨブ記から着想を得た1時間、あるいは、孤独こそ対話』)
ミニパフォーマンス再演(上演時間45分)
・3/28(日)トークゲスト:
矢作勝義氏(世田谷パブリックシアター 制作部)
・3/29(月)トークゲスト:
大根健一氏(演劇集団tea for two主宰・劇作家・演出家)
・3/30(火)トークゲスト:
佐藤道元氏(国際舞台芸術交流センター/東京芸術見本市)
*********
<オープニング 1>
田口、男子、大木: ヨブ…(くりかえし)
<オープニング 2>
由日: あたしとこどもつくろうよ、
そしてしぬまでしあわせにくらそうよ、
なんてゆう、
ゆめ、
ひろせ: おれとこどもつくろうよ、
そしてしぬまでしあわせにくらそうよ、
なんてゆう、
ゆめ、
<オープニング 3>
あなたは正しい
あなたは正しくない
あなたは、正しい、かもしれない
あなたは間違っている
あなたはよい
あなたはわるい
あなたが正しいのかもしれない
君は間違っている
あなたは正しくなかった
あなたは正しい、と言えるのかもしれない
あなたはよくない
あなたが正しい
あなたが正しい、と言いたい
あなたは間違った方法をとった
あなたは正しい道をとった
<シーン1の1>
ちぎら: たぶん、言っても、伝わらないとおもう
吉井: そう? そうーかなあ。そうかなあ。
ちぎら: 伝わる、っていうか、
信じて、もらえない
吉井: それは、言葉にしてみないと
わからないんじゃないの?
ちぎら: コトバ
吉井: ことば…っていうかさ、
言わなくてもいいよ
ちぎら: 言わなくても、いい。
吉井: 言わなくても、いいよ。
<シーン1の2>
やつだ:
"My Favorite Things"
バラのうえの雨つぶ コネコのひげ
ピカピカの銅のやかん あったかいウールのミトン
ひもでくくられた 茶色の小包
こんなのがたくさんの“My Favorite Things” のなかのほんのちょっと
クリームいろのポニー きつねいろのアップル・ストゥーデル
ドアの鈴 ソリの鈴 ヌードル添えの子牛カツレツ
たくさんのガンの群れ かれらの翼のうえにうかんだ月
こういうのがあたしの大好きなものたちの中のほんのちょっぴり
白いコートに 青いサッシュベルトのおんなのこたち
あたしのハナやまつげにおりた雪の結晶
白銀の冬が 春のなかに溶けてく
これらのあたしの大好きなものたち まだほんの一部だけど
犬にかまれたり ハチにさされたり
どうにも悲しくなっちゃったとき
ちょっとこんなすてきなものたちをおもいうかべたら
世界はそんな悪いもんでもないとおもうわ
金子/東京:
薔薇の花びらの上の雨粒 子猫のヒゲ
光ってる銅の薬缶 冬用のウールの手袋
しっかりくくられた茶色の紙に包まれた小包
こんなかんじ 僕の“My Favorite Things” の中に含まれているほんの一部
薄い茶色の子馬 いい色に焼けたアップル・ケーキ
ドアの鈴(りんりん) ソリの鈴(りんりん)
子牛のカツレツ、ヌードル添え
たくさんの、ほんとうにたくさんの、飛んでく鳥の群れ
かれらの上に浮かんだ三日月
こんなのかも コトバにするとしたら
僕の、お気に入りの、ものたち
真っ白なコート着て、青いベルトをしてる可愛い女の子たち
僕の鼻とか、まつげとか、に降ってくる雪の結晶
冬が、真っ白な冬が、春のなかに溶けてく
こんなのが僕の大事なものたち
(それはもう失われてしまったのかもしれない)
知らない犬に咬まれるとか、飛んできた蜂に刺されるとか、
どうしようもない、ほんとうにどうしようもない気分になったとき、
こういう「お気に入り」を思い出したらさ、
(それはもう失われてしまったのかもしれない)
世界はそんな悪いもんでもないと思ったり、
そう、
思える?
「世界はほんとうに悪いものではない」と
<シーン1の3>
金子: たぶん、言っても、伝わらないとおもう
東京: そう? そうーかなあ。そうかなあ。
金子: 伝わる、っていうか、
信じて、もらえない
東京: それは、言葉にしてみないと
わからないんじゃないの?
金子: コトバ
東京: ことば…っていうかさ、
言わなくてもいいよ
金子: 言わなくても、いい。
東京: 言わなくても、いいよ。
<シーン1の4>
田口:
ウツの地にヨブという名の人がいた。その人は全くかつ直く、神を畏れ、悪を遠ざけた。彼に七人の息子と三人の息女が生まれた。その財産は羊七千頭、駱駝三千頭、牛五百軛、雌驢馬五百頭、僕婢の数はおびただしく、その人は東の子らの中、最も大いなる者であった。その息子たちはおのおの自分の日に家で宴を設け、人を遣わして三人の姉妹をも呼んで、一緒に食べたり飲んだりするのが習慣であった。その宴の日々が一巡する毎にヨブは彼らを呼びよせて、彼らを聖別した。すなわち朝早く起きて、彼らの数に応じて燔祭をささげた。というのはヨブは、わたしの息子たちはあるいは罪を犯し、心の中に神を呪ったかもしれぬ、と思ったからである。ヨブはいつもこのようにした。
<シーン1の5>
吉井:
「正しさ」という言葉について、
ここで語ってみたいと思います。
…
「正しさ」なんてありえない
誰にとっても正しい、なんてことはありえない、
あのとき
あなたにとってのあのとき、ですが
「正しかった」と思いますか?
信じられますか?
自分のことが?
自分、自身の、ことが。
わたしは、あなたが、正しかった、と
思います。
<シーン1の6>
吉井: この話、前にもしたんだけど、ブラームスがね
ひろせ: うん ブラームス?
吉井: うんだから、作曲家の、ブラームスがね、
作曲家の、シューマンとともだちで、
ブラームスのうちに、
シューマンが遊びに来て、で、
「よかった、これでふたりで黙っていられるね」って言ったんだって
ひろせ: え?
吉井: だから、ブラームスが、言ったの。
ひろせ: うん。うん?
吉井: だから、しゃべりたくない。
ひろせ: なに?
吉井: しゃべりたくない。
ひろせ: いま?
吉井: うん
田口: この話、前にもしたんだけど、ブラームスがね
由日: うん ブラームス?
田口: うんだから、作曲家の、ブラームスがね、
作曲家の、シューマンとともだちで、
ブラームスのうちに、
シューマンが遊びに来て、で、
「よかった、これでふたりで黙っていられるね」って言ったんだって
由日: え?
田口: だから、ブラームスが、言ったの。
由日: うん。うん?
田口: だから、しゃべりたくない。
由日: なに?
田口: しゃべりたくない。
由日: いま?
田口: うん
<シーン2の1>
ちぎら:
しあわせのおわり、
しあわせのくりかえし、
おわることとくりかえすことはおなじである
<シーン2の2 自分の部屋>
耳で、聴けるかぎりで、あなたを聴いていたのだけど、
でもいまね、眼が、あたしの、あなたをみたの
耳で、聴けるかぎりで、君を聴いていたんだけど、
でもいまね、眼が、おれの、君をみたんだ
耳で、聴けるかぎりで、聴いていたんだけど、
でもいまね、眼が、みたんだ
君の中の水に
火に
灰に
灰の中の骨に
<シーン2の3>
やつだ:
しにたいなあとはおもうけれども
せかいがおわればよい、とはおもわないなあ、
じぶんのはいっている棺桶のことをかんがえる、
花にかこまれて
いいじゃないの、
白い花がいいなあ、
たくさんの種類の、白い花
あたしがしんだらこまる、といったなあのひとはということをおもいだし
た
<シーン2の4 ノルウェイの森 鼻歌>
金子: (鼻歌 3フレーズ)
<シーン2の5>
ちぎら: もう しゃべるの、やめる…
由日: え、なんで?
ちぎら: どうどうめぐりだから
由日: いやでもさ、「言わないと」
わからないじゃん。
ちぎら: え、聞いてないじゃん
由日: 聞いてるよ
ちぎら: 聞いてるの?
由日: 聞いてるよ
ちぎら: どっちでもいい
由日: よくは ないでしょ…
東京: もう しゃべるの、やめる…
吉井: え、なんで?
東京: どうどうめぐりだから
吉井: いやでもさ、「言わないと」
わからないじゃん。
東京: え、聞いてないじゃん
吉井: 聞いてるよ
東京: 聞いてるの?
吉井: 聞いてるよ
東京: どっちでもいい
吉井: よくは ないでしょ…
<シーン2の6>
田口:
ウツの地にヨブという名の人がいた。その人は全くかつ直く、神を畏れ、悪を遠ざけた。彼に七人の息子と三人の息女が生まれた。その財産は羊七千頭、駱駝三千頭、牛五百軛、雌驢馬五百頭、僕婢の数はおびただしく、その人は東の子らの中、最も大いなる者であった。その息子たちはおのおの自分の日に家で宴を設け、人を遣わして三人の姉妹をも呼んで、一緒に食べたり飲んだりするのが習慣であった。その宴の日々が一巡する毎にヨブは彼らを呼びよせて、彼らを聖別した。すなわち朝早く起きて、彼らの数に応じて燔祭をささげた。というのはヨブは、わたしの息子たちはあるいは罪を犯し、心の中に神を呪ったかもしれぬ、と思ったからである。ヨブはいつもこのようにした。
<シーン2の7>
吉井:
しにたいなあとはおもうけれども
せかいがおわればよい、とはおもわないなあ、
じぶんのはいっている棺桶のことをかんがえる、
花にかこまれて
いいじゃないの、
白い花がいいなあ、
たくさんの種類の、白い花
あたしがしんだらこまる?、といったなあのひとはということをおもいだし
た
<シーン3の1>
金子:
おやすみなさい
朝起きたらいないかもしれないからわたし、
ゆめでひどいことばかり口走るかもしれないからわたし、
あしたの夜は、ほかの、ばしょで、ほかの、ひとと、
ねむるのかもしれないからわたし、
だからできるだけやさしいおやすみなさいが
この瞬間に存在したらいいなあとおもう、
おやすみなさい、
あなたのゆめができるだけよいゆめであるよう、
あしたのことは
わからないのわたし。
<シーン3の2>
やつだ、由日、ちぎら:
かみさま、
あのひとを幸せにしてください、
わたしもしあわせにしてください、
よくばりを認めてください、
すべてをてにいれたいとおもうことをゆるしてください、
やさしくありたいとおもうことと、
きずつけたいとおもうことと、
どちらも、正しいことであると
後世にのこしてください、
かみさま、
いまだけでいいとおもったって、
あしたがあって、
あしたがほしいとおもったってないかもしれないかもしれないかも
かみさま、
いのることを
ゆるしてください
<シーン3の3 大事なもの>
全員
<シーン4の1>
ちぎら: 栄養とらなくっちゃ
だって、快楽のためには生きていなきゃあ
吉井: 死んでるのがいちばんきもちいいのかもよ
わかんないでしょ
ちぎら: そっちのほうがいいかな いやよくないか
いまはいまで たのしい
吉井: たのしいんじゃない
ちぎら: いらいらするけどね
吉井: そう?
ちぎら: 罪悪感 とか
吉井: それは いらいら なの?
ちぎら: うーん どろどろ とか ぞくぞく とか
吉井: なんかたのしそうだなあ エンターテイメントの香りがする
ちぎら: おばけやしきみたいだね
吉井: おばけやしきみたいだね
<シーン4の2>
東京、吉井、田口:
もうからだなんてどこかにいってしまえばいい。
げんじつをうけいれるなんてできやしない。
なんでこのからだはここにそんざいするんだろう。
あたしを必要としろ
死ぬほど必要としろ
泣くほど必要としろ
のろい
しがみつくこと
しがみつかないこと
あなたがすべてだ
ばかばかしい
音がすべてだ
色がすべてだ
うごきがすべてだ
速さがすべてだ
めがすべてだ
みみがすべてだ
手がすべてだ
舌がすべてだ
高さがすべてだ
やわらかさがすべてだ
あのひとがすべてだ
ウソがすべてだ
交換がすべてだ
じぶんのなみだでめをさます
うごけなくなる
まちがった方法をとる
えらぶ余地がない
くだらないこと
くだらないこと
くだらないこと
くだらないこと
くだらないこと
くだらないこと
約束をしよう
できもしない約束をしよう
あなたをきずつけるための約束をしよう
わたしをきずつけてもらうための約束をしよう
<シーン4の3>
ひろせ&ちぎら、金子&由日、東京&やつだ:
男: このまま行ったら崖だろ
女: 落ちようよ
男: 崖ってさあ 海にしかないの?
山にあるのは 谷か
女: どこでもいいや
落ちようよ
<シーン4の4>
ひろせ: でもさあ かわりに埋めたんだよ
由日: 産むかわりに 埋める
ひろせ: しゃれ? ぜんぜんかんけいないじゃん
たねみたいなかんじかな
由日: そこからはえてくるんだ
ひろせ: たねってさあ まいても生えてこないときのほうがたのしいよね
ああ っておもって
由日: ああ
ひろせ: なんかいろいろ 含まれてるんだ
だって生えてきたらただの植物なわけでしょう
由日: いやそんな恐ろしいものとか生えてきたらやじゃん
ひろせ: だからさあ 生えてこなかったら よかったなっておもうじゃん
恐ろしいものが生えてこなくって
由日: だから そんな恐ろしいものが生えてくるようなたねなんて
めったにないよ
ひろせ: うん それでさあ やっぱりかなしいわけ 生えてこないから
ああ って
由日: ああ ってねえ
<シーン4の5>
やつだ: だんだんにてきたね
東京: なに?おれたち?
やつだ: もしさあ ほんとは兄妹だったらどうする?
東京: どうしようか?
やつだ: かくす?
東京: かくす、って秘密にするってこと?
だれに?じぶんに?
やつだ: 彫刻をつくるときってねんどに布をつけるじゃない
あれは乾燥をふせぐため?
つよくかたくするため?
東京: わかんない
やつだ: でもそのときじとーっとしみでてくるでしょう
かくすってそんなかんじ?
東京: なにゆってるのかわかんないよ
やつだ: だから なにかを自分自身に対してかくすっていうことに対する
考察
東京: そんなことしてなんのいみがあるの
やつだ: いや じぶんのなかが そんなふうな層になってるっていうのが
おもしろいかなって
東京: かさなってるんだ
やつだ: うん で ほりだすとマンモスとか出てくる
東京: ほりだしたくないな
<シーン4の6>
全員: ほりだしたくないな…(くりかえし)
<シーン4の7>
田口:
ウツの地にヨブという名の人がいた。その人は全くかつ直く、神を畏れ、悪を遠ざけた。彼に七人の息子と三人の息女が生まれた。その財産は羊七千頭、駱駝三千頭、牛五百軛、雌驢馬五百頭、僕婢の数はおびただしく、その人は東の子らの中、最も大いなる者であった。その息子たちはおのおの自分の日に家で宴を設け、人を遣わして三人の姉妹をも呼んで、一緒に食べたり飲んだりするのが習慣であった。その宴の日々が一巡する毎にヨブは彼らを呼びよせて、彼らを聖別した。すなわち朝早く起きて、彼らの数に応じて燔祭をささげた。というのはヨブは、わたしの息子たちはあるいは罪を犯し、心の中に神を呪ったかもしれぬ、と思ったからである。ヨブはいつもこのようにした。
<シーン5の1>
ちぎら:
静けさ。
あたしの声なんて、
だれも聞いてやしない、という静けさ。
どこまでもひろがっていく静かさ。
みえる?みえない?
きこえる?きこえない?
どこまで?
どこまでつづく?
つづく?
東京、金子:
静けさ。
あたしの声なんて、
だれも聞いてやしない、という静けさ。
どこまでもひろがっていく静かさ。
みえる?みえない?
きこえる?きこえない?
どこまで?
どこまでつづく?
つづく?
<シーン5の2>
ひろせ: ぼくはぼくじしんのことけしてわからない
由日: だから、かみさまがひつようなの?
ひろせ: ちがう
と
おもうけど
由日: 「ぼくはぼくじしんのことけしてわからない」というのは、
真理?
ひろせ: 真理ってなに?
由日: ほんとうのこと?
ひろせ: どこかに書いてあった
由日: どこか?
ひろせ: インターネットのどこか
由日: だれかのblogとか、っていうこと?
ひろせ: まあそんなかんじ
だと、おもう、
由日: わかることは重要なの?
ひろせ: わかること。じぶんのこと?
由日: うん
ひろせ: おれはわかりたい、とおもうけど
由日: そうか。
ひろせ: うん。わかりたい。
<シーン5の3>
やつだ: 具体的な話。
そろそろ、こども、つくったほうがいいんじゃないかとおもって。
金子: あー、うん、
そろそろ、っていうのは、欲しい、ってこと?
やつだ: うん
欲しい
金子: それって具体的な話なの?
やつだ: え?
金子: なんかさ、こども、とかって、
「イメージ」じゃない?
やつだ: イメージ?
金子: なんかさ、こうならなきゃいけない、っていう、
幸せの、イメージ。
やつだ: …
金子: いや、ぜんぜん、反対してるとかそういうんじゃないんだけど
いやむしろ前向きに、っていうか、
具体的に、
具体的に、か
具体的…
やつだ: いま、しあわせ?
金子: え?
やつだ: あたしといて、幸せ?
田口: 具体的な話。
そろそろ、こども、つくったほうがいいんじゃないかとおもって。
吉井: あー、うん、
そろそろ、っていうのは、欲しい、ってこと?
田口: うん
欲しい
吉井: それって具体的な話なの?
田口: え?
吉井: なんかさ、こども、とかって、
「イメージ」じゃない?
田口: イメージ?
吉井: なんかさ、こうならなきゃいけない、っていう、
幸せの、イメージ。
田口: …
吉井: いや、ぜんぜん、反対してるとかそういうんじゃないんだけど
いやむしろ前向きに、っていうか、
具体的に、
具体的に、か
具体的…
田口: いま、しあわせ?
吉井: え?
田口: あたしといて、幸せ?
<シーン5の4>
ちぎら: (口笛を吹く)
吉井: なんだっけそれ?
ちぎら: 希望の曲
吉井: え そんなタイトル?
それタイトル?
ちぎら: いや、なんかね、
戻ってくるんだよ
吉井: え、戻ってくる?
なにが?
ちぎら: 主人公の、大事なものが
<シーン5の5>
ひろせ:
君の中の水に
火に
灰に
灰の中の骨に
君の中の水に
火に
灰に
灰の中の骨に
にんげんはちりから生まれたというけれど、
土のかたまりに、かみさまが、息を吹きかけ、
にんげんになった、というけれど、
あなたはあたたかい、
もちろんおれも生きている、
つづく。
<シーン5の6>
吉井、東京: なんかさあ、子供のころに、
「これがないと眠れない」みたいのってあるじゃん
ちぎら: あー ぬいぐるみとか?
なんかあれって、やっぱり「母親の代わり」なんでしょ?
吉井、東京: いや、おれは
おかあちゃんより、変な象のぬいぐるみが好きだった
ちぎら: 象だったんだ
吉井、東京: 象だった
ちぎら: 今もそういうのある?
吉井、東京: いや、いまはないけどー
お祈りする
なんかさあ、「あしたも、しあわせで、
ありますように」って
それで、眠る。
<シーン5の7>
やつだ: 象だったんだ
金子: 象だった
やつだ: 今もそういうのある?
金子: いや、いまはないけどー
お祈りする
なんかさあ、「あしたも、しあわせで、
ありますように」って
それで、眠る。
田口: いや、いまはないけどー
お祈りする
なんかさあ、「あしたも、しあわせで、
ありますように」って
それで、眠る。
<シーン5の8>
答えとして autem 主は男に嵐より語った。
誰か? はかりごとを無知の言葉でもって暗くするこの者は。
帯をせよ男のようにあなたの腰に、尋ねようあなたに、そして答えよ、私に。
どこにあなたは? は私が据えたとき礎を大地に、示せ、私に、もし持つなら悟りを。
誰が据えたか? 大地の基準を、もしわかるなら、誰が延ばしたか? 大地に縄張りを。
何の上にその土台がしっかりとあり、誰が置いたのか石をその角に。
私とともに明星«あかほし»が讃えたその時、全ての神の子たちも歓びを噛み締め、
誰が海を扉に封じたか? ちょうど胎から飛び出で・進み出でた時。
受け答えて主は語った、男へと。
できるのか? 人が全能なる者と争うならあなた反論すること、そして人が神を非難するならあなたそれに答えること
答えとして、 autem 主は男に嵐より語った。
帯をせよ男のようにあなたの腰に、尋ねようあなたに、そして答えよ、私に。
できるのか? 面前で私の裁きをけなし・なじるのか? 私を、あなたみづからを正しいとして。
そしてもしや持つのか腕を神のように? もしや聲を似たように轟かすのか?
<シーン6の1>
由日、金子、東京:
その昔、
異性と抱きあうとはふたごのくまのようなかんじだ、とおもった
いまは
なんだろ
な もっとこどものようにあのひとを抱きたいとおもう、
それはもしかしたら自己愛なのかもしれないなともおもう、
<シーン6の2>
全員: あした(呻き)
<シーン6の3>
やつだ、ちぎら:
それはどこまでも続くみちです
ひとりで、あるかなくてはならない
なんで? ひとりで?
ここは夢の中なのかもしれません。
電話をします。
相手は出ない。
留守番電話につながる。
そのまま無言で切る。
電話を切ったあとに、
もしもし、
って
言ってみる。
<シーン6の4>
田口:
それからヤハウェはヨブがその友のために執成しの祈りをした時、ヨブの運命を転換された。ヤハウェはヨブのすべての持物を二倍にして返された。彼の所にそのすべての兄弟たち、すべての姉妹たち、以前のすべての知人たちがやって来て、彼の家で彼と一緒に食事をし、悔みを述べ、ヤハウェが彼の上にもたらされたすべての不幸について彼を慰めた。そして彼に一人一人一ケシタと金の輪とを贈った。ヤハウェはヨブの終わりをその始め以上に祝福され、彼は羊一万四千頭と駱駝六千頭と牛千軛と雌驢馬千頭とを与えられた。また彼に七人の男の子と三人の女の子が与えられた。その女の子の一人の名はエミマといい、二番目の子の名はケチアといい、三番目の子の名はケレン・ハップクと呼ばれた。全地にヨブの息女たちのように美しい女は見つからなかった。その父は彼女たちにその兄弟たちと一緒に嗣業を与えた。ヨブはこの後百四十歳まで生き、その子らと子らの子らを四代までも見ることができた。そしてヨブは年老い、日満ちて死んだ。
<エンディング 1>
東京: もう、だいじょうぶ。
ひろせ: もう?
吉井: もう。
由日: おわり。
やつだ: おわり。
金子: おわりです。
ちぎら: これはポジティブな終わりで、
これから、生きていくための、終わりです。
やつだ: これはポジティブな終わりで、
これから、生きていくための、終わりです。
田口: しあわせのおわり、
しあわせのくりかえし、
ちぎら: おわることとくりかえすことはおなじである
ひろせ: 不幸、の終わり、
不幸、のくりかえし、
おわることとくりかえすことはおなじである
由日: 不幸の終わり
金子: 同じじゃないよ
ちぎら: おなじである
東京: おなじである
やつだ: 生きたい
ひろせ: 行きたい?
金子: 行きたい?
ちぎら: 行きたい?
吉井: しにたーーーーーーーい、
田口: 回復。
<エンディング 2>
由日:
耳で、聴けるかぎりで、あなたを聴いていたのだけど、
でもいまね、眼が、あたしの、あなたをみたの
<エンディング 3 大事なもの>
全員
<エンディング 4>
田口:
I once had a girl,
or should I say she once had me?
She showed me her room,
isn't it good, Norwegian wood?
She asked me to stay and she told me to sit anywhere,
So I looked around and I noticed there wasn't a chair.
I sat on a rug,
biding my time, drinking her wine.
We talked until two
and then she said "It's time for bed".
She told me she worked in the morning and started to laugh.
I told her I didn't and crawled off to sleep in the bath.
And when I awoke
I was alone, this bird had flown.
So I lit a fire,
isn't it good, Norwegian wood?
金子:
いちど、女の子をナンパしたことがある
や、こっちがナンパされた、って言った方がいいのかもしれないな?
自分の住んでる部屋を見せてくれて、
そんなにわるくない部屋で、『ノルウェイの森』みたいでしょ?って
ちょっと寄ってってよ、って言って、
で、まあそのへんに座ってよ、って
それで、見るとさあ、
椅子が、いっこもないんだ
敷いてあるカーペットの上に座って、
なんだかへんなかんじだけど、ワインを飲んだ。
いろいろしゃべって、2時になって、
それで「もう寝なくちゃ」って言って、
「朝から仕事なんだよねー」って言って、けらけら笑って、
「べつに俺暇なんだけど、」っていってもしょうがなくて、
なんでかバスタブのなかで眠った
で、起きたときには、ひとりで、
小鳥ちゃんはどっかに飛んでっちゃったみたい
なんで、火をつけてさ、
これもわるくない、たぶんそんなに、
『ノルウェイの森』みたいでしょ?って
<エンディング 5>
やつだ:あたしとこどもつくろうよ、
そしてしぬまでしあわせにくらそうよ、
<エンディング 6>
全員: (抱き合う)
東京:「正しさ」という言葉について、
ここで語ってみたいと思います。
ひろせ: もう、だいじょうぶ
(終演)
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