経営環境分析vol.2_前半 #16
経営環境分析の第2弾は「3C分析」を取り上げます。なお、少し長くなりますので、前後半に分けてお話しします。
1.3C分析とは
「3C分析」は経営環境分析の基本中の基本で、まずはこれをしっかりやるだけで、経営環境分析の大部分はカバーできると思います。
「3C分析」とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点で、経営環境の変化を捉える分析手法です。
出典:GLOBIS 知見録
この3つの視点は、企業が今後の戦略を考える上で、確実に押さえておかなければならないものだと言えます。
外部環境分析と内部環境分析の視点がうまく組み合わされたもので、経営環境分析のフレームワークとしては、最強だと思っています。
2.KSFの発見
この「3C分析」の主たる目的は、KSF(Key Success Factor:成功要因)を見出していくことにあります。
KSFとはマーケティング上の「成功要因」のことです。
少し古い話になりますが、過去にビデオテープにおけるSONY・東芝陣営のベータ方式とビクター・松下電器(現Panasonic)陣営のVHS方式のデファクトスタンダード獲得争いがありました。
デファクトスタンダードとは、ISO、JISなどの標準化機関等が定めた規格ではなく、市場における競争等で「結果的に事実上の標準化となった基準」のことです。
画質や音質の良さはベータ方式の方が上でしたが、録画時間が1時間しかないという欠点がありました。一方、VHS方式はベータ方式に比べ画質や音質はやや劣るものの2時間録画ができるという特徴がありました。
結果的にはVHS方式がビデオテープのデファクトスタンダードとなりましたが、その明暗を分けたのが、ビデオテープ市場におけるKSFです。
消費者のビデオテープに対するニーズは、画像や音の品質よりも、テレビで放映される2時間のロードショー番組を録画することにありました。
つまり、この市場で成功するための要因は、「録画時間の長さ」を確保できる「技術」や「ノウハウ」にあったということです。これがKSFです。
このKSFを発見し、それを軸としたマーケティング戦略(STP+4P)を展開していくことが「3C分析」の目指すべきところとなります。
3.外部環境分析
「3C分析」における外部環境分析は、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」の2つの視点となります。
「Customer」の視点は、自社が分析対象としているマーケット(市場)の成長性や競争状況などの「マーケット(市場)分析」とそのマーケットにおけるターゲット顧客のニーズやKBF(Key buying Factor:購買決定要因)を探る「顧客分析」に分かれます。この2つの視点で構成されているところが特徴になります。
ちなみに、KBFとは、「購買決定要因」のことで、顧客がその商品の購買を決める際に重視する主たる要素(主にニーズを満たすもの)のことをいいます。前述のビデオテープの例で言えば、「録画時間の長さ(2時間録画ができる)」がKBFになります。
「Competitor(競合)」については、同業者や新規参入、代替品などの分析対象を明確化して、それぞれの強み・弱みなどを詳細に検討していきます。
こうして見ると、この「3C分析」の外部環境分析は、前回ご紹介した「5つの力分析」と重なることが分かります。
つまり、「3C」の視点を持つと必然的に「5つの力分析」が必要になります。
4.顧客分析
以下では、「顧客分析」の詳細を見ていきます。
「顧客分析」ではまず「ターゲット顧客」を明確化することから始めます。ターゲットとすべきは「どのような顧客」かということです。「〜の客」として言葉にしてみることがコツです。
「ターゲット顧客」を考える際には、対象商品のニーズと利用シーン(customer journey)をイメージします。
その際、DMU(Decision Making Unit:購買決定者)は誰か、KBFは何かを考えます。自分がどういう基準でそれを買うかを考えると分かりやすいと思います。そして、それぞれについて、自社と競合社の状況を比較していきます。
KBFには、インフルエンサー(影響を与える人、専門家など)が関与している場合があります。好きな芸能人の〇〇が使っている、などの場合です。その店の店員や直接対応する販売員がインフルエンサーとなっていることもあります。
家具業界を例に取ると、大塚家具は、元々ライフイベントの中で、家具を買う必要のある人を「顧客ターゲット」としてきました。婚礼などで必要となるケースです。一方で、ニトリは、家具を買う人以外も、「顧客ターゲット」としています。つまり、おしゃれなライフスタイルを手に入れたい人です。
この両社はそもそも「顧客ターゲット」が異なりますので、顧客ニーズ、KBF、DMUなどが全て異なります。したがって、当然にビジネスモデルが異なりますので、ニトリが好調だからといって、大塚家具がニトリの戦略だけを真似て取り入れても到底うまくいきません。
ニトリの優位性は、自分たちを家具屋と定義せず、顧客ターゲット層を広く取ったことです。そして、それを踏まえたマーケティング戦略を展開すると共に、圧倒的に低コストを実現した生産・販売オペレーションを構築し、独自のビジネスモデルを実現しました。
実際に「3C分析」を行ったのかは分かりませんが、少なくともそのエッセンスは取り入れられていると思います。
「3C分析」から導くKSFは、「顧客分析」のKBFから導いてくるのがスタンダードとなりますが、「マーケット(市場)分析」からKSFを考えるアプローチも実際にはあると思います。
以上が「3C分析」の意義と目的、そして分析対象の一側面である外部環境分析の視点となります。
前半のパートは以上となります。分析対象のもう一つの視点である内部環境分析については、後半のパートでお話ししたいと思います。